「ドラマを起こす舞台が整ったと思うので」

 試合後のインタビューも笑顔で答えていた。こんな饒舌な矢野燿大監督を見たのは、今季初めてではないだろうか。

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 7月24日、阪神が前半戦最後のDeNA3連戦を全勝し、「勝率5割」に到達した。

 開幕9連敗、NPB史上ワースト勝率の6分3厘(4月14日)、「借金16」…。負の記録ばかりが伝えられた。「借金16」となったのは、4月21日と同23日。4月24日以降の69試合を42勝26敗1分という“驚異的な追い上げ”で勝率5割に押し戻したわけだが、興味深いのは試合後の矢野監督のコメント。こちらの聞き間違いでなければ、「ドラマ」なる言葉を6回も口にしていた。

 「チーム内から前向きな話が聞かれるようになったのは、本当です。救援投手陣が好調なので、試合中盤の5、6回でリードしていたら『今日は勝った』といった雰囲気になります」(プロ野球解説者)

 そもそも、前半戦に大きく出遅れた敗因は2つ。矢野監督の「辞める発言」による混乱と、救援投手陣の不振だ。

 「昨季まではクローザーのスアレスに繋げば勝てると、チーム全体が考えていました。その後継で獲得したケラーが序盤戦、絶不調でしたし」(前出・同)

 その後、岩崎優をクローザーにし、中継ぎ投手陣を立て直し、「継投策=ストロング・ポイント」となった。矢野監督の言うドラマとは、逆転優勝。奇しくも、5割到達となった24日、首位・東京ヤクルトは広島に競り勝ち、マジックナンバーを再点灯させた。

 「勢いに乗ると、一番怖いのが阪神。5割到達でファンも盛り上がっていますし、後半戦の台風の目になるのは必至」(在阪記者)

 そんな風に期待する声も多く聞かれた。

 しかし、たとえ優勝のドラマが実現したとしても、変わらないのが「指揮官の交代」だ。

 一般論として、新しい指揮官を外部招聘する場合、球団が“アタリ”を付けるのはこの時期だ。直接、もしくは仲介者を立てて、「その意思があるのか否か」を確かめる。就任における条件、チームビジョン、コーチ人事の希望などを聞き、その準備を進めていくのだが、今の阪神にはそれらしい動きが全く聞こえてこないのだ。

 そのため、「内部昇格」を予想する向きも強くなってきたが、同時にこんな指摘も出始めた。

 「逆転優勝はともかく、Aクラスをキープしたらどうなんだ? 矢野監督は就任4年間で全て3位以上となり、球団史上、最も安定した指揮官ということになるぞ…」(球界関係者)

 「名将」とまでは言わないが、次の監督は「やりにくい」と思うはずだ。

 前出のプロ野球解説者がこう言う。

 「矢野監督の采配は球界の常識では理解しがたいところもあります。佐藤輝明、大山悠輔の守備位置を動かしすぎ。佐藤はライトとサード、大山はサード、ファースト、レフト。巨人・原(辰徳)監督は岡本和真を動かさないし、東京ヤクルト・高津(臣吾)監督も村上宗隆をサードで固定させてきました」

 外国人選手との兼ね合いもあるが、主軸バッターに守備の負担を強いるのは良策ではない。後半戦の最初の対戦相手は東京ヤクルトだ。本当に「ドラマ」を起こせるかどうか、ここで分かるだろう。(スポーツライター・飯山満)