弾ける笑顔、大きな声。打席で喜怒哀楽を前面に押し出し、ピッチャーと対峙する山下幸輝。ベイスターズで、いやプロの世界でもここまで気持ちを露わにするプレーヤーも稀だ。

 2015年はルーキーながら開幕一軍キップを掴み、同期の倉本寿彦と共に開幕スタメンを果たすかと思われるほど評価され、2年目には62試合に出場。勝負強いバッティングとマルチポジションを守れる内野手として期待されていた。しかし2017年、18年共に21試合出場に留まり、昨年は1度も一軍に上がることは無かった。

 6年目の勝負の今年は、金髪に染め上げるなど心機一転。すると、ファームでは12試合で打率.375、8打点、ホームラン1本、OPSは1.073と絶好調で、7月14日には待ちに待った一軍昇格。7月19日には久しぶりのヒットを放つと、24日には立場的には打ってアピールしたい場面で、しっかりとフォアボールを選びチームに貢献。31日にはチャンスの場面に代打で登場すると、詰まりながらもレフト前に落とし、久々で貴重な打点もマーク。今シーズンはここまで全て代打で登場し、11打席3安打1四球、打率はジャスト3割の好成績で、チーム内で徐々に存在感を高めている。

 まだ、球場は上限5000人の状況で、大声を上げての応援は禁止。プレーヤーの声もよく伝わってくる中、山下の打席での気合いの入った雄叫びはなおさら際立つ。打ち損ねたかに見えるファールでは悔しそうに天を仰ぎ、ボールを見極めれば納得の笑顔を見せる。たとえ凡打に倒れても、笑顔で前を向く姿はベンチで見守るチームメイトも思わず笑顔にさせている。
 
 18年5月31日、楽天イーグルスの当時抑えの切り札の松井裕樹からサヨナラヒットを放った際のヒーローインタビューでは、プロ野球史上でも1番の涙の量と思われる号泣で、今でもベイスターズファンの語り草となっている。あの際は喜びとともに悲壮感も感じ取れたが、今年は心の底から野球を楽しんでいるような、ポジティブな感情しか伝わってこない。

 喜怒哀楽を思い切り表現する山下幸輝の姿は、敵味方関係なく眩しくスタジアムを照らしている。

取材・文・写真 / 萩原孝弘