復調の兆しか、それとも「取り戻した」のだろうか。

 東京ヤクルトスワローズの山田哲人は、6月9日の千葉ロッテ戦で本塁打を含む3安打を記録し、チームの勝利に貢献している。特に3回に飛び出したレフトへの本塁打は目の覚めるような一発であり、ここまでの不調を吹き飛ばすような当たりにも感じられた。ロッテ先発岩下が投じた真ん中高めの147kmの直球を真芯で捕らえ、鮮やかな放物線を描いている。「ホームランというイメージよりも、自分のスイングをすることを心掛けた」とコメントの通り、山田本来のバッティングそのものと言える一振りだった。

 また、前日の最終打席でもファウルで粘った末、レフトスタンドへライナーで運ぶなど長打力の健在ぶりを発揮、ロッテとの2ゲームを終えた時点でリーグ4位となる14本塁打を積み上げている。

 今季は開幕直後に新型コロナウイルス関連の「特例2021」での欠場があった以外は、ここまで常時出場を続けている。だが、.249(6月9日終了時)と伸び悩む打率などを見ても、背番号1に対するファンの懸念は拭えないままだ。昨年、シーズンを通してのコンディション不良に悩まされ、僅か94試合の出場に止まっており、今季も春先にゲーム前の練習を休むなど、未だ体調への不安が囁かれている。

 今季のスワローズは若き4番村上宗隆や、セ打率2位の塩見泰隆、サンタナやオスナの両新外国人も好調と、しっかりとした打線の軸が揃っていることが阪神、巨人に次ぐ3位を走る原動力となっている。今後、山田の状態次第でチームの勢いはさらに増すことは間違いなく、シーズン中盤戦以降、上位2チームを追いかけ優勝争いに加わる為には、キャプテンの復調は絶対条件だ。

 交流戦後半の千葉ロッテとのカードで見せたバッティングは、夏場へ向け、復調を予感させるに十分なほど山田らしい当たりと言えるだろう。そしてコメントの通り、「自分のスイング」を取り戻した時、山田自身と共に、燕軍団はさらに上昇気流に乗って行ける。

 現在28歳、選手としてのピークはまだ先にあると期待を込めるファンも多い。球界を代表するスラッガーとして、スワローズの顔として山田哲人の打棒完全復活を願わずにはいられない。代名詞でもある「トリプルスリー」は決して、過去のものではないはずだ。(佐藤文孝)