レーシング仕様のエンジンは、扱いづらくストリートには不向きとされる。高回転重視で低速に弱いというのが主な理由だ。このS31Zは、これまでの常識を非常識に変えた。パワーは正真正銘のドラッグスペック、それでいて乗りやすさは完璧なストリート仕様。レーシングエンジンは、もう競技車専用ではない。

【1977年式 日産 フェアレディZ Vol.5】

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 そんな中川代表の話にいつわりがないことを、オーナーは納車日の帰り道、身をもって体感した。4000rpmを上限と指定された、慣らし運転。それでも、レスポンスもパワー感もサウンドも、実際の加速も、以前とはまったく違ったのだ。

「想像以上、何もかもが別世界。スピードを出さなくても、レーシングエンジンは手に入れる価値アリですわ」
 そう話すオーナーは昨年の暮れ、岡山国際サーキットで全開走行を初体験。ストレートで同じZのチューンドをとらええて、軽く抜き去った。
「200km/hまであっという間でした。こうなると足まわりもやりたくなります」とオーナー。イエローZの進化はまだまだ止まらない。

>> 【画像38枚】キャリパーがR32のタイプMとなるフロントのブレーキシステムなど。ローターはφ295mmにサイズアップ。キャリパーはボディと同色で、オーナーがペイントしている


>> 巨大なフロントアンダーパネルはオーナー渾身の自作品。FRPを駆使し、強度や重量にもこだわった本格仕様。装着により高速走行時の安定感が見違えるようによくなったそうだ。


>> フロントスポイラーは、下方向に延長加工。車高を低く見せるとともに、ボトムをサイドシルのラインに合わせ、ボディとの一体感を高めている。


1977年式 日産 フェアレディZ(S31) SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:ボディ総剥離(10年前)、パールイエロー(ホンダS2000)オールペイント、フロントスポイラー、自作フロントアンダーパネル、タテ熱戦リアガラス
■エンジン:L28型改3.25L仕様(ボアφ89.5mm×ストローク86mm:N42マニアブロック&ヘッド)、372ps/41kgm、圧縮比12.5、亀有製Iカム(77度カム、リフト10.0mm)/バルブガイド/シートリング/チタンリテーナー/ビッグバルブ(INφ46mm、EXφ38mm)、ISSKY製バルブスプリング、MORE DRIVEキャリロ製コンロッド/CP鍛造ピストン/フルカウンタークランク、Wビートメタルヘッドガスケット(1.2mm)、燃焼室アルゴン溶接/ポート加工/ブロックフィラー加工、3S-G型用オルタネーター流用(削り出しブラケット製作)、強化セルモーター、プロショップ中川製オイルキャッチタンク、ARP製スタッド/クランクキャップ/ヘッドボルト
■吸排気系:ソレックス50PHH、MORE DRIVEオリジナルφ48mm等長タコアシ(6-2-1)/φ80mmステンレスマフラー
■点火系:WAKOテクニカル製LA700/CD200/パワーエキスパンダー、亀有製デスビ
■冷却系:トラスト製2層ワイドラジエーター/オイルクーラー(10段)、ケミテッククーラント
■駆動系:MORE DRIVEオリジナルカーボンクラッチ、71Cミッション(OS技研製3速クロス)、ニスモ製LSD(イニシャルアップ:ファイナル3.9)
■燃料系:ボッシュ製燃料ポンプ
■サスペンション:ビルズ製フルタップ車高調(F/R)10kg/mm
■ブレーキ:(F)R32タイプM用キャリパー+φ295mmローター (R)S15用キャリパー+φ250mmローター、S14用マスターバック&シリンダー流用
■タイヤ:アドバン ネオバ(F)205/45R16 (R)225/45R16
■ホイール:RSワタナベ8スポーク(Rタイプ)(F)15×9J (R)16×8J
■インテリア:ビクトリアφ350mmステアリング、レカロ製SPGバケットシート、シュロス製4点式ハーネス、Defi製メーター(水温、油圧、油温)、オートメーター製タコメーター、PLX製A/F計



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