このままアストロズでプレーすれば、出場機会は限られるが、間違いなくポストシーズンではプレー出来る。

 ワールドシリーズでプレーするのは、青木宣親の切なる願いでもある。ロイヤルズ時代の2014年、優勝まであと一歩と迫った経験があり、もう一度、あの舞台で活躍したいという思いは強い。

 しかし、今季のアストロズの外野の層は厚く、なかなか出られないという現実がある。

 プロである以上、試合に出たい。プレーしたい。試合に出て結果を残せれば、来季にもつながるから……。

 メジャーリーグのトレード・デッドラインである7月31日を前に、青木の関係者に話を聞くと、「青木のジレンマ」が見えてきた。

 悪くないのだが、周りのメンバーが図抜けているのだ。

 そして最終的に、アストロズは青木をトレードに出して、ブルージェイズから左腕の先発投手、フランシスコ・リリアーノを獲得した。

 青木にとってポストシーズン進出は遠のいてしまったが、実力を示す機会を与えられたと言っていい。

アストロズでは圧倒的に出場機会が少なかった。

 さあ、ここからが勝負だ。

 今季の青木は数字を見る限り、メジャーリーグでの過去5年と同じような成績を残している。ただし、圧倒的に出場機会が少なく、なかなか打席に立つチャンスが巡ってこない。それは、アストロズ外野陣の面々が際立っているからだ。7月30日までのスタッツを見てみよう。

スプリンガー 27歳 打率.310 出塁率.384 長打率.590 OPS.973
ゴンザレス 28歳  打率.314 出塁率.393 長打率.579 OPS.972
フィッシャー 23歳 打率.278 出塁率.366 長打率.500 OPS.866
マリスニック 26歳 打率.247 出塁率.326 長打率.494 OPS.820
レディック 30歳  打率.306 出塁率.348 長打率.494 OPS.842
青木宣親 35歳   打率.272 出塁率.323 長打率.371 OPS.694

OPS9割超が2人、8割超が3人という豪華陣容では……。

 現在、スプリンガーはケガで戦列を離れ、ゴンザレスはショートのコレアのケガによって内野に回っているが、それでもなお、レディック、マリスニックのOPSは.800を超え、コールアップされた若手のフィッシャーもサンプルは少ないものの、.800を超えている。また、指名打者で出場することが多いベルトランも、場合によっては外野を守れる。

 単年でこれだけの成績の選手を揃えるのは、並大抵のことではない。

 それに比べ、青木はこれまでに比べて出塁率は下がり気味ではあるが、7月は長打も出るようになり、数字が向上してきた。これまでのパターンから、8月、9月に打撃が上向くことが多く上積みが期待できるのだが、アストロズでは力を見せる機会は限られそうだった。

青木のトレード相手は先発ローテ4番手クラス。

 7月下旬、ダルビッシュをはじめとしてトレードの噂が乱れ飛ぶ中、アストロズもエースのダラス・カイクルが故障に苦しんでおり、ワールドシリーズ優勝のためには先発陣の補強が予想されていた。

 そうなると、外野陣から誰かがトレードされる可能性がある。ダルビッシュ級の「ブロックバスター・トレード」を実現させるとなると、フィッシャーやマイナーの有望株の名前が浮上してきそうだったが、同地区でこれほどのトレードが実現するとは考えにくいと私は読んだ。

 そうなると、他球団の中堅クラスの先発を物色することになる。となれば、出番の少ない青木がトレードに出される可能性はゼロではなかった。

 リリアーノは今季、18試合に先発して6勝5敗。ローテーションの中では、4番手クラスの扱いだ。しかし、ポストシーズンでの経験もあり、大きなトレードではないにせよ、今回の取引は「実のあるトレード」といえるだろう。

ブルージェイズ外野陣の数字を見てみると誰もが低迷。

 では、青木の出番はどうなるだろうか? ブルージェイズの外野陣の数字を見ると、たしかに物足りない数字が並んでいる。

ピアース  打率.264 出塁率.323 長打率.457 OPS.779
バティスタ 打率.215 出塁率.324 長打率.385 OPS.709
ピラー   打率.245 出塁率.295 長打率.403 OPS.698

 かつて、本塁打を量産していたバティスタの長打率が驚くほど低くなっていることに驚く。バティスタは36歳、ピークを過ぎてしまったのだろうか? しかも今季は1番を打つことが多くなっているのも気になる。

 ピアースも34歳と平均年齢が高く、青木の出番はたしかに増えそうで、1番として起用されることもありそうだ。

 たしかに、ワールドシリーズは逃げてしまったかもしれない。

 しかし、青木にとっては新しいチャンスが巡ってきたと思う。

文=生島淳

photograph by AFLO