7月29日から宮城県で開催される全国高等学校総合体育大会、通称“インターハイ”。全国の予選を勝ち抜いた55校が一発勝負のトーナメントに臨むこの大会。

 そのインターハイの組み合わせを紹介し、見所と注目ポイントを紹介していきたい。

 トーナメント表を見渡すと、「ある1カ所」に強豪がひしめき合っていることが分かる。

 昨年度の高円宮杯チャンピオンシップと高校選手権の2冠を達成した青森山田のいるブロックの一角だ。

 昨年度ベスト4の青森山田は1回戦がシードされているが、初戦で当たる相手が東福岡と明徳義塾(高知県)の勝者。

 明徳義塾も力のあるチームだが、やはりここは東福岡に目がいく。

毎年Jスカウトが注目する東福岡の多士済々。

 昨年のチームからMF藤川虎太朗(磐田)、高江麗央(G大阪)、DF小田逸稀(鹿島)と3人の有力選手が抜けプロ入りしたが、今年も2人のプロ入り濃厚な選手を抱えている。U-18日本代表CB阿部海大と、MF福田湧矢はJのスカウトたちが注目する存在で、そんな彼らを軸に周りを固める選手達も多士済々だ。

 まずは、正確なキックとボールコントロールがウリのアンカー・青木真生都、ドリブル突破からの強烈な左足のシュートが魅力のMF木橋朋暉、得点力の高い1トップの守田怜司と、3年生が屋台骨を支える。さらに、高円宮杯プレミアリーグ(以下プレミア)を戦い抜いてきた2年生の台頭も目立つ。182cmのストライカー・大森真吾や、サイドアタッカーの中村拓海、スピードで相手をぶち抜くMF石原利玖らの存在が、選手層の厚さを証明させている。

 東福岡は現在、ユース年代の最高峰リーグである高円宮杯プレミアリーグWESTに所属しており、高体連では最高順位となる3位の好位置につける(7月27日現在。以下同様)。青森山田もプレミアEASTに所属し、現在2位。

 順当に勝ち上がれば、東西プレミアリーグのトップ対決が早くもここで実現することになる。

郷家友太、中村駿太だけでなく才能が集まる青森山田。

 青森山田も東福岡同様、MF高橋壱晟(千葉)、GK廣末陸(FC東京)と2人の有力選手が卒業していったが、今年も2人のプロ入り濃厚選手がいる。

 昨年からのレギュラーであるMF郷家友太と、柏レイソルU-18から今年加入したFW中村駿太だ。

 攻撃の鍵を握る2人がこのチームの軸となるが、実は東福岡同様にその周りの選手の質が高い。

 来年はプロのスカウトが獲得に乗り出すであろう2年生MF壇崎竜孔、正確な左足のキックと確かな戦術眼を誇るアンカーの堀脩大は必見。さらに、鍵山慶司と佐藤拓海の両サイドバックは共にフィジカルに優れ、ヘディングの強さとスプリント力を持ち、両サイドから果敢な攻撃を繰り出してくる。

 プレミア・イーストでも強豪Jユースに対し、大崩れすること無く、チャンスをモノにして勝ち切るなど、チームとしての粘りや勝負強さを発揮しており、全体を見渡しても、今大会の優勝候補筆頭に挙げられるのは間違いない。

高校選手権決勝で0−5で敗北した前橋育英と因縁対決も。

 この2回戦最大の好カードとなる一戦を勝ち上がっても、まだ試練は続く。

 それは3回戦の相手が前橋育英(群馬)となる可能性が高いからだ。

 前橋育英と言えば、昨年度の高校選手権決勝で青森山田に0−5という屈辱的な敗戦を喫した記憶が新しい。その時のメンバーが大半残っており、すでにプロ入りが内定した選手がいる“全国屈指のタレント集団”となっている。

 アルビレックス新潟に入団が内定をした左サイドバックの渡邊泰基を筆頭に、やはりプロ入り濃厚のCB松田陸と、すでに“あるJクラブ”から正式オファーを受けているCB角田涼太朗、そして右サイドバックの後藤田亘輝の4バックは、すべて昨年からのレギュラーのまま。経験値が増した彼らが、安定した守備を誇るのが最大の強みとなっている。

 アタッカー陣を見ると、昨年からのメンバーであるボランチのレフティー・田部井涼、右サイドアタッカーの田部井悠、FW飯島陸が得点までの流れを作っているが、実は2年生選手たちも頭角を現してきている。

