大リーグのオールスターも終わって、夏のトレードがそろそろ活発化してきた。ご承知のとおり、これは主に、ペナント争いをしている球団が、今季はすでに匙を投げた球団から有力選手を獲得するトレードだ。期限は7月いっぱいだから、本格的な動きはまだこれからだろうが、有力チームもそれぞれに弱点を抱えている。ゲーム差や勝率だけを見て、安心していられるわけではないのだ。

 いち早く動いたのはナショナルズだった。7月20日現在、勝率6割6厘。2位のブレーヴスには11.5ゲーム差をつけているから、ポストシーズンのチケットは手に入れたも同然だ。

先発投手、クローザー……各球団の補強ポイント。

 だが、このチームにはクローザーがいない。先発陣にマックス・シャーザー、ジオ・ゴンザレス、スティーヴン・ストラスバーグという強力なトリオが揃っているにもかかわらず、抑えがいないのだ。ここ数年は、ジョナサン・パペルボンやマーク・マランソンが金看板だったが、彼らが去った今季は、なんと合計7人の投手がセーヴ・ポイントを挙げている。裏を返せば、必殺の抑えが不在だ。これではポストシーズンに暗雲が立ち込める。

 そこでアスレティックスから獲得したのが、ショーン・ドゥリトル(30歳)とライアン・マドソン(36歳)のヴェテラン投手だ。両者ともピークは過ぎた感があるが、前者は14年に22セーヴ(防御率2.73)、後者は16年に30セーヴ(防御率3.62)を挙げた実績がある。彼らふたりと、今季のブルペンでは最も安定しているマット・アルバースを継ぎ合わせれば、ゲームの終盤ではらはらしなくてもすむかもしれない。

 一方、先発投手が欲しいのは、アストロズだ。すでに地区制覇は確定的(2位に15.5ゲーム差)だが、序盤戦好調だったダラス・カイケルとランス・マッカラーズJr.の故障で、急に空が翳り出した。9勝0敗、防御率1.67と飛ばしていたカイケルは首の不調を訴え、6月2日の試合を最後に休養に入った。7月下旬には復活できる模様だが、ベンチもしばらくは気がかりだろう。

選手側にとっても新天地で気分転換できる可能性が。

 マッカラーズのほうは、腰痛からの復帰が意外に早かったが、復帰後の4試合では19回3分の1を投げて自責点13と、結果を残せていない。もうひとりの柱、肘の故障で今季まったく投げていないコリン・マクヒューもそろそろ戻ってきそうな気配だが、いますぐフル回転とはいかないだろう。

 そこでアストロズが狙っているのは、ソニー・グレイ(アスレティックス)、ジェフ・サマージャ(ジャイアンツ)、ゲリット・コール(パイレーツ)という中堅の実力派だ。なかでも27歳のグレイは、まだまだ潜在能力を秘めている。'14年と'15年にはそれぞれ200イニングス以上を投げ、2年連続で14勝をあげた実績もある。彼が気分転換に成功すれば、アストロズには心強い戦力となるはずだ。

戦力が整っているドジャースの補強ポイントは?

 もう1チーム、地区優勝を確定的にしているのはドジャースだ(2位に11ゲーム差)。こちらはクレイトン・カーショー(15勝2敗)とアレックス・ウッド(11勝0敗)の両左腕が絶好調で、ブランドン・マッカーシーやリッチ・ヒルもまずまずの成績を残している。

 問題は前田健太と柳賢振が不安定なことだが、前田は4.23の防御率を3.50前後にまで持っていくことが当面の課題となるだろう。抑えのケンリー・ジャンセン(24セーヴ、防御率0.88)を筆頭に、ブルペンは他球団に比べると堅牢だ。問題があるとすれば、ルイス・アヴィランやグラント・デイトンの中継ぎ左腕がやや安定を欠くことか。

 こう見ると、現段階で最も戦力が整っているのはドジャースと思える。懸念はエイドリアン・ゴンザレスの欠場だが、ずっと狙っていたJ・D・マルティネス(今季いっぱいでFA)がタイガースからダイヤモンドバックスへトレードされてしまったので、ここに嵌まるピースが見当たらない。もしかすると、いまひとつ伸び悩んでいるジョク・ピーダーセンを放出して別の打者獲得に方針変更する線も考えられる。

他の有力球団の動きも予断を許さない。

 では、他の有力球団はどうだろうか。

 レッドソックスは、3年間鳴かず飛ばずに終わったパブロ・サンドバルに見切りをつけ、トッド・フレイジャーの獲得に動いていたが、ヤンキースにさらわれてしまった。となると、マーティン・プラド(マーリンズ)かデヴィッド・フリース(パイレーツ)、あるいはヤンヘルビス・ソラルテ(パドレス)が代替候補か。三塁手が欲しいことはまちがいないので、意外な名前が浮上してもおかしくはない。

 今季のサプライズ球団ブルワーズは、二塁手が欲しい。ジョナサン・ヴィラーの打率が低い(2割1分9厘)ままだと、ブランドン・フィリップス(ブレーヴス)やジェド・ラウリー(アスレティックス)に触手を伸ばす可能性がある。

 いずれにせよ、今季のペナントレースもあと10週間の勝負だ。ポストシーズンを見据えた動きは、まだまだ活発になっていくだろう。まともに行けば、ワールドシリーズはドジャースとアストロズの頂上対決が予想されるが、ナショナルズの先発トリオと打線の破壊力は侮りがたいし、カブスやレイズやダイヤモンドバックスなど、終盤戦で一気に追い上げてきそうなチームの存在も無視できない。最後の直線で、叩き合いが見られると面白いのだが。

文=芝山幹郎

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