村田諒太(帝拳)にリベンジのチャンスが巡ってきた。帝拳ジムは3日、都内で記者会見を開き、WBA世界ミドル級1位の村田が、王者アッサン・エンダム(フランス)と再戦すると発表した。

 物議を醸した判定決着から5カ月。リマッチの舞台は10月22日、両国国技館にセットされた。

 WBAから再戦指令が出ていたとはいえ、思いのほか早く、再戦の交渉はまとまったという印象だ。村田自身も2カ月半で再戦が決まった心境を次のように語った。

「試合が終わってからすごく早かった。この時の流れの速さで試合まで進んでしまうと進化することができないので、時間を有効に使いながら、自分自身が強くなれるように毎日過ごさなくちゃいけない」

 5月20日の試合は2−1でエンダムに軍配が上がったが、WBAのヒルベルト・メンドサ会長がすぐさま判定の誤りを認め、エンダムに勝利をつけたジャッジ2人にサスペンド処分を科すなど、事態は異例の展開を描いた。帝拳ジムの本田明彦会長もWBAへの不信感を隠さなかった。

プロとアマの違いは「ファンが望むかどうか」。

 こうした中、他団体の王者に挑戦する話も持ち上がったが、それぞれのスケジュールを考えると、すぐに他団体で挑戦というプランは現実的ではなかった。結果、残された選択肢がエンダムとの再戦だった。

 村田は「チャンスがあればどこでも良かった」とリマッチにこだわりを見せていなかったが、再戦そのものには十分に納得している。

「プロとアマの違いをよく聞かれますけど、それはファンの方々が望むかどうか。ファンの方々が注目していただけるのであれば、これがベストの形だと思う」

 古い表現を使えば「判定を盗まれた」という形で初の世界タイトルマッチに敗れた村田にとって、エンダムとの再戦は「完全決着」という明確なテーマがあり、ファンにとっても最もわかりやすい。WBAでの世界挑戦は、判定への不信感というしこりが残っているにせよ、それこそ「ベスト」だと言えるのではないだろうか。

対戦相手に対する「リスペクトしすぎ」が敗因か。

 少し早いかもしれないが、前回の試合を踏まえて、“エンダムvs.村田”IIを2人のコメントを軸に占ってみたい。

 5月の第1戦で村田はエンダムの一発をもらわないよう慎重に立ち上がり、4回に得意の右でダウンを奪った。その後もエンダムを何度かロープに吹っ飛ばすなど優位に試合を進めたかに見えた。しかし結果は前述のとおり、アウトボクシングをしながら、あまり効果的には見えないパンチを出し続けたエンダムが小差の判定勝利をものにした。

 村田は前回の“敗因”を「チャンスで詰め切れなかったのが一番の原因だと思う。彼の回復力が頭に入りすぎていて、そこで自分がスタミナを使い切ってしまって、そのあとの試合展開が悪くなってはいけないと考えすぎてしまった」と説明した。過去の世界タイトルマッチで6度もダウンしながら、12ラウンド戦い抜いたエンダムをリスペクトしすぎてしまったというわけだ。

エンダムは前回の苦戦を認めつつも、修正に自信。

 一方、フランスから今回のプロモーションのため1泊2日の強行日程で来日したエンダムは、第1戦を次のように振り返った。

「前回はハード・ファイトを予想していたが、それ以上に厳しい、力強いファイトになった。接戦の末に(物議を醸す)判定となったが、それは私にとっては当然のことだ。2人の素晴らしいボクサーが全力を出して戦えば接戦になるし、その結果、論争も巻き起こったのだろう」

 さらに、具体的な内容こそ明かさなかったものの「私は自分が見つけたミスを修正する。10月は5月に見られなかった私を見ることができるだろう。前回と同じ展開には絶対にならない」と言い切った。

 とはいえ、10月の第2戦も村田が前に出て圧力をかけ、エンダムがアウトボクシングで対抗する、という構図に変わりはないはずだ。その上で前回よりレベルアップできる可能性があるのは、より経験が少なく、前回の試合で敗れながらも確かな自信を得た村田であろう。

村田有利は間違いないが、崖っぷちなのも事実。

「デビュー戦は僕にとって冒険マッチだったかもしれないけど、それ以外の試合は実力さえ出せば勝てる相手だったと思う。今回彼のような世界トップレベルの選手と初めて試合をして、通用することが分かった。エンダムが僕を今の位置まで引き上げてくれた。試合前はある意味、自分自身に対して半信半疑だったけど、いまは自分を信じることができる。それが大きいかなと思います」

 自信を得たことで、リスクを背負ってエンダムを倒しにいくことができる。5月にダウンを奪っている事実も、プラスに作用するだろう。エンダムの学習能力を侮ることはできないが、やはり第2戦は「村田有利」との予想に傾くのではないだろうか。

 村田は不運な形とはいえ、プロ初黒星を喫した上での2度目の世界挑戦を「前回よりも崖っぷち」と表現した。たとえ戦力比較で優位に立ったとしても、エンダムに明確に勝利することは、簡単なミッションではありえない。

「前回の試合がいまのぼくを作ってくれた。彼を乗り越えてその先を見据えたい」

 村田が未来への扉をこじ開けるのか。はたまたエンダムが大きな壁となって立ちはだかるのか。第1戦の内容が内容だっただけに、第2戦を両雄がどう戦うのか、興味が尽きない。

文=渋谷淳

photograph by Hiroaki Yamaguchi