10月20日に開催が予定される今年のプロ野球ドラフト会議。無観客開催となることが決まったと9月5日に報じられ、ネット上のファンの間で話題となった。

 報道によると、NPB側は2019年以来3年ぶりとなる有観客開催をここまで検討してきたというが、新型コロナ感染拡大の第7波は予断を許さない状況が続いているとして今年も無観客継続を決定。ネット上には現地で見られないことを惜しむ声が相次いだが、中には「今年もモラルの無いファンが選手を傷つけるリスクを回避できた」、「第2の大山が生まれるくらいならずっと無観客でいい」といった賛同のコメントも少なからず見られた。

 例年都内のホテルで行われているドラフトは、2009年から抽選で選ばれたファンを無料招待するという形で有観客開催が実施されている。指名や抽選の度に会場から沸き上がる歓声やどよめきはドラフトの風物詩となっているが、2016年ドラフトでは場内の反応が他ファンや当事者の選手に波紋を広げる出来事が起こっている。

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 問題の反応が起こったのは、阪神がドラフト1位を指名した直後のこと。阪神は創価大・田中正義(現ソフトバンク)、桜美林大・佐々木千隼(現ロッテ)のどちらを1位指名するのか検討を重ね、佐々木を1位指名する結論に至ったと伝えられていた。ただ、迎えたドラフトでは事前報道で1位候補に挙がっていなかった白鷗大・大山悠輔を1位指名した。

 この直後、会場内からはノーマークの選手が1位指名された困惑からか、それとも1位で取るほどの選手ではないという不満からか、「えぇー!?」と悲鳴にも似たような大ブーイングが噴出。金本知憲監督(当時)ら阪神関係者は特に表情は変えなかったが、ネット上のファンは「大山指名への露骨な拒否反応エグすぎ」、「いくら不満だろうとこの仕打ちはちょっと酷すぎないか」と騒然となった。

 大山は侍ジャパン大学代表の一員として参加した2016年の日米大学野球で4番を張るなど強打の三塁手として鳴らしたが、同大会で15打数2安打と振るわなかったことなどから、ドラフト前時点ではどの球団も指名するなら2位以下で、1位の枠は割かないだろうという見方が大半だった。金本監督はスカウトから2位で確保可能として大山を推薦されたが、ソフトバンクが外れ1位、西武・オリックスが2位で指名するかもしれないという情報があったことなどから急きょ指名順を前倒ししたことを後年に明かしているが、会場の観客としてはなぜ1位枠を無駄につぶしたのかという思いが強かったようだ。

 勝手に値踏みされ不当にブーイングを受けた形の大山だが、阪神入り後は昨季までに「580試合・.266・81本・318打点」といった数字を残し、今季も「108試合・.273・23本・80打点」(5日時点)と中軸として申し分のない成績をマーク。ストイックで人一倍責任が強い性格も相まって、ファンの間でもトップクラスの人気を誇る中軸に成長した。

 ただ、本人の中には2016年ドラフトで感じた悔しさや怒りは今も強く残っているようで、通算100本塁打を達成した7月3日・中日戦後の報道ではプロ入りからここまでの歩みを振り返る中で「あそこで悲鳴を上げた人全員を後悔させてやるんだという感情は今も持っています」、「あの時の悔しさは、僕が野球を引退するまで常に持ち続けていたい気持ちの一つ」と、約6年がたつ現在も根に持っている旨を明かしたと伝えられた。

 観客の心無い反応が、大山の心に今なお残る傷を負わせた2016年ドラフト。このような悲劇を繰り返してはならないとして無観客継続を望んでいるファンも少なくないようだ。

文 / 柴田雅人