 185cmのFW榎本樹、爆発的なスピードを持つFW室井彗佑、得点感覚に秀でたFW高橋尚紀の3人がレギュラー争いを激化させており、さらにチーム力が増していく余地を残しているのだ。

 もしここで前橋育英vs.青森山田の一戦が実現したとしたら……前橋育英にとっては最大のリベンジのステージとなるわけだ。

「あの決勝の0−5は一生忘れないし、絶対にこのままでは終われない。リベンジすることが僕らの1つの目標なんですから」と、キャプテンの田部井涼が語るように、前橋育英の選手達にとって、この「3回戦」は特別な意味を持っている。

 だが、有力優勝候補といえる3チームの潰し合いを勝ち抜いたとしても、さらに試練が続くのだ。

米子北、富山第一、日章学園……曲者揃いの準々決勝。

 準々決勝で立ちはだかるであろうチームは、いずれも曲者揃い。

 米子北(鳥取)、富山第一、日章学園(宮崎)、京都橘……。

 富山第一は爆発的な攻撃力が特徴のチームだ。

 高円宮杯プリンスリーグ北信越では11試合を消化した時点で43得点と、圧倒的な得点力を見せ首位を快走している。

 エースストライカーの坪井清志郎は、驚異の全試合ゴール(計17得点)という成績で、北信越エリアでは誰も止められない状態にある。ツートップを組むFW大竹将吾も10ゴールと気を吐き、この強烈なツートップが全国の舞台で同じように大暴れできるかが注目されている。

 その富山第一の初戦は日章学園。

 坪井のような特出した選手こそいないが、かつて帝京高校のエースとして高校選手権制覇を経験している早稲田一男監督の下、毎年安定した組織力を誇るサッカーを披露している。

 この1回戦屈指の好カードの勝者と激突する米子北は、今年はプレミアWESTに所属し、ユース世代の第一線でチーム力を磨いている。

3回戦では、あの京都橘が再び立ちはだかる可能性が。

 まずは、ボランチの2年生・佐野海舟が豊富な運動量と展開力を駆使して、チームの高速カウンターの起点となる。そこから、葉間田塁と城市太志のツートップ、坂田二千翔と馬場琢未の両サイドの前線に配置されたドリブラー達が、一斉にゴールへと迫っていく迫力は間違いなく全国トップレベルだ。

 もし富山第一が順当に勝ち上がっていれば、3回戦では今度は京都橘が前に立ちはだかる。

 FW岩崎悠人(京都)という大エースこそ抜けたが、1年時からレギュラーを張る3年生の梅津凌岳と2年生の篠永雄大のダブルボランチコンビを軸に、ハイテンポな攻撃を仕掛ける。左サイドバックの河合航希も1年からのレギュラーで、正確なキックでクロスだけでなく、サイドチェンジを駆使して攻撃にアクセントを加える。今年は後ろの組み立ての力が高く、じっくりと相手をいなしながら崩せるチームに育っているのだ。

強豪校が順当に勝ち上がるか、伏兵が出るか?

 青森山田の属するブロックは、まさに強豪同士が潰し合う死のブロックだ。

 かなり偏ったトーナメントになってしまった印象は否めないが、他のゾーンでは、強豪校が盤石の勝ち上がりを見せるか、伏兵にチャンスが回ってくるのか……と、2つの見方で楽しめる。

 死のブロックと準決勝で当たるゾーンでは、昨年度準優勝の流通経済大柏(千葉)と、高校サッカー界きっての名将・小嶺忠敏監督が率いる長崎総合科学大附属の2チームが有力だ。

 流通経済大柏は今年からプリンスリーグ関東に降格してしまったが、全国トップレベルの選手層を誇っているのは間違いない。

 U-17日本代表CB関川郁万と安定感が増してきた3年生CB瀬戸山俊のコンビが、堅守を支え、1年時からレギュラーを張るMF菊地泰智が、多彩なアイデアで攻撃のタクトを握る。突破力のあるMF鬼京大翔、無尽蔵のスタミナを誇るボランチの宮本優太と、個性的な選手が揃い、昨年逃した全国制覇も十分視野に捉えた陣容になっている。

