「V率0%」

 この文字が広島の紙面に載るのは何度目だろう。セ・リーグ3連覇中の広島は交流戦、4勝12敗1分(以下のデータ、すべて6月23日現在)で、すでに5年ぶりの最下位が決定している。交流戦の最下位球団が過去にリーグ優勝した例はないという。

 交流戦、広島に快進撃を見せた5月の面影はなかった。月間20勝の反動はあるだろう。チーム全体の調子が下降線をたどる中、交流戦に入ったタイミングが悪かった。投打の歯車、ベンチと選手の歯車がかみ合わない試合が目立った。

 1つの要因は、“柱”となるべき選手の不調不振にある。広島は今季、新井貴浩(引退)、丸佳浩(FAで巨人へ移籍)という大きな柱を失った。

 それだけに今年は新たな柱が育つことが求められた。巨人から加入した長野久義は多くのスタメン機会を与えられず、困ったときの切り札的存在。首脳陣が柱として期待した選手は開幕から不振続きで、交流戦で相次いで離脱していった誤算もあった。

“柱”の野村、中崎は再調整。

 先発の柱の1人、野村祐輔が6月11日日本ハム戦でプロ最短の1回5失点で降板。二軍降格となった。開幕から球威が上がらず、苦しんでいた。4回途中6失点した5月28日ヤクルト戦の翌日には、試合で63球投げたにも関わらず、試合前練習で神宮のブルペンで投球練習。不振脱却のヒントをつかむため藁をもつかむ思いだったのかもしれないが「登板翌日に傾斜を使って投げると今後体に影響が出る。気持ちは分かるが、心配だ」とチーム内から声が挙がっていた。

 交流戦の初戦西武戦で6回4失点。続く日本ハム戦でも立て直すことができず、チームを離れ再調整することになった。先発の柱にならなければいけないという責任感が空回りしたのかもしれない。

 3年連続胴上げ投手の中崎翔太も勤続疲労が影響してか、開幕から本来の球のキレ、制球力ではなかった。その中でも経験と技術で何とか粘ってはいたが、6月2日には抑えから配置転換され、交流戦ではパ・リーグの強打者につかまり、5試合で防御率10.80。再調整することとなった。

切り込み隊長も不振を抜け出せず……。

 攻撃面で3連覇を支えた切り込み隊長の田中広輔も開幕から打率1割台が続き、6月20日ロッテ戦で連続フルイニング出場が635試合で途切れた。翌21日には連続試合出場にも636試合で終止符を打った。

 積み重ねた636試合という輝かしい記録が、気づかぬうちに体に歪みをうんでいたのかもしれない。試合数だけでなく、遊撃手というポジションに加え、昨年まで3年連続でリーグ最多打席に立った負担は誰にも分からない。

 若き4番鈴木誠也、開幕から安定する菊池涼介、攻守の要・會澤翼、周囲からエースと認められた大瀬良大地だけでは支えられなかった。5月のような勢いを失えば、地力が問われる。脇を固める柱を失った広島が安定感を欠いたのは必然だったのかもしれない。

最後まで連動性がなかった広島打線。

 広島は、パ・リーグの「パワー野球」に屈したのか。

 今季の交流戦も6月23日時点でパ・リーグが57勝45敗4分と勝ち越している。指名打者のある打線を相手にするパ投手には球威だけでなく、データに裏付けされた捕手の配球にも思い切って投げ切れる精神力と技術を持ち合わせている選手が多い印象を受けた。

 選手からはこんな声も聞かれた。

「セ・リーグとパ・リーグでは配球が違う。変化球で来るだろうというところでも真っすぐで来ることがある」

 想定以上の球威、想定以上に力で押してくるスタイルが攻略を難しくした面もあったのかもしれない。

 広島は12球団ワーストのチーム打率2割1分9厘に終わったが、チーム打率ワースト2位は交流戦優勝のソフトバンク(2割3分3厘)だった。12球団最多の32本塁打(広島は12本塁打で9位)が攻撃の突破口となり、決定打にもなった点はあるが、それはリーグの戦い方と同じ。広島も交流戦前までは本塁打数はリーグ4位。もともと本塁打で打ち勝ってきたチームではない。

 昨季から選手の入れ替えもあり、昨季以上に小技や足を使って繋ぐ「スモール野球」の色が濃くなった打線で、交流戦前までにリーグ首位に立っていた。ただ、交流戦に入ると攻守にノーガードの打ち合いを挑んだようにもみえた。

 交流戦前までリーグ最多の盗塁も、交流戦では計16度狙って失敗5度。成功率6割8分8厘だった。突破口を開こうとした策も、失敗に終われば勢いは消沈する。選手個々の能力だけに頼らず、打線としての連動性が広島の強み。交流戦では、その歯車がかみ合っていなかった。

「V率0%」を覆せるか。

 今季、広島が「V率0%」を突きつけられたのは、初めてではない。開幕から4カード連続で負け越した4月10日、11試合目で早くも「V率0%」と言われた。さらに同16日、借金が0となったときにも同じように騒がれた。

 広島は未踏の戦いに挑んでいく。連覇した'17年は「9点差以上の逆転負け球団の同年優勝はない」という前例を覆した。

 3連覇した昨季までの広島のように、強いチームには結束力がある。

「強いから、まとまるのか」「まとまるから、強いのか」

 どちらもあるだろう。現在の広島はベンチを含め、まとまっているとは言い切れない。逆説的に、まとまるためには勝っていくしかない。

 28日からセ・リーグとの戦いに戻る。4連覇を目指す先には、日本一も見据える。交流戦の結果を受けて、広島はどう立て直すのか、注目される。

文=前原淳

photograph by Kyodo News