主力投手の故障と出遅れ。「いや、それくらいのハンディがあって、ようやく他球団は互角に戦えるんだから」――。そんなやっかみも聞かれる福岡ソフトバンクホークスだが、選手層の厚さを再認識させられた。

 「キャンプ初日からエースの千賀が別メニューとなり、工藤公康監督(56)もかなり心配しています。高橋礼も開幕に間に合うかどうか、微妙なところ。甲斐野央に関しては絶望的」(スポーツ紙記者)

 千賀は右ふくらはぎの違和感を訴えていた。2月15、17日にブルペンに入ったが、

「ふくらはぎの故障は慎重にならないとダメ。ふくらはぎを痛めたベテランがそのまま引退するケースも多々ありますので」(同)

 と、まだ楽観視できない状況だ。

 「開幕戦のオーダーに、デスパイネとグラシアルの名前もないと思われます。キューバは東京五輪の予選を戦わなければならないので、彼らの来日はかなり遅れるはず」(プロ野球解説者)

 相当な戦力ダウンが予想される。しかし、三軍制を敷くチームである。「千賀2世」のデビュー戦が前倒しされそうだ。

 今春キャンプで一軍主力グループを意味するA班に振り分けられた育成選手が2人いる。一人は昨秋の台湾リーグで本塁、打点の二冠王となった内野手・砂川リチャード(20)。2人目はピッチャーだ。右の剛速球投手、尾形崇斗(20)である。背番号120の尾形は昨年の練習試合、教育リーグなど31試合に投げ、防御率1・62の好成績を残している。「奪三振率」の高いピッチャーのようだ。昨年10月、若手の教育リーグでもある宮崎でのフェニックスリーグで、この尾形を見た某二軍コーチがこんなことを話していた。

 「近々に、一軍の主力になるピッチャー。ストレートで勝負できるところがスゴイ」

 剛速球を投げるということで、ソフトバンクの中では千賀2世と早くから呼ばれていたそうだ。しかし、主にリリーバーとして投げてきたので、もし、このまま支配下登録を勝ち取ったとすれば、セットアッパーとして一軍戦に出てくるだろう。

 チーム関係者がこう言う。

 「工藤監督は千賀がスロー調整となった時点で、先発陣を心配し始めました。『(6人を)固定できないかも』と周囲に漏らしており、経験値の浅い先発投手が早々に打ち込まれてしまう試合も多くなりそう。そうなると、リリーフピッチャーは何人でも欲しいところ」

 尾形にも十分チャンスはありそうだ。もっとも、尾形、砂川は支配下登録を念頭にA班に振り分けたのではないという。「勉強させるため」だった。筆者も尾形のフリー打撃登板を見たが(3日)、前日に見た他球団キャンプの一軍投手よりも速い。この時点では前出のチーム関係者が「まだちょっと…」と早期の支配下登録は否定していたが、故障者の続出で状況は変わってきた。チャンスは十分にある。

 尾形は17年育成ドラフト1位でプロ入りした。尾形のことを某球団スカウトに聞いてみたら、「全球団がチェックし、将来性も確信していた」と言う。では、なぜ指名しなかったのか?

 「70人までしか支配下登録できません。才能はあるけど、一軍レベルになるまで5年くらい掛かるというピッチャーなら、全国にたくさんいますよ。支配下登録の人数制限もある以上、そういう投手は大学、社会人に進んだ後を見守っていくしかありません。育成で指名するにしても、カネが掛かるしね」(在京球団スカウト)

 選手を育てるには、カネが掛かるのだ。専用施設の確保もそうだが、ファーム担当コーチの人数も増やさなければならない。他球団が一軍クラスになるまで5年以上掛かると見て指名を見送った尾形を3年でここまで育てたのは、ソフトバンクの指導力の高さだ。とは言え、可能性を秘めた高校生を育成枠で大量指名できるのだから、ソフトバンクの天下は、まだまだ続きそうである。(スポーツライター・飯山満)