本日7月29日、決戦の火蓋が切って落とされたインターハイ。

 この原稿が掲載される時点(29日の朝)から1回戦が始まっており、初戦で涙を飲むチームもあるだろうが、まずは今大会注目の選手たちをなるべく沢山紹介してみたいと思っている。

 高校生にとってこのインターハイは、全国に自分の名を轟かせるだけでなく、自らの進路を決定付ける重要な戦いでもある。なぜならば、ほとんどの生徒たちの進路はインターハイ終了後から高校選手権の予選開始(10月)の間で決まるからだ。

 自分の進路を決めるための「最後にして最高のアピールの場」がインターハイなのだ。

プロ入り確実な選手も、さらに上を見てプレーする。

 今大会出場チームの中ですでにプロ内定を公式に発表している選手は4人。

 前橋育英のDF渡邊泰基(アルビレックス新潟内定)、市立船橋のDF杉山弾斗(ジェフユナイテッド千葉内定)、市立長野のMF新井光(湘南ベルマーレ内定)、四国学院大香川西のMF本田功輝(ジェフユナイテッド千葉内定、今大会は負傷により出場せず)だ。

 負傷している本田以外はプロ入りする実力を示すべく、高いモチベーションでこの大会に臨もうとしている。その一方で、冒頭で書いたように、この大会を人生をかけた勝負の大会として臨もうとしている選手達がまだ沢山いる。

 プロ入りが濃厚な選手にとっては自身の選択肢をより広げるための大会であり、まだオファーが来ていない選手にとってはプロ入りをたぐり寄せる大会となる。さらにプロ入りか大学進学かを迷っている選手にとっては、自身の実力を見極めるための大会でもある。

 すべてに共通するのが、自分の価値を改めて示す絶好の場であること。

 それぞれの立場に置かれた魅力ある選手たちを、ここで紹介して行きたい。

 まずプロ入り濃厚の選手を挙げるとするならば、青森山田のFW中村駿太とMF郷家友太、前橋育英のDF松田陸、東福岡のMF福田湧矢とDF阿部海大、神村学園のMF高橋大悟などだ。

 中村駿太は自身の可能性を広げるために、小学校時代から過ごした柏レイソルの下部組織をあえて離れ、高校最後の1年を青森山田で過ごすことに決めて移籍した。

「高校サッカーの方が(Jクラブユースより)いろんなチームのスカウトから見てもらえますし、評価されれば多くのチームから声を掛けてもらえる。神谷優太さん(湘南ベルマーレ)も青森山田に来てチャンスが広がったと言っていましたし、僕も努力してそのチャンスを広げたいんです」

すでにJクラブの練習に参加している有力選手達。

 中村はその言葉通り、今年3月から青森山田の一員としてプレーを始めると、高円宮杯プレミアリーグEASTで安定したパフォーマンスを披露してみせた。

 課題であった守備面でも、徹底的な意識付けと攻守の切り替えの速さを教え込まれ、攻守共に活躍できる選手へと成長を遂げた。

 インターハイ前にはモンテディオ山形の練習に参加。インターハイ後も練習参加するJクラブが決まっており、複数のチームが獲得に乗り出そうとしている。

「僕にとって最初で最後のインターハイ。楽しみたいし、しっかりとアピールしてから、どこに行くか決めたい」

 インターハイ前にヴィッセル神戸の練習に参加した同じく青森山田の郷家友太もまた、今大会できっちりと結果を出して確固たる評価を勝ち取ろうとしている。

 186cmの高さを持ちながら、足下の技術に秀でた郷家は、ボランチからトップ下までこなせる存在として、昨年から高評価を受けていた。

 郷家も中学時代にベガルタ仙台ジュニアユースからユース昇格を断って、「もっと違う環境で自分を成長させたかったし、プロの選択肢を広げたかった」と青森山田にやってきた選手だ。

 不退転の覚悟で青森にやってきたからこそ、プロになることは絶対条件だった。その目前まで辿り着いたからこそ、今大会はただのプレーで終わってはいけない。

「高円宮杯チャンピオンシップとか、選手権優勝はしたのですが、それはあくまでも昨年のチーム。自分が軸となっている今年、ちゃんとした結果を残さないといけないし、全国ではもっと成長した姿を見せないと」

プロ入りによって、ポジションが変わりそうな選手も。

 前橋育英のDF松田陸は、176cmと高さこそ無いが、天性のバネとバランス感覚に秀で、空中戦では無類の強さを見せる。

 チームではCBを任されているが、キックの種類も多彩で、高い守備力を持ちながらも、サイドからのクロスやアップダウン能力を持つ存在として、右サイドバックとしての才能も非凡なものを見せている。

 多くのJクラブは彼を右サイドバックの補強ポイントとしてリストアップしており、インターハイ前の時点であるJクラブからすでにオファーも届いている。

「じっくりと考えて決めたいと思っている。インターハイで活躍をすれば、さらに多くのチームに興味を持ってもらえるし、自分の力でちゃんとプロでやれることを証明したい。勝負の大会だと思っています」

