今年3月、ビートたけしがオフィス北野を退社した。およそ30年にわたって率いてきたが、71歳からの人生は、たけし軍団などの“重い荷物を下ろして”、やりたい仕事だけをやっていきたいようだ。たけしは芸人や映画監督、番組MCや俳優ほか、マルチな活動をしているが、ここ数年は落語家という顔も併せ持っている。「やりたい仕事」にこの伝統芸能は、間違いなく入っていることだろう。

 「たけしさんは、亡くなった立川談志師匠に弟子入りして、立川錦之助という高座名を持った時期がありました。のちに、談志師匠の弟子にあたる立川談春師匠の落語会に、立川梅春として高座に上がっています。ちなみに、“ばいしゅん”という呼び名です」(テレビ雑誌の取材ライター)。

 談春といえば、独演会のチケットが即完することで有名。執筆した自伝的エッセー『赤めだか』は15年末にドラマ化されているが、たけしが談志師匠の役で出演している。また、同じく談志師匠をリスペクトする爆笑問題・太田光からオファーを受けて、16年には、爆問が所属する芸能事務所・タイタンのライブ20周年記念公演で落語を披露。さらに、車いすの漫談家・ホーキング青山と元たけし軍団・グレート義太夫が催した『迷人会』にもサプライズで落語を披露している。

バラエティ番組がマンネリ化し、ネタ番組で視聴率を稼ぐことが難しくなっている今、ネットテレビに活路を見いだす芸人が少なくない。地上波レギュラーを抱えるダウンタウン・松本人志でさえ、ネット番組のAmazonプライム・ビデオで『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』を配信中だ。その松本も故・桂枝雀師匠のCDを聴くことが日課。テレビや舞台で落語に挑戦することはさすがにないが、近い未来、会得に動くかもしれない。

 “松本ファミリー”の中核を担い、同じく枝雀師匠のCDで話芸を分析している千原兄弟・千原ジュニアは今月1日、高座デビューをはたした。大阪・YES THEATERで、初の独演会を開催したのだ。春風亭小朝の勧めで08年、大銀座落語祭に出演して、古典の名作「死神」に挑戦したことがきっかけ。今回は、およそ3か月にわたって練習を重ね、渾身の創作落語を披露している。

 ジュニアと同じく、松本と30年来の付き合いである月亭方正は、ちょうど10年前から落語家としての経験を重ねている。今では、師匠の月亭八方をしのぐほどのネタの本数だ。芸名もすでに、本名の山崎邦正から改名。上方落語協会の会員になっており、家族4人で東京を引き払って、上方落語の本拠地で地元でもある関西に移り住んでいる。

 方正が高座デビューした08年ごろ、ピン芸人・世界のナベアツとして「3の倍数と3が付く数字のときだけアホになる」ギャグが大ブームになった渡辺あつむも、今では地元の関西にリターン。桂文枝師匠に弟子入りして、桂三度の高座名を得て、高座に上がっている。方正と同じく上方落語協会の会員。その一方では、漫才師のジャリズムを解散後から続けている放送作家としても活動中。KinKi Kids・堂本剛の関西ローカル番組『堂本剛のやからね』(毎日放送)のスタッフであり、「天の声」として出演もする。

 ほかにも、キングコングの西野亮廣、NON STYLEの石田明、南海キャンディーズの山里亮太も落語経験者。今回のたけし独立に触発された芸人は今後ますます、落語に魅了されるかもしれない。