2020年の東京五輪の開催までほぼ3年となった7月14日。スポーツ新聞には五輪関連の記事が大きく載った。

「20年『東京五輪音頭』加山雄三&石川さゆりに決定」(日刊スポーツ・7月14日)

「東京都 24日から都庁内で定時にラジオ体操 小池都知事『期間中に五輪 体に刻んで』」(スポーツニッポン・7月14日)

 漂うお祭りムード。

 しかし、その3年後の東京五輪の開幕日となる7月24日のサンケイスポーツには驚いた。

「金なし場所なしホテルなし 開幕あと3年 東京五輪影響で高校総体 史上初中止危機」(7月24日)

 え、え、え! 高校総体(インターハイ)が五輪のためにピンチ?

 最大の理由は開催経費という。

自治体に五輪以外の予算がなく、インターハイが中止!?

 2020年のインターハイは東京五輪決定前から、北関東ブロック(群馬、茨城、栃木、埼玉の4県)での開催が決まっていた。だが五輪が決まったことで北関東4県には、五輪のキャンプ誘致を目指す市町村が多く「予算に余裕がない」と断られるケースが続出したのだ。

 そのため、

《全国高体連はひとまず、2020年大会を初の分散開催を決定。北関東4県で11競技を行うほか、愛媛、長崎、青森など6県で6競技開催にこぎ着けた。それでも全30競技のうち、陸上、体操、柔道など13競技の開催会場が未定だ。》(同・サンスポ)

 そして、最も驚いたのが次のくだり。

《 残る13競技開催に必要な額は約7億円。全国高体連は「インターハイ特別基金」を設立したが、23日までに集まったのは約1400万円だけ。大会関係者の間には、運動部に所属する全ての高校生から応援費を集める“超極論”も浮上している。》

 開催費を高校生に負担してもらう!?

 さっそく私はこの日「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)で、記事に登場している全国高体連・奈良隆専務理事に直接話を聞いてみた。分散開催を決めたが、まだ開催地がすべて決まっていない理由はやはり「お金」だという。

「インターハイ特別基金」でなんとか寄付を!

 インターハイの開催経費の7割から8割は開催地が負担するので、新たに手を挙げる地域がなかなか見つからない。'20年はこういった特殊な事情なので全国高体連としては「開催費用は心配ない」と約束したいけどまだ7億円足りない。なので記事にもあるように高校生に負担してもらう極論も出ているのだ。

 全国高体連に登録する高校生は約120万人。1人年約200円で、3年間で7億円が集められるという案。もちろんそんなことはしたくないので「インターハイ特別基金」を多くの人に知っていただきたい、という話だった。

「五輪まであと3年」と各紙お祭りムードが漂うなかで、サンスポのこの記事は考えさせられた。

《“未来の五輪選手”の晴れ舞台が、五輪のせいで奪われるという皮肉な事態だけは避けなければならない。》 

 という記事の締めもその通り。

 皆さんは知ってましたか、この話題。

 五輪に浮かれるのはまだ早い。

この3年間、清宮は「オヤジジャーナルの星」だった。

 7月30日、ツイッターの「モーメント(Today's Moments)」欄に、「『なぜ清宮選手ばかり取り上げるの?』マスコミへの疑問の声」というまとめがあった。

 この日、西東京大会の決勝で東海大菅生が甲子園出場を決めたが「清宮の高3の夏が終わった」という論調が多かったことに疑問を覚えた人が少なくなかったのだろう。

 では清宮がいかにこの3年間「オヤジジャーナルの星」だったか振り返ってみる。

 2年前、早実の清宮幸太郎選手は「スーパー1年生」としてスポーツ新聞の救世主となった。

《話題の怪物の姿を一目見ようと、この日は7000人の観客が詰めかけ、球場は超満員。球場脇の屋台では通常600本ほどのペットボトル飲料を倍の1200本用意した。》(東スポWeb・2015年7月21日)

過去のスター選手は甲子園で活躍してから注目された。

 父はラグビーのトップリーグ、ヤマハ発動機の清宮克幸監督。幸太郎少年もラグビーをやっていたが、2006年(7歳時)に早実の斎藤佑樹の試合を甲子園で観て野球を志した。2012年、リトルリーグ世界選手権で優勝。現地で「日本のベーブ・ルース」と報道される。2015年、早実に入学。

 この時点で、清宮がかつての高校野球のスターとまったく違うことに気づいた。

 荒木大輔、桑田&清原、松井秀喜、田中将大、斎藤佑樹……。彼らは甲子園で活躍してから注目された。

 しかし清宮の場合は「入学時から一挙手一投足が注目されていた」のである。甲子園に出てない段階からで、かなり特殊。

 中学卒業時の清宮をおさらいしてみる。

・お父さんも有名人。
・小・中学生時代に輝かしい実績がある。
・名門に入る。

 この3点、そっくり当てはまるケースが過去に一例だけある。誰か?

 大相撲の若貴である。

「清宮フィーバー」は「若貴フィーバー」である。

 若乃花&貴乃花も子どもの頃から注目されていて藤島部屋に入門するときから密着されていた。彼らの生活のすべてが可視化されていた。相撲部屋入門と高校入学の違いがあるとはいえ、中学卒業時の時点で若貴と清宮は同ケースだったのだ。

 入学(入門)の瞬間から追いかけていたスター候補の少年が、若貴のように想像以上の活躍をしだす。スポーツ新聞にとっての「清宮フィーバー」とは「若貴フィーバー」と同格なのだと考えられる。

 あれから2年。

 清宮は高校最多タイ記録の107本のホームランを打った。

「平常心で野球ができているのがすごい」

 清宮の記録で脚光を浴びたのが、今まで通算本塁打記録のトップだった山本大貴氏。「スポーツ報知」の高校野球アクセスランキングを見ると、山本氏の現在を取材した5月の記事があらためて読まれている(7月30日現在)。

「高校史上最多107発男は今、『みどりの窓口』に! JR西・山本大貴さん清宮に『はよ抜いて』」(2017年5月29日)

《高校卒業後は社会人野球のJR西日本で4年間プレーしたが、昨季限りで現役を引退。現在は社業に専念し、JR西条駅(広島)の駅員として奮闘中だ。》

 その山本氏は清宮について、

《「気持ちが強い。高校生なのに(神宮に)2万人も入って。異常じゃないですか。その中で、自分を見に来ていると分かっていて、平常心で野球ができているのがすごい。タイミングとか、軸がブレないとか、すごいと思います。僕だったら、足が震えていますよ」》

清宮はこれからもまだまだ1面を飾り続ける。

 ここでもポイントなのが「清宮の特殊性」だ。

 入学時から、つまり「第1号」を打つ前から、観客やマスコミに見つめられていた。そんな状況で高校最多のホームランを打った。言ってみれば“すべて”期待に包まれる中で打ったことになる。これはスポーツ新聞は夢中になる。

 清宮の夏は終わったが、この先の進路をめぐってまだまだ1面を飾るだろう。「オヤジジャーナルの星」について振り返ってみるとこういう予測になる。

 以上、7月のスポーツ新聞時評でした。

文=プチ鹿島

photograph by Hideki Sugiyama