11月23日から、世界各地で2019年FIBAワールドカップ出場権をかけた各大陸予選が始まる。日本代表も、11月24日に東京の駒沢体育館でフィリピン代表と対戦し、11月27日にオーストラリアのアデレードでオーストラリア代表と対戦する。

 FIBAは今回から大陸予選のシステムを大きく変更した。これまで大陸ごとに1カ所に集まって集中開催していたのをやめ、1年余をかけてホーム&アウェイの試合を繰り返し、出場権を獲得していく方式を採用したのだ。FIFAワールドカップの予選方式をまねたものだ。

 問題は予選開催の時期だ。あらかじめ定められた6回の開催期間のうち、4回は各国リーグの開催期間中にあたる。

 サッカー界ではFIFAが定めた国際Aマッチデー制度の期間にはトップリーグが開催されない決まりになっている。FIBAも同じような仕組みを作ろうと、2015年に予選日程を発表し、各国リーグに試合日程を配慮するように求めたのだが、世界のトッププロリーグ2つがそれに従わなかった。

 NBAとユーロリーグだ。

 FIBAとしても、巨大組織で、レギュラーシーズンだけで82試合を戦う過密スケジュールのNBAが従わないのは想定内だったが、ヨーロッパの強豪クラブが参加するユーロリーグの協力も得られないのは想定外だった。

 両者の間では今年9月まで交渉が続けられたが、結局、完全な調整はつかないまま時間切れとなった。

日本代表の予選に、八村と渡邊が出られない!

 日本代表も、この新システムにまったく影響を受けないわけではない。

 アメリカの大学に留学中の八村塁(ゴンザガ大)、渡邊雄太(ジョージワシントン大)らがシーズン中の11月と2月の予選には出場できないのだ。

 ヨーロッパの強豪国にとっては、この問題はさらに深刻だ。

 NBAやユーロリーグのチームに所属する各国選手は、それぞれの国のトップ選手たちばかりで、その数が国代表の強さを表すといっても過言ではない。それなのに、そのトップ選手たちを抜きに予選の試合が行われるのだから、予選での波乱も予想されるのだ。

ヨーロッパの強豪国に、特に大きな影響が出る!?

 NBAに所属するヨーロッパ各国代表選手たちに、FIBAの新予選システムについて、意見を聞いてみたところ、否定的な意見が噴出した。

 彼らにとっては、これまで誇りをもって国代表として戦ってきたのに、突然蚊帳の外に置かれてしまったわけだから当然といえば当然だ。

「選手たちはとてもやりにくいポジションに置かれている」と言うのは、スペイン代表のマルク・ガソル(メンフィス・グリズリーズ)だ。

 スペイン代表は、近年、アメリカと並ぶ世界の強豪国として国際大会で成績を残しており、多くのNBA選手やユーロリーグ選手を輩出しているが、その分、今回の予選は、代表経験が浅い選手たちに頼らなくてはいけないというジレンマを抱えている。

 ガソルは言う。

「ユーロリーグやNBAとFIBAのリーダーたちは、バスケットボールやファンにマイナスの影響を及ぼすようなことをするべきではないということを理解してほしい。もっとシンプルにする必要がある。

 バスケットボールは世界中に普及しているスポーツだけれど、アメリカ国外ではサッカーと競うことができていない。だからこそ、ファンにとって試合を追いかけやすく、シンプルにする必要がある。バスケットボール界のリーダーたちは一堂に集まり、みんなが従うことができるような解決策を見つけるべきだ。

 すばらしいスポーツだし、子供たちにもお手本となれる存在だ。それなのに、3つの組織(FIBA、ユーロリーグ、NBA)が協力してやっていけないというのはどういうことなのか」

