【情熱のスポーツユニット】
他人とは違うクルマに乗っている、という優越感や満足感は、旧車乗りの自己主張そのもの。
その極みとも言えるのが、スポーツ仕様のエンジン搭載車を所有することだろう。
高圧縮比、複数キャブレター、ダブルオーバーヘッドカムシャフト、5速マニュアルミッションなど、クルマ好きの心をわしづかみにする、ホットなメカニズムが組み込まれたクルマたち。

クルマ好きのあこがれだったスポーツユニット搭載車。改めて1960〜70年代のクルマたちを見直してみると、ラインナップの中に意欲あふれるスポーティーグレードが存在していた。そんなモデルたちを振り返ってみる。

【スポーツユニットの意欲作たち Vol.1】

 1963年5月、第1回日本グランプリが開催されている。このレースでの勝敗は、新車の販売に大きな影響を与えた。レースで強いクルマは売れる、という流れができたのだ。そこで自動車メーカーの首脳陣は、高性能パワーユニットと高性能車の開発に力を入れるよう指示を出した。また、名神高速道路が開通したことに加え、一般道の舗装率が高まったことも性能にこだわるようになった理由にあげられる。

 高性能パワーユニットを最初に積み、多くの人を魅了したのが、SP310の型式を持つフェアレディ1500だ。初代セドリックのG型直列4気筒OHVを軽くチューニングし、搭載した。1962年秋にデビューしたときはSUタイプのシングルキャブ仕様だったが、日本グランプリ終了後の6月に、北米仕様と同じSUツインキャブを装着。4速MTもギア比をクロスレシオに変更している。アップデートにより、瞬発力と加速性能は大きく向上した。

 鈴鹿サーキットを所有するホンダはグランプリの3カ月後、4輪車市場に参入してくる。第1弾は、軽商用車のT360と排気量を拡大したT500だ。度肝を抜かれたのはパワーユニットである。上級クラスと同じ4サイクルの直列4気筒、しかもSOHCを飛び越えてレーシングエンジンと同じDOHCを採用したのだ。それだけではない。気筒ごとに1基の4連キャブ仕様なのである。最高出力は、なんと30㎰/8500rpmを発生する。

 10月には初の乗用車を送り出した。2シーターのライトウエイト・スポーツカー、ホンダS500だ。こちらも直列4気筒DOHCエンジンにCVキャブを4連装した。排気量は531ccだが、リッター当たり出力は88㎰を超えている。レーシングエンジンを超える高回転型エンジンの登場に、クルマ好きは感嘆の声を漏らした。

 1964年3月には排気量を606ccに拡大したS600へと進化。AS285E型エンジンは90 psを超えるリッター当たり出力を絞り出し、その気になれば9500rpmまで使いきることができる。最終型では791ccのAS800E型に発展したが、いずれも海外のジャーナリストから「時計のように精密なエンジン」と称賛された。

>>【画像7枚】1960〜70年代のクルマたちに搭載されたスポーツユニットの意欲作たち


【2】に続く