福岡県東峰村の室井保子さん(86)は村役場から徒歩5分ほどの自宅に1人暮らし。あの日、猛烈に降り続いた雨は午後2時すぎ、小康状態になった。そこに民生委員を務める近所の男性が訪れる。

 男性は「おばちゃん逃げないけんよ」とせかした。ミシンで縫い物をしていた室井さんは「行かなくちゃいけませんかねえ」と渋った。それでも「高齢の1人暮らしだから」と強く説得され、自宅を後にした。

 2日後の7月7日。避難所から歩いて帰った室井さんは自宅周辺の光景に目を疑った。路肩は崩れ、そばのJR大行司駅は駅舎に土砂が流れ込み、ぺしゃんこに。「あの時、避難しなかったら…」。恐ろしさがこみ上げてきた。

 「このくらいの雨なら大丈夫」「もう年だし」「避難所では眠れん」−。危険が迫っても避難しようとしない人の存在は、災害のたびに指摘されてきた。

 今回の犠牲者にも、逃げるよう促されたが動かず、自宅とともに土砂にのみ込まれた人がいる。結果的に助けられず、痛恨の思いを抱える人も少なくない。