サッカーのFIFAとバスケットのFIBAの違い。

 クロアチア代表のダリオ・サリッチ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)も言う。

「新システムは、誰にとってもいいシステムではない。NBA選手や、ユーロリーグ選手がいる国にとっては特にそうだ。

 サッカーではうまくいっていることだけれど、サッカーではFIFAがすべてをコントロールしているのに対して、バスケットボールの場合は(FIBAは)NBAをコントロールすることはできないし、NBAにシーズン中に中断させることもできない。FIBAはもう少し別の方法を見つけるべきだ。代表でプレーするNBA選手にとってはすごく難しいことだ」

ベストメンバーでないと予選突破が困難な国も。

 スロベニア代表として9月のユーロバスケットで優勝し、大会MVPにも選ばれたゴーラン・ドラギッチ(マイアミ・ヒート)は、彼自身大会後に代表活動から引退しているが、それでも、FIBAの新システムについてはきっぱりと反対の意見を表明する。

「(シーズン中に行われる)予選の試合にはベストプレイヤーたちが出場できない。そういった選手が多くいる国は、彼らがプレーできないから予選を勝ち抜くのが難しくなる。国によってそれぞれ状況は違うけれど、僕は新しい方式はあまり好きではない。今まで通りに夏に大会が行われるほうがいい」

シーズン中に代表チームが母国で戦えるメリット。

 もちろん、新システムにはメリットもある。

 FIBAの狙いとしては、バスケットボールのシーズン中に、それぞれの代表チームが母国のファンの前で本気の試合を戦う機会を増やすことで、世界中のバスケットボール・ファンを増やそうというものだ。

 ガソルも言ったように、バスケットボールの人気は多くの国で、まだサッカー人気に後れを取っている。その差を埋めるためにFIBAが打ち出した改革なのだ。ただ、もし、この新システムによって強豪国がFIBAワールドカップ出場を逃すようなことがあれば、そのあり方を問う声も当然出てくるだろう。

 アメリカ代表もシーズン中の予選はほぼマイナーリーグのGリーグに所属する選手だけでロスター構成されており、ヘッドコーチも、グレッグ・ポポビッチ(サンアントニオ・スパーズHC)に代わり、元NBAヘッドコーチで現在はテレビ解説者のジェフ・バンガンディが務める。

 それでも、アメリカはコーチや選手層の厚さでは群を抜いており、おそらく問題なく勝ち抜くことができるだろう。

 最近、力をつけてきているカナダ代表も、予選でヘッドコーチ、選手ともに別の組み合わせが必要な国だ。

 本来のヘッドコーチ、ジェイ・トリアノは現在フェニックス・サンズの暫定ヘッドコーチを務めており、NBAシーズン中は若手年代の代表ヘッドコーチ、ロイ・ラナがA代表のヘッドコーチを務める。

ベストメンバーではない場合のプラスの要素は?

 トリアノは、各国のトッププレイヤーが代表として戦えないマイナス点を指摘した上で、新システムにはメリットもあると付け加えた。そう考えることで、カナダとしては前向きにこの問題に対応しているというのだ。

「マイナス面はNBAやユーロリーグに関わっている人全員にとって難しい状況になっていること。一番いい選手が国の代表として戦えないのだから。

 プラス面は、過去には代表として戦う機会がなかった多くの選手たちが国を代表することができるようになったこと。私たち(カナダ代表)は、そうやって両面から見て考えている。ベストプレイヤーが出場できない時もあるかもしれないが、これまで以上に多くの人がカナダの代表としてプレーすることになった。

 意味のある試合を国内でプレーすることができるのも、新システムのすばらしい部分だ。カナダの人たちも、国のベストプレイヤーたちがプレーするのを、テレビや伝え聞いた話ではなく、生で見ることができるわけだからね」

 代表として国のために戦う機会を奪われた選手の反対意見も当然だが、その一方で、トリアノのような広い視点での考え方も一理ある。

 何にしても反対意見も多い中で走り出したFIBAの新予選システム。この先しばらくは様々な論議を呼びそうだが、成否や真価を判断するには時間が必要なのかもしれない。

文=宮地陽子

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