長崎に原爆が投下されて72年を迎えた9日、犠牲者を追悼する平和祈念式典が同市の平和公園で開かれた。田上富久市長は平和宣言で、核兵器の製造や保有など全てを禁じる核兵器禁止条約の交渉会議に参加しなかった日本政府の姿勢を「被爆地は到底理解できない」と強く批判した。核保有国や「核の傘」の下にいる国々に対し、核兵器に依存する政策を見直すため、勇気ある行動を求めた。

 市によると、式典には被爆者や遺族をはじめ約6300人が参列。原爆投下時刻の午前11時2分に全員で黙とうをささげた。

 平和宣言は、冒頭から分量の半分近くを核兵器禁止条約が占める異例の内容。田上市長は条約採択を「被爆者が長年積み重ねた努力が形になった」と評価し、「ヒロシマ・ナガサキ条約」と呼びたいと歓迎。核保有国の反対を踏まえ「私たちが目指す『核兵器のない世界』にたどり着く道筋は見えていない」と指摘、条約に実効性を持たせることができるかが人類に問われているとの認識を示した。

 米国の「核の傘」に依存する日本政府は、唯一の戦争被爆国として核兵器保有国と非保有国の橋渡し役を明言しているが、具体的な行動を起こしていない。田上市長は宣言で「一日も早い(条約)参加を目指し、核の傘に依存する政策の見直し」を要請した。

 被爆地の長崎では、安倍晋三首相が意欲を示す憲法改正への懸念が根強いが、宣言文は改憲に触れなかった。被爆者代表として式典で「平和への誓い」を読んだ長崎市の深堀好敏さん(88)は「平和憲法がアジアの国々から集めた尊敬と信頼を失っていけない」と改憲議論に注文を付けた。

 安倍首相はあいさつで「真に核兵器のない世界を実現するために、核兵器国と非核兵器国双方に働きかけを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意だ」と述べた。

 各国大使らは58カ国から出席し、このうち核保有国は米国、ロシアなど6カ国だった。昨年8月からの1年間で死亡が確認された3551人の死没者名簿4冊が奉安され、計17万5743人となった。

=2017/08/09 西日本新聞=