 一方の長崎総合科学大附属は、U-18日本代表で高校ナンバーワンストライカーの呼び声高いFW安藤瑞季を擁し、右サイドからゴールをこじ開けるFW荒木駿太、強烈なキック力と正確性を誇るDF嶋中春児など、前への推進力を持った選手が揃っている。

 何より、昨年から監督に復帰した小嶺監督が、勝者のメンタリティーを選手に植え付け、島原商、国見に続く、自身3校目の全国制覇に向けて本腰を入れているだけに、勢いを持って勝ち上がっていく可能性は十分にある。

死のブロックとは逆のブロックを見ると……。

 このブロックでは他にも立正大淞南(島根)、湘南に入団が内定しているMF新井光を擁する市立長野、尚志(福島)、徳島市立という面白いチームもおり、この2強を食い止めることができるか――ということがポイントとなっている。

 決勝まで当たることのない逆ブロックに目を向けると、昨年度覇者の市立船橋、静岡学園、昨年ベスト4の昌平(埼玉)が、ファイナリストの有力候補となっている。

「市船は負けてはいけないので」

 市立船橋はMF高宇洋(G大阪)、MF原輝綺(新潟)、DF杉岡大暉(湘南)の3人がチームから抜け、戦力ダウンは否めないが、千葉入団が内定したU-18日本代表のDF杉山弾斗や、昨年1年生ながら大ブレイクを見せたMF郡司篤也、プロ注目の190cmの長身GK長谷川凌と、タレントはいる。

 ポイントになるのが攻撃陣の出来だ。プレミアEASTでは得点力不足を露呈しており、現在は最下位と苦しんでいる。

 だが、FW福元友哉、MF有田朱里、そして2年生アタッカーの松尾勇佑と、攻撃センスを持った選手が揃っているのも確かで、彼ら急成長してゴールという結果をきっちりと残せるかどうかが勝負の分かれ目となる。

「インターハイで絶対に結果を出して、チームとして浮上できるようにしたい。市船は負けてはいけないので」と、キャプテンの杉山が語ったように、インターハイで攻守が噛み合って結果が出れば、プレミア・イースト後半戦でも低迷打破のきっかけとなるはずだ。それだけに、何が何でも結果を掴みたい大会として、かなりの気迫で臨んで来るのは間違いない。

静学が初のインターハイ制覇を達成できるかは……。

 静岡学園は注目の技巧派MF渡井理己を筆頭に、「過去のチームと見比べても、大島僚太(川崎)らがいた代と遜色がないくらい技術レベルが高い」(川口修監督)チームに仕上がっている。

 中でも2年生に楽しみな選手が多く、MF清水綾馬、神田凛星、松井温人、FW塩浜遼の4人は共に足下の技術が高く、相手の逆を突く動きが上手い注目の存在だ。この2年生が今大会でどこまでその才能を発揮できるかが、静学が初のインターハイ制覇を達成する鍵を握る。

 昌平は昨年のチームからMF松本泰志(広島)、MF針谷岳晃(磐田)という2枚看板が抜けたが、今年は彼らの陰に隠れていた選手達が主役として大きく躍動している。

 針谷から7番を引き継いだMF山下勇希は、軽やかな身のこなしと高い戦術眼、状況判断能力を駆使し、決定的なパスを通していく頼もしい司令塔だ。彼のハイセンスなパスからFW佐相壱明、トップ下・渋屋航平、MF古川勇輝らが、連動して崩していくサッカーは一見の価値有りだ。

7月29日から1週間の真夏のトーナメントが始まる!

 昌平は、昨年初出場ながら2回戦で東福岡を破り、一気にベスト4まで駆け上がって話題を振りまいた。

 2年連続2度目の出場となった今年は、その成績を上回ることができるだけの力を有していると言って良いだろう。

 この3強を注目のMF池平直樹を擁する岡山学芸館、プロ入り濃厚な技巧派MF高橋大悟を擁する神村学園(鹿児島)、プレミアWESTで戦う阪南大高(大阪)が追随する。

 逆ブロックと比べて、強豪同士の潰し合いが少ない分、もしかすると伏兵がベスト4以上に駆け上がって来るかもしれない。

 大会期間は7月29日から8月4日の1週間にわたる。

 年々暑さが増し、過酷さが増している真夏の1発勝負の大会。

 果たしてどのチームが優勝旗を手にするのか――高校生達の真夏の祭典インターハイ、ぜひ注目をしていただきたい。

文=安藤隆人

photograph by Takahito Ando