「毎日、貴方(あなた)と呼んでラブレターを書いています」。戦後70年を機に戦争で亡くなった夫への恋文を書き続けている福岡県糸島市の大櫛ツチヱさん(96)が4日、同市志摩小金丸の志摩中学校(藤井浩幸校長)で平和の尊さを語り掛けた。戦争で引き裂かれながら変わらぬ愛を貫く夫婦の“物語”に生徒たちは真剣な表情で聞き入った。

 大櫛さんは20歳の時に、顔も知らなかった四つ年上の仁九郎さんと結婚した。「いい夫婦になろうね」と仁九郎さんに言われ、美術館や映画館に行き、恋人のようにデートを楽しんだ。しかし、幸せな日々はわずか1年2カ月で終わりを迎える。長男勝彦さん(74)が生まれて間もない頃、赤紙が届き戦地へと旅だった。

 1945年8月、玉音放送が流れた。「無条件降伏してどうなるのかと思ったけれど、夫が帰ってくると思うと喜びに変わったの」。だが無情にも届いたのはパプアニューギニアで戦病死したという連絡だった。幼い子ども2人を抱え、子育てや仕事に励み、夫への思いは封印した。戦後70年のある日、雲を見ていて夫への思いがこみ上げた。「貴方、貴方、貴方」と毎日、恋文を書きつづった。

 約400人の生徒たちは、大櫛さんを取材したテレビ番組のDVDを見た後、大櫛さんの話を聞いた。生徒会長の桃井歩美さん(3年)は「一緒に暮らせることが貴重な時間だと思いました」とお礼の言葉を述べた。大櫛さんも「若い力をいただき元気になった。日本の平和を守ってください」と未来を担う若者たちに呼び掛けた。

=2017/08/08付 西日本新聞朝刊=