アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦で、日大の選手による悪質な反則行為があった問題。監督が危険なタックルをするよう指示したことが関係者への取材でわかった。「news every.」小西美穂キャスターが解説する。

■ともに学生アメフト界をけん引…関学×日大

悪質なタックルが本当に「監督の指示」だったとすれば、問題の次元が変わってくる。日大アメフト部というのは、関学とともに日本の学生アメフト界をけん引してきた。

学生の日本一を決める大会「甲子園ボウル」で、去年、日大は過去28回日本一に君臨した関学を破り優勝した。

この日大アメフト部を日本一に導いたのが、内田正人監督。悪質なタックルは、この内田監督の指示だったとの証言が16日、明らかになったわけだ。

■問題の“タックル”どれだけ危険?

改めて、アメフトを見ない人のためにも何があったのか説明する。

問題があったのは、今月6日の定期戦だった。青が関西学院大学、赤が日本大学。タックルされたのは関学の「クオーターバック」。攻撃の指示を出す“司令塔”のポジションだ。

一方、タックルしたのは日大のディフェンスの選手。実際の映像をもう一度改めて見てみると、パスを投げた約2秒後、関学の選手が日大の選手にタックルされている。

関学の選手は、ボールを投げた後、体の力が抜けている状態のところに背後から猛タックルされ、地面にたたきつけられている。関学の選手は腰椎のじん帯を損傷するなど全治3週間のケガをした。

関学アメフト部の鳥内秀晃監督は、「街中を歩いている時に、後ろから100キロ級の人間に思いっきり体当たりされるくらいの衝撃がある」、交通事故みたいなものだと言っている。

また、「一歩間違えれば、非常に重篤な、人の人生を狂わせかねない事案」だと、鳥内監督は怒りをあらわにしていた。

■タックルのルール

選手の安全を守るために、タックルについてはルールがある。プレーが途切れた後や無防備な選手に後ろからタックルするのは禁止されている。

特にクオーターバックは攻撃の中心選手で、うまいパスを投げたり走るのが速かったり、試合を通じて、この選手がいるからこういうプレーができるといったことが決まる、チームの基礎になる。クオーターバックがケガをするとチームの戦力が大きくダウンする。だからこそルール上でも保護されているのだ。

元プロアメフト選手の河口正史さんは、「選手を鼓舞する意味でも『つぶせ』という表現を使うのはあり得ると思うが、『ケガをさせろ』というのはニュアンスが違う」「普通に考えれば、監督から具体的な指示がないと、あんなむちゃくちゃなことはしない」と話している。

■選手個人のラフプレーか、監督の指示か

焦点は、これが「選手個人のラフプレー」なのか「監督が命じた組織的なもの」なのか、ということだったが、16日、日大アメフト部の関係者が「監督の指示だった」と証言した。

さらに関係者によると、監督が選手に、試合の出場と引き換えに危険なタックルをするよう指示したという。

内田監督は、日大の常務理事や人事担当を務めていて、大学の実質的なナンバー2の立場。日大のある関係者は、内田監督について「職員も何も言えないくらい怖い。意見する人はいない。反対の意見なんてものは存在しない」と話していた。

■アメリカでも“悪質タックル”問題に

悪質なタックルをめぐって、過去には、全米プロのNFLで、組織的な問題が発覚した。

2009年から2年間、セインツのディフェンスコーチが相手チームの選手にケガをさせたら現金を与える報奨金制度をとっていたことが明るみに出た。相手が失神すると1500ドル、ストレッチャーで運ばれる状態にすると1000ドル、約10万円の現金を渡していた。

これは全米でも大きな問題となって、監督やコーチなどが無期限出場停止などの重い処分を受けた。

■被害を受けた選手の父は…

タックルを受けた選手の父親は、取材に対して「日大が指導者を一新するなどの対応がなければ、告訴も検討せざるを得ない」と話している。

ルールを守り、勝負する場で人間として成長するのが大学スポーツの精神で、選手の誇りでもあると思う。今回の問題が起きて、アメフトを真摯(しんし)にやっている学生、コーチ、関係者は、本当に残念な思いをしているのではないだろうか。