清宮幸太郎(3年)の早実は7月17日の芦花戦を勝利し、「甲子園への階段」を上がった。

 「クジ運の強さもある。彼はやっぱり『もっているオトコ』なんだと思う」

 これは西東京大会の組み合わせ抽選会以降、取材陣から出ていた言葉だ。失礼ではあるが、2試合目で対戦した芦花高校は15人しかベンチ入りさせていない(大会プログラムより)。20人まで登録できるのだが、部員数のほうが少ないのだ。また、甲子園行きのライバルと目されてきた日大三、一線級の投手が5人も揃っている東海大菅生とは決勝戦までぶつからない。西東京のトーナメント表の左側に早実、右側に日大三、東海大菅生が振り分けられた。「クジ運の強さ」とは、こうした対戦校に恵まれたとする見方によるものだ。

 しかし、本当にそうだろうか。順調に勝ち上がればだが、怪物の足元をすくう力を持った“刺客”はいる。25日の準々決勝で対戦する可能性が高い日本学園は要注意だ。同校は春3試合を連続逆転勝ちし、30年ぶりにシード権を獲得した。学校全体で盛り上がっており、この応援態勢も大きな武器になるだろう。早実はOBもスタンドに駆けつけ、声援を送る。球場全体を早稲田カラーに染めており、対戦投手のほとんどがその雰囲気に飲み込まれて行った。投打ともに突出した選手はいないが、ネバーギブアップのドロ臭い姿勢はエリート集団を戸惑わせるだろう。

 ノーシードだが、創価もブキミだ。昨夏4強のメンバーがけっこう残っている。エース・菊地郁也は健在だ。1年生から中核を任されてきた浪川広之(2年生)もいる。打線は好投手と対戦したときも堅実に得点を挙げているだけに、打ち合いになっても引けを取らないだろう。

 日大鶴ヶ丘と駒大高が18日に激突した。勝ったほうが準決勝で早実を食うかもしれない。まず、日大鶴ヶ丘には投打の中心である赤星優志がいて、駒大高には好左腕・吉田永遠がいる。吉田に関しては、清宮から連続三振を奪って一躍有名になった日大三の左腕・桜井周斗を指して、「彼よりも上」(在京スカウト)の声もあるほど。昨秋都大会ではその日大三と対戦し、6回1失点に抑えてみせ、同校の小倉全由監督もその成長を認めていた。

 「これまでノーマークだったのは1年生のときに怪我をしたため。縦軌道のスライダーが武器だが、何よりもマウンド度胸がいい」(前出・在京スカウト)

 6月に逆上るが、早実の和泉実監督はメディアに西東京大会の展望を聞かれ、日大三について「できれば、ぶつかりたくない」と話していた。井上大成、桜井周斗、金成麗生、日置航など超高校級スラッガーを備えた日大三打線は春季都大会6試合で18本塁打と爆発している。

 早実の弱点は投手力である。日大三と決勝でぶつかれば、打ち合いになるだろう。だが、好投手の桜井、金成を打ち崩すのは至難の業だ。東海大菅生が勝ち上がってくるとすれば、小玉佳吾、松本健吾、山内大輔、戸田懐生、中尾剛の5本柱がいる。継投策ともなれば、怪物・清宮も苦戦するのは必至で、同校を率いる若林弘泰監督は元プロ野球選手だ。当然、勝負どころを嗅ぎ分ける能力に優れており、敬遠や「ホームランさえ打たれなければいい」という投球を指示してくるだろう。

 清宮の後の4番を打つ野村大樹の怪我も気になる。怪物は、スンナリとは勝たせてはもらえないようだ。

(スポーツライター・美山和也)

※写真・7月15日 対南平戦にて104号HRを打った清宮