1970年代前半まで続いた日本の高度経済成長は、ピート・ブロックというクルマの哲学にも、大いなる変化をもたらした。2代目S50系や3代目C10を振り返ればわかるように、それまではレースでの好成績がそのまま基本性能の高さをアピールすることにつながり、販売台数の伸びに直結していた。ところが、徐々に大衆が求めるクルマ像にも変化が表れてきた。走行性能にのみ特化したクルマでは、多くの大衆の支持を集めることができず、車内の広さや装備に余裕のあるモデルが支持を集めるようになってきたのだ。

【BRE ダットサン 510 Vol.3】

【2】から続く

――BREがダットサンで成功を収めたことによって、日本車全体に対する周囲の見方が変わることにもつながりました。

ピート・ブロック「510と240Zの両車がレース史におけるアイコンになったことは本当に誇らしく思っている。けれど、BREがそれをなし得ることができたのは日野自動車のMr.ミヤコ(編注:宮古忠啓さん。アメリカにおける日野コンテッサでのレース活動やヒノ・サムライ・プロジェクトでBREとタッグを組んだ人物)の尽力があってこそだ。彼は1968年に当時の日産会長に掛け合って、BREがダットサンのためにアメリカでなし得ることを説いてくれた。そうでなければニッサン・ノース・アメリカの管理部門がわれわれとMr.カタヤマ(編注:片山 豊さん)が出会うことを許さなかっただろう。その協力があったからこそ、日産がトライアンフやポルシェを相手に対抗できることをBREが証明できたんだ。私は今でもそのことに深く感謝している。そして、いまも世界中にBREにトリビュートを捧げた510が存在していることがうれしいし、世界のどこでもダットサンのファンと会って話すことが大好きだ。すべての510ファンとお祝いしたい気分だよ(笑)」


>>【画像34枚】アーム類のピボット打ち替えや細いスプリングの採用など、さまざまなモディファイによりローダウンとタイヤのサイズアップを実現したフォルムなど


L16型水冷直列4気筒SOHCをチューンナップ。L16型は最高出力が100psと、もともと排気量当たりの出力が高く、モディファイに向いたシンプルな構造も有利に働いた。


純正はSUだが、BREはミクニ製SOLEXツインキャブレターを装備。


セミトレーリングアーム式のリアサスにはKONIの車高調整式ダンパーを使用。スウェイバーの位置低下など、さまざまなモディファイが施されている。前傾して設置された燃料タンクの下には、高速コーナーでの燃料切れを防ぐ小型サンプを装備。そこから電動ポンプを経由したラインは再びトランク内に戻される。


BREダットサン510(ヒストリック・トランザムカー仕様)1972年モデル SPECIFICATION 諸元
全長 4070mm
全幅 1735mm
車両重量 1982ポンド(899kg)
エンジン型式 L16型改
エンジン種類 水冷直列4気筒SOHC
総排気量 約1800cc
最高出力 220ps以上
変速 機5速 マニュアル
サスペンション前/後 マクファーソンストラット・コイル独立 / IRSセミトレーリングアーム
ブレーキ前/後 11.5インチ・ベンチレーテッドディスク(ポルシェ906用) / 9インチ・ドラム
タイヤ前後とも 20.0×8.0-13

おもな戦績
SCCAトランザム2.5チャレンジ・チャンピオンシップ 1971年シーズン6勝、1972年シーズン6勝など。


【1】【2】から続く