「よっしゃー。70台出た。うれしいー」。ゴルフ場の青空にひときわ透き通った声を響かせた。アナウンサーの木戸優雅さん(34)は副業であるYouTubeゴルフチャンネルで自己ベストのスコア78を出した瞬間、満面の笑みを見せた。
「すごく楽しいですよ。自分が楽しむことで見る人にも楽しんでもらうコンテンツにすることが大前提なので」
福岡のTVQ九州放送でアナウンサーを務めながら、2024年夏に「局アナGOLF TV【木戸優雅】両打ちシングルへの挑戦」を立ち上げた。左打ちでスコア70台を達成し、さらには右打ちに転向して70台を目指すという壮大な挑戦。最大の目的は、自らのブランディングだった。
「アナウンサーとして、この人が伝えているから説得力があるとか、情報が信頼できる、というのは知名度も無関係ではない、と感じている。そんな中、自分を知ってもらうにはどうしたらいいんだろう、とずっと悩んでいた」
現代のアナウンサーは、地上波だけでなくSNSを駆使したセルフプロデュースも求められる。木戸さんは社内で受けたSNS研修などでヒントを得て、YouTubeを始めることを思い立った。
ゴルフを始めたのは2018年。先輩アナウンサーに誘われ、ゴルフ場で借りたクラブでラウンドした。「練習もせずに初めてコースに出て、空振りもあって…。最初は面白くなかった」。そこから半年後、取材を通じて関わりがある福岡ソフトバンクホークスの選手とラウンドする機会があった。
80台で回るような選手に対し、自らのスコアは150を超えた。「選手たちが気を使って、打つ前に『大丈夫。落ち着いていけ』と言ってくれる。それが悔しくて…。絶対に見返してやろうと思った」。将来の負けず嫌いの火が付き、猛練習を開始。そこからゴルフの〝沼〟に落ちていった。
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福岡市で生まれ、幼少期から野球に親しんだ。プロ野球選手も輩出する強豪の福岡大大濠高に進み、甲子園出場はかなわなかったが、ショートとして活躍した。その後は野球から離れ、地元の西南学院大でアルバイトの日々に明け暮れた。
「昔からホークスが好きで、ドーム(現みずほペイペイドーム)でショップの店員や風船売りとかをやっていた。その時期、アルバイトの先輩から『アナウンススクールに入ったら』と誘われて、今度は1週間もしないうちに別の先輩からも同じ誘いを受けた。興味があったわけじゃないんだけど、これは何かあるんじゃないかと思って」
不思議な縁に導かれたようにアナウンサーを志し、佐賀県を拠点とするサガテレビのアナウンサーになった。5年間の在籍を経て、TVQに転職。きっかけは、大好きなソフトバンクの仕事へのあこがれだった。
念願のソフトバンク戦初実況は2020年9月12日の西武戦。本拠地でソフトバンクが8点を奪って快勝した試合がデビュー戦だった。「当時の解説が斉藤和巳さん(現ソフトバンク3軍監督)。緊張して足が震えていたら、和巳さんから『できなくて当たり前。思い切ってやれ』と声をかけてもらって、背中をポンとたたかれた。それで何とかやれたかな」。経験を積んだ現在は、定期的にソフトバンク戦の実況を務める。
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取材相手の懐に飛び込み、いつのまにか心の距離を縮める天真爛漫なキャラクターだ。動画取材では、撮影に慣れないゴルフ場の支配人にも明るい語り口で語りかけ、質問を重ねていく。最初は口数が少なかった出演者も、ラウンドを終える頃には笑顔で冗談を話すようになる。限られた時間の中で、出演者の魅力を引き出していくのが木戸アナ流だ。
ソフトバンク戦の実況というアナウンサーとしての夢をかなえ、プライベートではチャンネルの立ち上げと同時期に長男が誕生した。その間は育児休暇を取得して家族と向き合った。
YouTubeは徐々に軌道に乗ってきており、ゴルフ仲間やホークスOB、プロスポーツ選手が出演を快諾してくれるようになった。社内やホークス関係者ともYouTubeの話題で会話が弾むようになり、活動の意義を感じている。さらなる高みを目指して「もっと登録者を増やしたいし、新しいことにも挑戦していく」と意欲は尽きない。
アナウンサーと副業YouTuberの〝二刀流〟はどこまで続けるのか―。
「アナウンサーを辞めるつもりはありません。そもそも本業に生かすために始めた副業なので。これからも育児を含めた〝三刀流〟に向き合っていきたい」
忙しくてたまらない毎日を心の底から楽しんでいる。(松田達也)
◆木戸優雅(きど・ゆうが)1991年3月23日生まれ。福岡市出身。ベストスコアは昨秋、今春に出した78。現在は右打ちに苦戦中。木戸アナのチャンネルはコチラ。


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