【 美しき日本のクーペ Vol.2】

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2つの流れがあるクーペデザイン

 一方、馬車の時代の定義に忠実に、クーペを設計した自動車メーカーもあった。先陣を切ったのは、本田宗一郎が率いるホンダだ。DOHCエンジンを積む高性能オープンスポーツカーのホンダS500とS800を市場に放ったホンダは、1964年11月にルーフをかぶせたS600クーペを発表している。発売は翌1965年2月だったため2番目のクーペとなったが、これは初の2シータークーペだ。

 1965年はクーペのヴィンテージイヤーだった。ホンダS600クーペに続き、トヨタはトヨタスポーツ800を送り込んでいる。パブリカのメカニカルコンポーネンツを用いた2シーターのスポーツクーペで、モノコック構造の軽量ボディと優れた空力性能も注目を集めた。この2車は、公道でもレースでもライバルになっている。

 日産はフェアレディ1500を発展させたフェアレディ1600の兄弟車、シルビアを投入した。ベース車と同じ2シーターの設計で、エクステリアは美しいクーペスタイルだ。また、異質のクーペモデルとしては、トヨタのコロナ・ハードトップがあげられる。リアピラーの傾斜を強めたクーペスタイルだが、日本で初めてセンターピラーを取り去り、アメリカ流の「ハードトップ」を名乗った。デザイン的には、このコロナもクーペになる。

 クーペデザインの潮流は2つだ。ひとつは、3BOXセダンのリアピラーを傾け、キャビンを小さく見せるノッチバッククーペの手法である。セダンより背を低くし、リアピラーを傾斜させて躍動感を強調した。その代表は、スカイライン・スポーツとコンテッサ1300クーペだ。

 もうひとつは、リアエンドまでピラーを延ばしたファストバッククーペで、ホンダS600クーペはこの手法を採っている。1968年に相次いで登場したサニー1000クーペとカローラ・スプリンター1100も若々しいデザインのファストバッククーペだった。

 ノッチバッククーペは正統派のクーペと言えるだろう。リアピラーの傾斜を強めながら、セダンのようにトランクを独立させたデザインは気品があり、大人の香りがする。車格が上のクーペに好んで使われ、80年代に誕生したソアラやレパード、シルビアなどもノッチバックスタイルだった。
 これに対しファストバッククーペは躍動感あふれ、軽快なイメージだ。そのため走りを重視する高性能モデルに好んで使われている。70年代以降に登場したマツダのRX‐7やトヨタのセリカXX(スープラ)などはファストバッククーペを貫き通した。

 1967年春にデビューしたトヨタ2000GTは、ファストバックスタイルの2シータークーペだ。同じ時期に登場したマツダのコスモスポーツは、典型的なノッチバッククーペである。トヨタ2000GTと先陣を切って登場したホンダS600クーペは、ハッチバッククーペの先駆車でもあった。

 いすゞ自動車の117クーペとマツダのルーチェ・ロータリークーペは、プレステージ・スペシャリティークーペの代表だ。エレガントなイタリアンデザインをまとい、周囲から畏敬の眼で見られた。70年代になると、コンパクトスポーティーカーのレビンやトレノ、セリカなども背伸びしたクーペデザインで、若さをアピールしている。


プリンス スカイライン・スポーツなど【写真6枚】