本拠地とDHと先発ローテーション。

 振り返ってみれば、納得のいく条件はそろっていた。結果論だが、大谷翔平は理に適ったチーム選びをしたといえる。

 エンジェルスは西海岸の球団だ。アナハイムは温暖で(シアトルよりも天気がよい)、ドジャースの陰に隠れているため、市場規模はそう大きくない。日本人選手はこのところ在籍していなかった。ア・リーグの球団なのでDH制を採用している(パドレスでは外野で出ざるを得ない)。先発ローテーションはかなり弱体で、大谷はすぐにでもエースになれる可能性がある。まさに働きやすいチームだ。

 このあたりを蒸し返しても仕方がないので、今後の展望を探ってみよう。

トラウトがいるのに8年間プレーオフで勝利なし。

 エンジェルスと聞いて、だれもが期待するのは球界の黄金児マイク・トラウトとのパワー・デュオだ。

 2012年に新人王を受けたトラウトは、過去7年間で2度のMVPに輝き('14年と'16年)、打点王と盗塁王も1度ずつ獲得している。7年間の通算安打数は1040本。201本塁打、165盗塁という数字も眼を惹く。いわば万能型のスーパースターだ。

 エンジェルスは、この大器を擁しながら、過去8年間、プレーオフで1勝もしていない。それどころか、この3年間は連続でポストシーズン進出を逃している。トラウトとの契約はあと3年残っているが、それまでにどうにかしないと、文字どおり「宝の持ち腐れ」になる。その意味でも、大谷の加入は大きい。

 トラウト、ジャスティン・アプトン、アルバート・プーホルス、アンドレルトン・シモンズ、コール・カルフーンと並んだ打線は悪くない。ここに大谷翔平とザック・コザートが加わる。もしかするともうひとり、ローガン・モリソンかジョナサン・ルクロイが入ってくる可能性もある。

大王プーホルスの定位置、一塁での起用もある?

 打者・大谷は基本的に週2日か3日、DHでの起用になるはずだ。先発ローテーションに入れば、登板前2日を含めて、週に3日は投手の仕事に注力しなければならない。となると、DH起用は最大で週4日だが、最初は慣らし運転の意味も込めて、週2日ぐらいではないか。慣れてくれば、大谷先発の日はDH制を取らず、彼をそのまま打席に立たせるという選択もあるだろう。

 大王プーホルスの一塁守備は、空白があるだけにやや不安だが、大谷を生かすためにはやむをえぬ処遇だ。ただ、プーホルスの年齢を考えると、右翼大谷、もしくは一塁大谷という実験的な起用も、ひょっとしたら見られるかもしれない。

弱すぎる投手陣、大谷はまちがいなくローテの一角。

 では、投手・大谷はどうだろうか。

 先にも述べたが、エンジェルスの先発陣は弱い。2017年、投球回数最多はリッキー・ノラスコの181イニングスだった。ただし、成績は6勝15敗、防御率4.92と寂しい。100イニングス以上投げた他の3人も、ぱっとしない。

 JC・ラミレスが11勝10敗、4.15、ジェシー・チャベスが7勝11敗、5.35、パーカー・ブリッドウェルが10勝3敗、3.64。このうち、ノラスコとチャベスが、FAでおそらくチームを離れる。本来主戦格だったギャレット・リチャーズ('14年には13勝4敗)やマット・シューメイカー('14年には16勝4敗)は故障が響いて、満足な数字を残していない。

 この陣容ならば、大谷がエースになる可能性はかなり高い。リチャーズが復活すれば話は別だが、それでも大谷はまちがいなくローテーションの一角を占める。問題は、エンジェルスが先発5人制を取るか、6人制を取るかだ。大谷にしてみれば、中4日は窮屈だろう。6人制を取って、中5日でまわしてもらえれば、肩はずいぶん休まるし、打者としてのびのびプレーすることもできる。

ヤンキースを振った大谷がどんな投球を見せるのか。

 そのためにも、エンジェルスはブルペンを強化する必要がある。なにしろ抑えがいない。バド・ノリスがFAで抜けると、ブレイク・パーカーやキャム・ベドロージャンをクローザーに持ってくるしかない。これではあまりにも頼りない。グレッグ・ホランドやウェイド・デイヴィスといった大物FA選手を、なんとか獲得したいところだろう。

 というわけで、大谷翔平のエンジェルス入団は大ニュースだが、彼ひとりでチームを救うことはむずかしい。ファームの弱い球団だけに、今季の成否は冬のトレード市場が鍵を握るだろう。

 大谷に関しては、4月27日から29日にかけてアナハイムで行われるエンジェルス対ヤンキース戦が大きな話題を呼ぶはずだ。ヤンキースを振った大谷が、ジャンカルロ・スタントンやアーロン・ジャッジを相手にどんなピッチングを見せるか。鳴り物入りの一戦になることはまちがいない。

文=芝山幹郎

photograph by AFLO