志半ばで夢を諦め、転身した先で大輪の花を咲かせることがある。04年までお笑いコンビ「チャイルドマシーン」として活動していた樅野太紀さんはそのひとりだ。9年の芸人生活にピリオドを打った後は、放送作家に転身。元芸人だけあって芸人仲間から絶大な信頼を得ており、書くコントは面白いと好評だ。

 現在は「新しいカギ」(フジテレビ系)や「千鳥のクセがスゴいネタGP」(同)、「有吉の壁」(日本テレビ系)や「あいつ今何してる?」(テレビ朝日系)ほか多くの人気バラエティ番組を担当。「関ジャム 完全燃SHOW」「ミュージックステーション」「まだアプデしてないの?」(いずれも同)などジャニーズタレントの番組から音楽番組まで、ジャンルは多岐にわたる。

 栄誉を手に入れた実績もある。事情通のフリーライターは言う。

 ​>>芸人の活かし方が秀逸! マヂラブ、シソンヌらのコント番組の演出家は『有吉の壁』の橋本和明氏<<​​​

 「『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(同)で第41回放送文化基金賞・構成作家賞を、両親の出会いやプロポーズなどをドラマ化した『両親ラブストーリー〜オヤコイ』(日本テレビ系)で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞したのです。ほかにも、『有吉の壁』や『しくじり』、『クセがスゴい』などは特番からレギュラー化。作品を“成長”させるヒットメーカーです」

 関わる芸人はほぼ接点があった後輩や先輩で、現場での“再会”も珍しくない。超お笑い通のKinKi Kidsの堂本剛と「Mステ」の現場で顔を合わせたときは、「樅野さんじゃないですか!『ファンダンゴ(TV)』(吉本芸人専門チャンネル)見てますよ」とマニアックな感想を送られたという。

 一方、ドラマの世界で開花したのは元ピン芸人の我人祥太。かつてはコンビ「チャランボ」として活動していたが、ピンに転向。「R-1ぐらんぷり2010」で決勝戦に初進出するもさしたる結果を残せず、翌11年に芸人活動をフェードアウトした。

 ところが、作家業では大成功。昨年は放送作家としてバラエティ1本、脚本家としてドラマ3本、映画1本に携わった。さらに今期も奔走。7月10日に連ドラ「ホメられたい僕の妄想ごはん」(テレビ大阪ほか)がスタート。4日に始まるTBS日曜劇場「TOKYO MER〜走る緊急救命室」のParaviオリジナルストーリー「TOKYO MER〜走らない緊急救命室」にも関わる。主演は中条あやみ。緊急の現場で誰も“走らない”脱力系コメディだ。

 11年にコンビ「カリカ」を解散してピン芸人に転向、16年に芸人も引退したマンボウやしろも、脚本家として再スタートを切っている。ラジオのディスクジョッキーとしてレギュラー番組を抱える一方で、脚本家として参加した連ドラ「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)が8日にスタート。芸人時代はその顔面の低偏差値ぶりをイジられていたが、今では立派なマルチクリエイターだ。

 一流芸人になれなくとも、人の心を打つ番組は作れる。異能な元芸人作家たちは作品で実証している。

(伊藤由華)