GI馬6頭が顔を揃えた「春のグランプリ」第60回宝塚記念(6月23日、阪神芝内回り2200m、3歳以上GI)。優勝したのは、ダミアン・レーンが騎乗した3番人気のリスグラシュー(牝5歳、父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)だった。

 昨年のエリザベス女王杯につづくGI2勝目。牝馬による宝塚記念優勝は、1966年エイトクラウン、2005年スイープトウショウ、'16年マリアライトに次ぐ史上4頭目の快挙だった。

 ほかの馬には失礼な表現になるが、GIでは珍しいほどの「圧勝」というより「楽勝」だった。

 紅一点のリスグラシューは、大外12番枠から好スタートを切り、抑え切れないほどの手応えで正面スタンド前を進んだ。掛かり気味にも見える走りで先行馬群に取り付き、ハナを切るキセキに外から並びかけるように1コーナーへと入って行った。

 そのままキセキを1馬身半ほど前に見る2番手の外目で折り合いをつけた。

 4コーナーを回りながらキセキに並びかけて直線へ。ラスト200m地点でレーンの右ステッキが入るとさらに加速し、2着のキセキを3馬身突き放した。

キセキのレース運びは正しかったが。

 勝ちタイムは2分10秒8。阪神芝2200mで行われた宝塚記念では史上2番目に速いタイムだった。

 しかし、馬場コンディションがよかったからこの時計が出たのかというと、そうではない。

 アルアイン(4着)の北村友一は「少し緩い馬場がこたえた」、レイデオロ(5着)のクリストフ・ルメールは「緩い馬場はよくなかった」、ノーブルマーズ(6着)の高倉稜が「馬場に脚をとられた」とコメントしている。良発表ではあったが、毎年この時期の阪神芝コースがそうであるように、騎手の感覚としては道悪に近い状態だった。

 そうした馬場状態のせいかどうかわからないが、キセキもスタート直後はなかなか進んで行かず、鞍上の川田将雅が追っつけてようやくハナに立った感じだった。

 そのキセキをリスグラシューは楽に追いかけ、2番手から上がり3ハロンをメンバー最速、それも2番目のスワーヴリチャード(3着)よりコンマ5秒も早い35秒2でまとめてしまったのだから、後ろの馬にはどうすることもできない。

 逃げてレースをつくった キセキも、ラスト3ハロンをメンバー中3番目に速い35秒8で上がるペースに持ち込んだのだから、川田の戦術は間違っていなかった。その証拠に、3着は2馬身ちぎれ、4着もさらに2馬身離れていた。

 要は、リスグラシューが強すぎたのだ。

レーン「2番手で大丈夫だと判断した」

 管理する矢作芳人調教師の予想を上回るパフォーマンスだった。

「びっくりするぐらい強かった。ゲートをしっかり出してほしいと伝えていましたが、まさか2番手につけるとは思っていませんでした。騎手の好判断です。香港遠征を2度経験して、馬が非常に強くなっていますね」

 今回の短期免許最終日にJRA・GI2勝目を挙げたレーンはこう振り返る。

「仕上がりは完璧でした。いいスタートを切って、先頭に行くか悩みましたが、流れや展開から、ここ(2番手)で大丈夫だと判断しました。直線では、後方に強い馬がいても、非常に手応えがよかったので、自信がありました」

 レーンは、4月27日の来日初騎乗から9週間で123戦し37勝。勝率30.1%という驚異的な数字を残した。今月26日からは地方の南関東で1カ月騎乗する。

秋は海外、ブリーダーズカップか。

 リスグラシューは、これで通算成績を20戦5勝、2着8回、3着4回とした。GIで2着5回のシルバーコレクターでもあるのだが、勝つときは、昨年のエリザベス女王杯もそうだったように、1頭だけ異次元の走りをする。

 今後は、レーンの母国オーストラリアのGIコックスプレート(10月26日)、アメリカのブリーダーズカップフィリー&メアターフ、ブリーダーズカップターフ(11月2日)などを視野に入れている。矢作師はこう話す。

「ブリーダーズカップなら牝馬同士のフィリー&メアターフだろうと思っていましたが、この強さならターフでもいいですね。オーナーサイドと相談になりますが、いずれにせよ海外に挑戦することになると思います」

 2着のキセキを管理する角居勝彦調教師も、フランスの凱旋門賞(10月6日)参戦の可能性を示唆している。

 夢はこれからもつづく。

文=島田明宏

photograph by Yuji Takahashi