新型コロナウイルスの影響で、インターネットを通じて電子書籍を借り、パソコンやスマートフォンなどで閲覧する電子図書館に注目が集まる中、九州の公立図書館で導入を目指す動きがじわりと広がっている。福岡県立図書館は15日から電子書籍の貸し出しを開始し、福岡市も年明けのスタートを目指す。ただ、システム導入や維持管理の費用も必要で、書籍の拡充を課題に挙げる声も聞かれる。

 「コロナ禍を受けて、急きょ導入を決めた」。福岡県立図書館の担当者は振り返る。図書館に出向いて書籍に触れることなく利用できる点に着目。大手書店の電子図書館システムを導入、初年度費用として約300万円を見込む。まずは専門書を中心に約240タイトルを電子書籍で貸し出す。

 九州では4月以降、同県春日市や大分県佐伯市などが導入。電子書籍事業に関わる業者でつくる電子出版制作・流通協議会(東京)によると3月に約90だった全国の導入自治体は、本年度だけで40自治体ほど増える見通しだ。

 昨年11月から電子書籍を貸し出し、今年2月29日から臨時休館した熊本市立図書館。2月まで月1400冊程度だった貸出数は、3月に3573冊、4月は6908冊、5月には1万7189冊と急増。コロナ禍前の12倍超を記録した。5月下旬の図書館再開後も月平均約4700冊が利用され、小中学生が児童書や問題集などを借りるケースも多い。

 福岡県宗像市や田川市の電子図書館も以前の3〜4倍となった月があった。宗像市民図書館によると、ヨガやストレッチなど健康や料理に関連する本、ガイドブックの貸し出しが多いという。

 電子書籍は、スマホなどの画面上で文字を拡大でき、読み上げ機能もある。返却期限になると自動的に読めなくなり、未返却や破損の心配もない。館内利用に限っていた高額な図鑑なども貸し出し可能となる。

 一方、自治体関係者は運営費を課題に挙げる。約1万4千タイトルの電子書籍を扱う熊本市立図書館の松里紀子主査は「電子書籍の貸し出し権料を事業者に支払っているが、利用期限や回数が決まっており、取り扱う本の数を維持するためには継続して予算を投入しなければならない」と話す。電子図書館の年間予算は約3600万円。電子書籍化されていない本も多く、利用者から「読みたい本が電子化されていない」との声も聞かれるという。

 電子出版制作・流通協議会の担当者は「大学などに比べて公立図書館の電子化は遅れているが、コロナ禍を契機に増えるはずだ。市場が大きくなれば事業者間の競争も激しくなり、自治体の運営コストの低下にもつながるだろう」と話している。 (泉修平)