ちょっと前の話になるが、アストロズの青木宣親外野手が日米通算2000安打を達成した翌日、スポーツ新聞の電子版にカブスの上原浩治投手が、ちょっと風変わりな祝福の言葉を寄せていた。

「長くやっていて、そういう記録を持っていないのは多分、僕だけ。いいですね、そういう記録を持つことは。おめでとうございます」

 そういう記録というのはもちろん、節目となる通算記録のことだろう。上原は今年で日米通算19年目。そんなに長くプロ野球選手をやっている人は少なく、絶対に何らかの通算記録を更新中である。そんな確信があったので、ちょっと調べてみた。

 現地7月23日時点で上原は日米通算699試合、2018.2回に登板して、134勝88敗、128セーブ、1933奪三振という立派な数字を残している。

 日米合算の記録の是非はまったく無視して、イチローの日米通算4335安打を日本歴代1位と捉えることと同様に、上原の現在までの記録を考えてみる。

上原はこのままでは名球界の入会資格がない。

 通算134勝128セーブというのは、たとえば名球会の入会資格である通算200勝、250セーブのどちらかにも届いていないので(これについてはまた後で触れる)、あまり注目される数字ではないかも知れない。だが、上原の日米通算699試合登板は、山本和行に次ぐ日本歴代16位に相当し、現役では日本歴代2位の945試合の岩瀬仁紀(中日)、日本歴代10位の830試合の五十嵐亮太(ソフトバンク)に次ぐ3位の数字である。

 日米通算700試合まであと1試合。その大台に到達した日本人は、1936年に発足した職業野球連盟から始まる長い歴史の中でたったの15人しか存在しないことを考えれば、これは本当に特別な記録だ。

 上原の日米通算1933奪三振は、日本歴代28位に相当する。

 現役では日本歴代14位の2156奪三振の杉内俊哉(巨人)に次ぐ2位で、日本歴代51位の1494奪三振を更新中の和田毅(ソフトバンク)を上回る記録だ。

 日米通算2000奪三振まで、あと67三振。その大台に到達した日本人が過去に22人しかいないことを考えれば、これもまた特別な記録であることは間違いない。

130勝と120セーブを同時に記録した投手は少ない。

 上原の日米通算128セーブは、日本歴代20位の林昌勇(元ヤクルト)に並ぶ記録だ。ただし、林は韓国プロ野球で通算253セーブを挙げており(6試合だけ登板したメジャーではセーブなし)、日韓通算では381セーブにもなる。同様に韓国や台湾のプロ野球でも幾つかの数字を残している高津臣吾は、日・米・韓・台の記録を加えると通算755試合に達し、それは歴代9位の鹿取義隆に並ぶ。

 そのあたりが合算記録の難しいところだが、議論すべきところは他にある。

 名球会は打者なら通算2000安打、投手なら通算200勝か250セーブが入会資格になっている。前述の通り、上原はここまで日米通算134勝、128セーブで入会資格を満たしていないが、130勝以上を挙げながら、同時に120セーブ以上を記録している投手は多くない。

 上原に匹敵するのは大野豊氏(元広島・148勝138セーブ)や斉藤明夫氏(元大洋・128勝133セーブ)、斎藤隆氏(元横浜・ドジャースほか・日米通算112勝139セーブ)ぐらいではないかと思う。

 ついでに書いておくと、小林雅英(日米通算42勝235セーブ)や藤川球児(日米通算49勝225セーブ)も名球会には入っていない。彼らは通算セーブ数の歴代4位と5位である。彼らが名球会に入っていないのは、とても残念なことだ。

上原浩治が名球会に入れないのは損失だ。

 1978年に創設された名球会は当初、投手なら日本プロ野球で通算200勝、打者なら同2000安打に限定されていた。250セーブと日米合算記録が入会資格として認められるようになったのは2003年のことだ。

 勝利数よりセーブ数の方が多いのは、「先発投手が勝ち星を挙げる条件を満たすのは救援投手より難しい」という考え方からきているのだろうが、そこはもう少し柔軟に対応して頂いていいような気がする。単純に勝利数とセーブ数を合算することが正解だとは言わないが、大野豊、斉藤明夫、斎藤隆、上原浩治、小林雅英、そして藤川球児には、その資格があると思う。

 通算記録というのはメディアやファンが話題にしない限り、話題にはならない。だが、話題になる時には往年の名選手の名前が掘り起こされて、メジャーリーグがそうであるように、日本の近代史と時を刻んできた。

 同時に先発から救援に転向した投手たちの中にも、彼らがチーム事情や自らのキャリアを再生させるために通ってきた決して平たんではない道のりが刻まれている。

 名球会への入会が日本の野球殿堂とは違い、報道関係者の投票で決められるものではないというのは承知しているが、その入会資格についてはもう一度、再検討するべき時期に来ているのではないかと思う。

文=ナガオ勝司

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