広島・佐々岡真司監督の「温情」が裏目に出た。

 5月17日、栃木県・宇都宮清原球場で行われた巨人対広島戦は、9回裏にドラマが待っていた。ベテラン・中島宏之の安打で巨人がサヨナラ勝ちしたわけだが、8回途中から“ヘンな空気”も漂っていた。

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 「宇都宮清原球場のブルペンはファールゾーンにあります。8回表の広島の攻撃が始まった頃、巨人ベンチがざわつき始めたんです」(球界関係者)

 広島には、守護神・栗林良吏がいる。その栗林が「コンディション不良」で登板できなかったのは、試合後の佐々岡監督が明かしている。だが、栗林は出場登録されていた。“登板不能”な状況にあったことは、メディアはもちろん、巨人サイドも把握していなかったのだ。

 「クローザーが投球練習を開始するのは、7、8回。なのに、8回の攻防が始まっても、栗林が投球練習をしていませんでした」(前出・同)

 ファールゾーンにブルペンがあるため、どのピッチャーが準備をしているのか、“丸見え”なのだ。

 広島ブルペンを見て、巨人ベンチは「先発の遠藤淳志を完投させるつもりなんだ」と察し、同時に「栗林は出て来ない」と直感したそうだ。

 「遠藤のチェンジアップとカーブに巨人打線は翻弄されていました」(スポーツ紙記者)

 9回表・広島の攻撃。スコアは2対0で広島がリードしていた。一死満塁、追加点の好機で佐々岡監督がピッチャーの遠藤をそのまま打席に向かわせた。

 「遠藤に代打を送り、9回裏に他の投手を投げさせる選択もありました」(前出・同)

 スタンドのファンが「遠藤が9回もマウンドに上がる」と分かり、少しざわついた。しかし、巨人サイドは少し違った見方をしていた。

 「8回の時点で、栗林が準備をしていなかったので、『遠藤に代打を出さない』と読んでいました。だから、遠藤の前の8番バッターを敬遠して、満塁策を取ったんです」(前出・球界関係者)

 結局、遠藤はショートゴロ併殺打に倒れ、追加点を挙げることはできなかった。

 そして9回裏、巨人の最後の攻撃。遠藤が打たれ始めても、広島ブルペンでは栗林が投球練習をしなかった。ここで、メディアも「栗林に何かあったんだな」と勘づいたが、巨人サイドは「栗林が投げないのなら、怖くない」と強気に捉えていたそうだ。

 佐々岡監督は遠藤について、「完投したことはあるけど、完封はまだない。完封したら、自信になるから」と語っていた。若い投手を育てたいとする指揮官の温情だろう。

 プロ野球の試合が行われるほとんどの球場は、室内にブルペンがある。ブルペンが丸見えになる球場では“独特の心理戦”が展開されるようだ。

 今季の広島だが、ここまでイニング別の失点数を見てみると、8回が「32」で最多。守護神・栗林につなぐセットアッパーが弱点となっており、「魔の8回」とも言われているそうだ。逆転されたのは9回だが、8回の攻防中に“栗林不在”は露呈していた。室内ブルペンとなる東京ドームで仕切り直しと行きたいものだ。(スポーツライター・飯山満)