お笑い芸人が注目する場所がある。埼玉・大宮ラクーンよしもと劇場だ。吉本興業が14年7月に完成させた県内初の常設劇場。固定席が858席もある大阪・なんばグランド花月(NGK)、458席の東京・ルミネtheよしもとに比べると、座席数は141で小さいが、昨年は“稼ぐ芸人”を多数輩出した。

 筆頭格はマヂカルラブリー。昨年上半期は、野田クリスタルがピンで「R-1ぐらんぷり2020」で優勝。末の「M-1グランプリ2020」ではコンビで初優勝を果たし、野田は年間で最も稼いだ芸人となった。

 マヂラブは、漫才やコントは折り紙つきながらも、日の目を浴びるチャンスを逃し続けた同劇場のユニット・大宮セブンの一員だ。構成員の囲碁将棋は、14年の「THE MANZAI」で決勝戦に進出。「第36回ABCお笑いグランプリ」の覇者・GAGは、「キングオブコント」の決勝戦に4度も進出したコントの申し子。ジェラードンは、バラエティ番組への出演をグンと増やした。

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 マヂラブに負けず劣らず輝いたのは、すゑひろがりず。袴姿で小鼓を鳴らす狂言風漫才は「M-1グランプリ2019」の決勝初進出で一気に広まり、昨年から今なお大活躍。南條庄助は「R-1ぐらんぷり2020」でも決勝3位に輝いた。コロナ禍で自粛中に公式YouTubeチャンネル「すゑひろがりず局番」では、狂言風に「あつまれ どうぶつの森」を紹介すると大バズリ。「香水/瑛人 すゑひろがりず【和風変換して歌ってみた】MV再現」の動画では、女性ファンを増やした。

 その20年、マヂラブに惜敗しながらもM-1準優勝に輝いたおいでやすこがが、一気にスターダムにのし上がった。ピン芸人のこがけん、おいでやす小田による即興コンビだが、2人の運命を変えたのが大宮の劇場だ。

 19年春、ピン芸人にツッコミ芸人がツッコむイベントがあった。小田がツッコむ相手として、クジで引き当てたのがこがけん。これが爆笑に次ぐ爆笑となり、「M-1」予選に挑む相手を前年(18年)のゆりやんレトリィバァからこがけんに変更。小田にとっては3人目の相方だったが、20年にM-1ドリームを生んだ。

 M-1、R-1、キングオブコントの高実績芸人を次々と生んだ大宮。かつては島流しとやゆされた禁断のエリアが、今はブレイク予備軍芸人のパワースポットとなっている。

(伊藤由華)