一体何者か、と選手名鑑のページをめくったファンも多かったのでは?

 7月13日に静岡・草薙球場で行われた今年のフレッシュオールスターゲーム。かつてイチローや青木宣親、中田翔がMVPを獲得し将来大成したというエピソードがすっかり定着したことで、毎年「第2の○○」を見つけ出すのがファンにとって楽しみな一戦となっている。

 今年、MVPに輝いたのはホークスの曽根海成だった。

 53回目の開催にして初のスコアレスドローの投手戦で、両軍で唯一のマルチ安打、しかも二塁打2本を放ったことが評価された。

 プロ4年目の22歳内野手、背番号は69。

 大抵の選手名鑑はポジション順、次に背番号順で選手が並んでいる。だが、それに倣って探しても、曽根はなかなか見つからなかったはずだ。

 名鑑が作成された春季キャンプの頃はまだ、背番号「140」の育成選手だった。'14年育成ドラフト3位で入団。ちなみに育成ドラフト出身選手がフレッシュオールスターでMVPを獲得したのは史上初めての快挙だった。二桁背番号は、今シーズン開幕直前の3月24日に支配下登録されて勝ち取っていた。

 おそらく多くのファンは思っただろう。

 ホークスからまたしても「育成の新星」が誕生するのか、と。

高校時代は無名、3年夏は急造の捕手で出場。

 WBCベストナインの千賀滉大を筆頭に、今年は甲斐拓也と石川柊太も台頭して「育成のホークス」を強烈に印象づけるシーズンとなっている。

 この曽根もまたホークス育成出身の御多分に漏れず、高校時代は無名の存在だった。母校は京都国際高校。甲子園の土は遠く、3年夏は府大会1回戦で敗退している。じつはその最終学年は本職の内野手ではなく捕手として出場していた。

「もともとの正捕手が夏前に怪我をしてしまい、僕の肩が強かったという理由でマスクを被ることになったんです」

 計ってみると二塁送球1秒7台の強肩、50m6秒を切る俊足。そして急造ポジションもこなせる野球センスの高さ。ホークスのスカウトはこの逸材を見逃さなかった。

プロ入り1年目は体重60kgだった!?

 言葉は悪いが“ただの石ころ”の数年先を予測するのがホークスのスカウティング。また、入団後は徹底的に体作りに専念させる。技術練習は二の次でいいというのが、この球団の育成プログラムだ。

 たとえば千賀も同様だった。入団時はもやしっ子のように細かったが、初めの約半年間はボールにほとんど触らせてもらえず、腹筋を「1日1000回」など体幹強化メニューに多くの時間を費やした。プロ入団前は「ほとんど130キロ台だった」直球が、1年目夏には151キロを計測した。

 曽根は今年の選手名鑑を見ても、「身長175cm、体重67kg」とプロ球界ではかなり華奢な部類だが、「1年目は体重60kgあったのかな」とプロレベルの体躯からはさらに程遠かった。

 入団から2年間は体力づくりがメインの三軍生活。昨年ようやく二軍公式戦で82試合に出場するチャンスを得て、水上善雄二軍監督から「この一年で最も成長した選手」と評されるまでになった。

ホークスの育成選手は、基礎さえ固めれば一気に伸びる。

 ホークスの育成選手は、一芸に秀でていたり抜群の身体能力を隠し持っていたりする選手が多い。基礎さえ固めてしまえば、その後は驚きのスピードで成長する場合が多い。

 技術向上へ。曽根が出した答えは自分の目標とする先輩を出来るだけ近くで見て、聞いて、感じることだった。

「昨年のシーズン中に、今宮(健太)さんに電話をして、1月の自主トレに連れて行ってくださいとお願いしました。教わりたかったのはやっぱり守備のこと。12球団ナンバーワンですから。プレーや練習を見るのもそうだし、どんなことを意識しているのか聞いてみたかった。学んだことは数えきれないくらい。守備のすべてを教えてもらいました」

 今年のキャンプ、オープン戦は背番号3桁ながら一軍にずっと帯同していた。

今宮さんを「抜く」と宣言した気概。

 工藤公康監督は、曽根について次のように評した。

「ショートを守らせると、身のこなしが今宮に似ているね」

 曽根に将来像を訊ねると、力強くこのように返してきた。

「自分の目標は今宮さんを抜くこと。負けないくらいの守備でアピールしたい。肩とスローイングの精度で特に勝負したいです」

 今宮さんのように……と言わない気概がじつに頼もしい。目指すのは「第2の今宮」ではないのだ。

 支配下登録を勝ち取ったものの、一軍デビューはまだ果たせていない。不甲斐なさに焦りもあった前半戦。だが、その中で掴んだフレッシュオールスターMVPの勲章が、またひとつ自信を取り戻すきっかけになったはずだ。

文=田尻耕太郎

photograph by Kyodo News