5月29日、オリックスとの交流戦で大敗した中日が「最後のマウンド」に送ったのは、根尾昂だった。

 試合前のことだ。前日に続いて、この日も立浪和義監督は忙しそうにしていた。

 「根尾をショートに入らせ、自らノックをしていました。試合では守らせてもらえませんでしたが、フットワーク、スローイングも安定してきました」(プロ野球解説者)

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 忙しさの理由は、それだけではない。その29日の試合前、石川昂弥の登録が抹消された。27日の同カードで三塁ゴロに倒れた際、一塁手を避けようとし、バランスを崩した。左足を痛めてしまい、その状態に関する質問攻めにもあっていた。

 「高橋周平が戻ってきたので、しばらくは『三塁・高橋、遊撃・三ツ俣』の布陣になるんじゃないかな。若い石川が打つとチームが盛り上がっていたので、長期離脱となったら、マイナスです」(前出・同)

 50試合を消化し、23勝27敗、借金4の4位。チーム打率2割4分5厘、総本塁打数30。リーグトップの巨人が55本だから、中日打線はその半分ほどしかホームランが出ていない。

 Aクラス浮上のカギとして、「長打力のある選手が出てくれば」と言われてきたのもそのためだが、このオリックスの3連戦の最中に飛び込んできたのが、キューバリーグのパワーヒッター、ペドロ・パブロ・レビージャ内野手の緊急獲得だ。

 「NPBに行くと現地メディアが伝え、中日が認めたんです。育成契約を結びますが、試合カンを掴んだら、即一軍となりそうです」(球界関係者)

 同関係者によれば、昨年オフの時点でペドロ・パブロ・レビージャは「獲得リスト」に入っていたそうだ。新型コロナ禍による来日の遅れなどが懸念され、いったん、契約を見送ったが、主砲・ビシエドの調子がイマイチなこともあって、獲得を決めたという。

 しかし、同時にこんな指摘も聞かれた。

 「キューバは2017年のWBCで苦戦したように、メジャーリーグで活躍できる逸材はほとんど残っていません。4番ではなく、6番か7番でいいというのなら、話は別ですが」

 中南米に外国人選手の獲得ルートを持つ他球団スタッフがそう言う。

 ペドロ・パブロ・レビージャに一抹の不安があるからだろう。「石川を育てたように、根尾もガマンして使っていけ」の声も多く聞かれた。

 奇しくも、その根尾が2度目の登板を果たした。走者は出したものの、無失点で切り抜けている。立浪監督はワンサイドで負けていたため、リリーバーを無駄に消耗させたくなかった旨も明かしていた。

 「立浪監督が根尾に『投げるか?』と聞いたのは、5回の攻防が終わったあと。登板まで約1時間、肩を作ったり、休めたりしながら待機していました。登板準備が板についていたというか、ピッチャー向きなのかも」(前出・球界関係者)

 指揮官が試合前に特定の選手にノックをするのは、異例なこと。根尾は投げられたことで笑顔を見せていたが、それで満足してしまったら、成長はない。ショートで使ってもらうには投球練習よりも「打ちたい!」の気持ちを前面に出すべきだ。(スポーツライター・飯山満)