週に1度の「もっとホークス」。今回は新入団した菊池拓斗R&Dグループスキルコーチ(打撃)=(32)=のインタビューです。富士大時代に山川穂高内野手らとプレーしたものの、プロ経験はなし。元高校教員でスクールでの指導やユーチューブで動画投稿をするなど異色の経歴の持ち主は、動作解析などを行うR&D部門を強化する球団の一員となりました。米国留学で学んだ打撃理論や今後の抱負などを聞きました。(聞き手・構成=鬼塚淳乃介)

 

 ―富士大ではどんな存在だった。

 「大学時代は、4年間レギュラーというわけではなかった」

 ―先輩に山川選手が。

 「尊敬を抱いた。練習量、振り込みの量がすごい。寮に帰っても(近くの)小屋の電気が(午後)11時ぐらいまでついていた」

 ―大学卒業後はプロを諦めて高校教員に。

 「どちらかというと指導者にゴールがあった。プロに行く見込みがなくなっても通過点で、本当にやりたいことではなかった」

 ―高校での打撃指導は。

 「(現在とは)全く違った。ヘッドを返すスピードや振り込みを一番大事にしていた。自分の経験を選手に落とし込む。まさにそうだった」

 ―教員を3年で辞め、米国へ。

 「職業としてのコーチに興味があったのが一番。日本でプライベートレッスンを職にする人は、野球界では(当時)いなかったと思う」

 「見に行った結果、とてもではないが、子どもにマンツーマンで自分の経験則(を伝える)だけでは30分間持たない。やはり正しいスキルの理解、アプローチの仕方がある。『あっ、コーチングってこういうもんなんだな』と。自分がやってきたことを教えるのではなく、アップデートしながら、相手に合わせた正しい動きを習得させるのがコーチだと思い知らされた」

 ―日米の大きな違い。

 「百八十度違う。技術的なところだと『打撃は回転動作』と米国のコーチはよく言う。アカデミーには親の都合などで米国に来ている(日本の)子どももいる。そういう子が言われるのは『もっと回せ』。いわゆる手打ちになっている」

 ―手打ちは良くない。

 「プロは回転動作が小さくなっていく。パワーが上がってくれば、回転動作が大きくなくても同じような出力が出せるから。でも、小さい子が同じ動作をすると、腕っぷしがある子だけが遠くに飛ばせる。小さい段階は体を大きく回す。そこから動きが小さくなるのが理想」

 ―昨年、ソフトバンクからオファーを受けた。

 「プロ野球で教えたい、という願望はそんなに、というか全くなかった。偉そうかもしれないが、僕がソフトバンクに行って何をできるのかを懸念した。それが最初」

 ―それでも受けたのは。

 「R&Dグループの本気度。動作解析を基に、スキルを選手に定着させようという熱意を強く感じた。それなら僕が5年間でやってきた経験は間違いなく生かせるのではと」

 ―実際に指導してみて。

 「まず動作解析とか、数値が想像の10倍ぐらい細かい。やってきたドリルは主観も多い。それを理論と照らし合わせ、より正しくなっていくのかなと実感している」

 「僕がアマチュアから来ている立場でも、正しいアプローチを心がけていれば、選手は一生懸命。色物扱いせずに真剣に取り組んでくださる。来てよかった」

 ―目指す指導は。

 「日本では打撃の成績が全体的に大きく下がっている。投手がすごい球を投げ始めてきている。それに打ち勝てる打撃技術で野球がもっと面白くなればいい」

 「そのためには、新しい考え方や技術をどんどん入れないといけない。感覚的な部分だけではなく、正しいアプローチで一生懸命練習する人がうまくなる環境。それがスキルの醍醐味だと僕は思う。そういう環境をつくっていければ」

 菊池 拓斗(きくち・たくと)1993年1月16日生まれ。福島県出身。光南高、富士大でプレーし、清陵情報高で指導。米国で1年間コーチングを学び、同県で野球スクール「T―Academy」を設立。ユーチューブの「タクトtv」登録者数は約3万5千人(10日現在)。過去にはソフトバンク・近藤の自主トレで指導。R&Dは「リサーチ&ディベロップメント(研究開発)」で、選手の体の動きなどを機器で分析、数値化し、パフォーマンス向上に生かす。