韓国に1−4で惨敗し、E-1サッカー選手権優勝を逃した日本。初招集組を始め、多くの選手が代表デビューを果たす中、フィールドプレイヤーでただひとり最後まで出番がなかった選手がいた。

 ガンバ大阪の初瀬亮である。

 初瀬は、今年U-20W杯に出場した東京五輪世代で、この世代初のA代表招集選手となった。ガンバでは今季、序盤戦でレギュラーに抜擢されたものの、中盤戦にかけて出番を減らした。それでも第30節・浦和戦から再度定位置を確保。そのまま最終戦までスタメンでプレーした。積極的なオーバーラップと精度が高いキックがハリルホジッチ監督から評価され、20歳での初招集となった。

「ここが自分の代表のスタートになる。なんとか爪痕を残したい」

 初瀬は、そう意気込み、代表での初キャップを刻むことに胸を躍らせた。

 しかし、初戦の北朝鮮戦、右サイドバックは室屋成が入り、つづく中国戦では植田直通が入った。最終戦の韓国戦も植田がスタメンで出場した。この時、フィールドプレイヤーで出場ゼロの選手は初瀬と三竿健斗だけになっていた。

 試合は先制したものの逆転され、前半だけで1−3と2点をリードされた。

「後半は点を取るために前の選手を入れていく。これじゃ(自分の出番は)厳しいなって思っていました」

「自分が出たら特徴を活かせる場面があった」

 だが、最初に呼ばれたのは三竿だった。

 なぜボランチなのか。その意図が分からなかったが、交代枠は残り2枚しかない。点差と時間を考えると、どうポジティブに考えてもサイドバックの出番はないに等しかった。

 最後の交代選手である阿部浩之が呼ばれると、初瀬の出場機会は完全に失われた。国内組での最終試験とも言われた大会で、出場時間ゼロに終わった事実を初瀬はベンチで噛みしめていた。

「もう悔しいしかなかったですね。韓国戦、自分が出たら特徴を活かせる場面があったと思いますけど、それでも使ってもらえなかったということは、まだまだ自分に足りないもんがあるからやと思います」 

1対1の守備でまだ激しくアプローチできていない。

 初瀬は、その足りないものについて「守備ですね」と認識していた。

 北朝鮮戦に起用された室屋は攻守にバランスが取れた選手だ。その後の2試合で起用された植田は本来はセンターバックだが対人、対空能力が高く、相手のサイド攻撃に蓋をするにはうってつけの選手だ。

 その一方、初瀬はクラブでシーズン前から長谷川健太監督から守備の弱さを指摘され、修正を求められてきた。代表を率いるハリルホジッチ監督はデュエルを求め、堅守速攻に軸足を置いている。それもあって、代表でのトレーニングでも守備について指摘されることが多かった。

「クラブでもそうですけど、自分は守備がウィークやと思います。競り合いで負けたり、1対1の場面で激しくアプローチできていない。自分には速さがないんでガツガツいくしかないんですけど、そこがまだまだ足りていないと思います」

 課題が明確になった一方で、やれることも見えたという。

「攻撃の部分、キック精度とかは負けてないし、守備がレベルアップできれば対等にやれるなって思いましたね。でもA代表って、どんなところなのか、来て肌で感じることができたので、すごくタメになった。まだ自分は若いですし、東京五輪世代で一番最初に呼んでもらったことも自信になりました。今、思うとシーズン中に呼んでもらいたかったですね。シーズン中にこれだけ刺激を受けたら今年はもっと成長できたと思うんで(笑)」

アップ、ダッシュ、食事、どこも手を抜かない。

 初瀬が初代表で吸収したものは、ピッチのことだけではない。ピッチ外、練習での意識など、A代表の選手から学ぶことが非常に多かった。

「たとえばアップで、最後のダッシュとか1つも手を抜かないですし、パス交換も息が上がるぐらい早く動き、素早く回していた。そういう練習はクラブでもやっているし、自分でもやっているつもりだったけど、全然違った。ゲームでバチバチになるのは当然ですけど、アップや練習から激しくやる。“これがA代表なんや”っていうのが分かったし、今までの練習じゃあかんな、そういう意識に変えていかないといけないとほんまに思いました。

 あと、食事もみんな量が多いですし、栄養を考えて摂っていますね。そういう部分も含めていろんなことが吸収できた。試合に出れたらもっとよかったけど、マイナスなことはひとつもなかった」

「ひとりずつ上の人を食っていくしかない」

 代表の右サイドバック争いではレギュラーの酒井宏樹、さらに酒井高徳もいる。前述した室屋、植田を含めた競争を戦って勝ち抜いていかなければならない。

「みんな、すごい選手ですけど、何が起こるか分からないですからね。サイドバックが故障するとか、そういうアクシデントがないわけじゃない。自分は、ここに呼ばれている以上は目指す先はロシアW杯だと思っているし、来年もチャンスがあると思うんです。ガンバは監督が代わりますけど、キャンプからアピールして開幕から全力でプレーしていきたい。ここで使わなかったことを後悔させるぐらいの活躍したいですね。とにかくここからひとりずつ上の人を食っていくしかない。今、メラメラしているんで、やってやりますよ」

 初瀬は、そういって大胆不敵な笑みを浮かべた。

 代表招集されたり、W杯メンバーに選ばれても出場機会を得られなかった選手はこれまでも数多い。例えばガンバ勢では、遠藤保仁が2006年ドイツ大会でフィールドプレイヤーとして唯一、出場機会を得られなかった。遠藤は、その悔しさをバネに2010年南アフリカ大会でプレーし、メインキャストになった。

 偉大な先輩が歩んできた道程を初瀬も歩めるのか。

 出場時間ゼロは、そのスタートになる。

文=佐藤俊

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