8月7日に開幕する、第99回全国高校野球選手権大会。懸命にプレーする球児たちを、アルプススタンドから「音楽の力」で応援する吹奏楽部も、ともに闘う仲間だ。

 中学時代から吹奏楽に明け暮れ、熱血ブラバン少女だった筆者は、コンサートホールの演奏とはまた違う魅力のあるブラバン応援にハマり、今年も地方大会から気になる応援を観戦。今大会の聴きどころを、完全吹奏楽目線で紹介したいと思う。

 今年全国的に大流行しているのが、なんといっても『サンバ・デ・ジャネイロ』の“アゲアゲホイホイ”バージョンだ。

 同曲は以前から応援に使われているが、曲に合わせて野球部や一般生徒がメガホンを振りかざしながら「ハイヤハイヤハイ!」「エッサエッサー!」などの掛け声から始まり、「アゲアゲホイホイ!」と一斉にコールする。

 コール自体はシンプルでわかりやすく、一般客もその場ですぐに真似できるということもあり、アルプススタンドはまるでフェスか何かと見まごうほどの異様な高揚感と一体感に包まれる。

 兵庫県の報徳学園発祥のこの応援は、今大会の出場校では、北海、花咲徳栄、木更津総合、高岡商がすでに応援に取り入れているが、他にもまだまだ増えそうな勢いだ。

「彼らは青森県民の期待を背負ってやってきたのだ!」

 郷土色が感じられる応援では、青森山田の『ねぶた節』を推したい。

 全国区的に応援が画一化されつつある現在、「ラッセーラー! ラッセーラー!」という勇ましい掛け声を聴いていると、「彼らは青森県民の期待を背負って甲子園にやってきたのだ」と、改めて背筋が伸びる思いだ。ちなみに『ねぶた節』の原曲は、橋幸夫のシングル『北回帰線』のカップリング曲だ。

沖縄の応援をサポートし続ける市立尼崎高校吹奏楽部。

 郷土色という点では、沖縄代表校の『ハイサイおじさん』も外せない。

 沖縄代表校のアルプススタンドには、沖縄出身者も多く集う。彼らが吹く本場の指笛が聴こえてくると、「沖縄代表の試合」とわかるほど郷土色が豊かだ。

 ちなみに、興南など沖縄代表校の応援は、遠方につき経費の面などから吹奏楽部が来られないことも多いので、兵庫県の市立尼崎高校吹奏楽部が担当するのが恒例となっている。同吹奏楽部は、130回以上の甲子園“出場”を誇る。

内藤哲也、中邑真輔、武藤敬司らの曲が響きわたる!

 個性的な応援では、明桜の『MISSION SURVIVOR』がとてもカッコいい。

 甲子園でアイドルグループ「私立恵比寿中学」の曲を応援に取り入れている学校はほとんど見かけないが、彼らの応援は、メガホンやタオルを勢い良く回し、スピード感と一体感がたまらない。

 プロレス曲で攻める神戸国際大附の応援も、抜群の個性を誇る。

 プロレス好きの青木尚龍監督のリクエストで、ブルーザー・ブロディの『移民の歌』や、小橋建太、内藤哲也、オカダ・カズチカ、中邑真輔、武藤敬司など、徹底しているのが素晴らしいと思う。

 野球部、吹奏楽部ともに長きにわたる伝統を誇る天理のオリジナル曲『ファンファーレ』(他校では通称『天理ファンファーレ』と呼ばれることが多い)は、得点時やヒットが出た時に、非常に多くの学校が演奏するが、元祖の迫力はひと味もふた味も違う。

 1回で先頭打者が打席に立った際に、スローテンポの『ファンファーレ』を演奏するのが恒例だが、本家の重厚感と威圧感をぜひお聴き逃しなく。

「今日はまさかのノーワッショイかよ……」

 天理といえば『ワッショイ』も有名だが、「ランナーが二塁・三塁にたまった時に吹く」というのが、現在の基本ルール。

 ところが、当然ながらいつその場面が訪れるか予測もつかず、かつ、同曲をやらないと「今日はまさかのノーワッショイかよ……」などとアルプススタンドからため息がもれ、学校にも「なぜワッショイをやらなかったのか」と電話がかかってくるほど熱狂的なファンが多いため、「試合開始後、なるべく早いタイミングで、どこかで演奏しようと思っています」と、吹奏楽部指揮者の吉田秀高氏はいう。

 ちなみに、今年はアメリカ映画『大脱走』(1963年)のテーマ曲『大脱走マーチ』と、イギリス映画『素晴らしきヒコーキ野郎』(1965年)のテーマ曲も披露予定とのこと。

 流行りの『アゲアゲホイホイ』や『モンキーターン』などには目もくれず、独自のクラシカル路線を突き進むのは、さすが80年の歴史を誇る伝統の吹奏楽部。『素晴らしきヒコーキ野郎』は、かつて吹奏楽ファンに愛された伝説のラジオ番組、NHK-FM『ブラスのひびき』のテーマ曲でもあったので、あのメロディが流れると思わず涙してしまう人もいるかもしれない。

絶対に生で聞きたい“魔曲”『ジョックロック』。

 毎回新曲を投入することで話題の大阪桐蔭は、8月4日午後の応援練習で曲目が決定予定。

 吹奏楽部総監督の梅田隆司氏によると、現状の候補(8/2現在)は、『ラ・ラ・ランド』、『TT』(TWICE)、『アゲアゲホイホイ』が上がっている。

 さらに、多くの学校が演奏する人気応援曲といえば、必ず上がるのが『アフリカン・シンフォニー』。この曲は'80〜'90年代にかけて、吹奏楽の演奏会で大変人気のあったポップス曲だが、高校野球応援で同曲を広めた智辯和歌山の演奏はやはり必聴。“魔曲”『ジョックロック』とともに、ぜひアルプススタンドで生で聴きたい応援だ。

約10キロの巨大楽器を頭上でクルクル回す絶技も!

 視覚的に華やかで楽しいのは、なんといっても前橋育英の「スーザフォン回し」だろう。

 チューバ奏者が担当する、白くて大きな朝顔の花のような低音楽器を頭上でクルクル回すというもので、得点が入るたびに約10キロのスーザフォンを軽々と回す姿は必見。

 もともとはマーチングの技の一種で、マーチングの大会では、早稲田摂陵のパフォーマンスが有名だ。

 ブラバン応援も、見どころ・聴きどころ満載の今夏の甲子園。

 アルプススタンドからグラウンドの選手たちに心からのエールを送る吹奏楽部にも、ぜひご注目を!

文=梅津有希子

photograph by Yukiko Umetsu