東福岡の2人の逸材は、昌平へのリベンジを誓う。

 東福岡の阿部海太は、今回出場出来なかった鹿児島城西の生駒仁と並び「今大会の目玉となるCB」と評されている。

「磨けば光る素材。相当なポテンシャルを持っている」と、U-18日本代表の影山雅永監督も絶賛するように、ずば抜けた身体能力を持っているところが魅力だ。

 対人の強さはもちろん、裏への対応も的確で、CBとして非常に将来性のある選手の1人だ。

 同じく東福岡のMF福田湧は、動きながらのプレーが正確で、スピードに乗った仕掛けから、多彩なアイデアでパスを配る選手。すでに獲得に本腰を入れているクラブがあり、あとはいつ決断をするか。阿部と共に「その時」が注目されている。

 今大会の東福岡は「昨年は優勝候補の筆頭と言われていたのに、初戦で昌平に負けてしまった。インターハイは悔しい思い出しか無いので、最後のインターハイは絶対に勝ち上がりたい。特に青森山田や前橋育英がいる組み合わせなので、『俺たちはこれだけやれるんだぞ』と言うところを見せつけたい」とキャプテンでもある福田が語ったように、まずは昨年のリベンジに向けて、全神経を研ぎ澄ませている。

有力選手でも……高校生活初の全国大会というケースも。

 神村学園の高橋大悟は、1年生の頃からゲームの流れを変えられる選手として評価が高かった。

 足下の技術とアジリティーに優れ、ゴール前では多彩なオフザボールの動きでチャンスとなるスペースを作り出すMF。今年に入ってシュートスイングにさらに磨きがかかり、利き足の左足だけでなく、右足のシュート精度も上がったことで、プロのスカウトの評価もさらにうなぎ上りとなった。すでに熱心に獲得に動くクラブもあり、プロ入りは濃厚なのだが……実はこのインターハイは彼にとって高校生活初の全国大会でもある。

 これまで激戦区・鹿児島の壁を破れず、全国で陽の目を見ることが無かっただけに、ついに最高学年で掴みとった全国の舞台。

「自分のプレーは全国で通用すると思っているし、常にそこを意識してトレーニングして来た」

プロ入りするか? さもなければ大学進学か……。

 一方でプロか大学かの狭間に揺れ動いているのが、前橋育英のDF角田涼太朗、長崎総合科学大附属のFW安藤瑞季だ。

 角田涼太朗は、左利きのCBで高い打点のヘッドと対人の強さ、そして左足から繰り出される正確なフィードとビルドアップの上手さが光る頭脳派CB。学業の方も優秀で「自分の将来にとって、どれがベストの選択かしっかりと考えたい」と、まさに今、人生の岐路に立っている。

 高校ナンバーワンストライカーという評価も聞こえる安藤瑞季は、屈強なフィジカルと瞬発力に優れ、パワーでこじ開けるタイプのストライカーと思いきや、しっかりとボールと人の動きを見て、質の高いフリーランニングやワンタッチプレーを駆使してシンプルに裏に抜け出せる万能型ストライカーである。

「プロで勝負をしたいという気持ちはあります。ただ、大学進学という声も理解は出来ます。気持ち的には即プロですが、自分がどう評価されているか、しっかりと理解したいし、そのためにはもっと自分を鍛えて、インターハイで力を発揮しないといけない」

 プロになることはもちろんスポーツ選手なら誰しもが考えている夢である。

 しかし、その一方で現役を退いた後の人生もあるのだ……という現実を考えると、大学進学という選択も決して間違いではない、ということは言える。

 安藤はこの夏のインターハイできっちりと結果で出すことで、プロに行くための確固たる自信にしたいと考えているようだ。

まだ全国レベルで知られていない逸材がいる!

 そして、最後にこれまで述べてきた選手とは異なり、具体的にJクラブが動いている訳ではないが、プロ入りのラストチャンスとして闘志を燃やしている選手をひとり紹介したい。

 富山第一のFW坪井清志郎だ。

 今やユース年代の北信越エリアにおいては、誰も彼を止めることは出来ないと言って良い。プリンスリーグ北信越で11試合を消化し、全試合ゴールとなる17ゴールを叩き出している絶好調のストライカーだ。

「まだ僕は『北信越だけの選手』と思われている」

 ヘッド、ワンタッチシュート、そしてドリブルシュートとゴールアプローチが多彩で、左右両足から強烈かつ正確なシュートでゴールを射抜くことが出来る。

 昨年からチームの主軸ではあったが「上級生に遠慮をしてしまっている自分がいたし、裏に抜ける動きや、ゴールに向かって行く動きが足りなかった。3年生になって自分がチームを引っ張っていかないといけなくなり、とにかく点を獲らないといけないと思うようになって、自然と身体がゴールへと向くようになった」と、最高学年になってようやくゴール量産体勢に入った逸材だ。

 まだ具体的にはJクラブから声は掛かっていないという。

「プロに行きたいと思っています。まだ僕は『北信越だけの選手』と思われているかもしれない。だからこそ、インターハイで全国の強豪を相手に変わらぬ活躍をすることで、もしかすると目に留めてくれるかもしれない。何が何でも結果で示したい」

 プロ入り確定の選手から、まだ将来を決めかねている選手まで……インターハイを彩るであろう、主役候補達が抱く十人十色の想い。彼らの覚悟とモチベーションは、きっちりとプレーに反映されるのか。それとも不本意な結果に終わってしまうのか。

 たとえサッカー選手としての明暗が分かれてしまったとしても、この大会を通して、今後の人生の糧となる財産だけは、きっちりとその手に掴みとって欲しい。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando