清流・四万十川が流れる高知県四万十町で過疎高齢化が進む中、移住者が増えている。地域の雇用や産業振興の拠点になっているのが、町内に三つある「道の駅」だ。中でも町中心部から車で1時間かかる悪条件を逆手にとって、「わざわざ来てもらう道の駅」を目指す「四万十とおわ」には、年間14万人超が訪れる。年配の地元女性グループと、若者たちが働く地域おこし会社がタッグを組んで奮闘する山間の現場を訪ねた。

 12日午前11時前。「四万十とおわ」の食堂前で、40人ほどが順番待ちをしていた。お目当ては毎週水曜と最終日曜に開かれるバイキング。「イタドリの炒め煮を食べてみて」。「タケノコもどうぞ」。そろいのエプロン姿の女性たちが客に声をかける。

 女性たちは、旧十和村(とおわそん)内の138人でつくる「おかみさん市」の会員。1970年代から生活改善活動などに取り組んだ女性グループが起源で、2011年に会員出資の株式会社になった。社長の居長原(いちょうはら)信子さん(70)は「バイキングは手作り。食材も会員が育てた野菜や山菜が中心。毎回100人超が食べに来てくれる」と胸を張る。

 事業はバイキングだけではない。(1)自家製野菜の直売(2)ドレッシングや手作り弁当の販売−などにも取り組む。平均年齢が70歳近い会員たちが手にする事業収入は平均で年20万円ほど。それでも「年金暮らしの方にとっては貴重な収入。活動はメンバーの生きがいでもあり、おかみさん市は高齢者福祉にも一役買っているとよく言われます」と居長原さんは笑う。

 「四万十とおわ」は今月、開業10周年を迎えた。開業前に「バイキングをやりませんか」と誘ったのが、地元の株式会社「四万十ドラマ」。1994年に第三セクターとして設立、2005年に民営化された。従業員30人の平均年齢は28歳。県外からの移住組も3人いる。社長の畦地履正(あぜち・りしょう)さん(53)は「うちが雇用の受け皿になることで、若者に残ってもらえる」と力を込める。

 同社は、指定管理者として道の駅「四万十とおわ」を運営するほか、地元産の栗やお茶などの加工を通じ業績を伸ばしてきた。特に栗は35年ほど前の最盛期には流域で年800トンを生産したが、生産者の高齢化や価格低迷で4年前には18トンまで落ち込んだ。

 8年前から生産者らと協力して毎年2千本ほどの栗を植樹。岐阜県から専門家を招き、樹高を低く抑える栽培法を導入して四万十産の栗の再生に取り組んだ。その結果、一般的な栗よりも大きくて甘い「特選栗」の収穫に成功。生産量も昨年は35トンまで回復した。

 その栗を使ってモンブランや渋皮煮などの加工品を開発。道の駅内にあるカフェのほか全国各地のデパートや生協などに販路を広げ、昨年度は約6千万円を売り上げた。今後、第2加工場を新設する計画もある。

 食材の素材を生かすのが、同社の商品開発の基本。畦地さんは「見過ごされてきた地域の宝に光りを当て、それを磨く。先人たちが生きてきた地域には、チャンスが埋まっている」と強調する。