7日、「U18ワールドカップ」は高校日本代表がスーパーラウンドのオーストラリア戦に1−4で敗れ、奮戦かなわず5位に終わった。

 優勝は台湾が勝ち取ったが、勝ち負けはともかくとして、この大会は選手たちのいろいろな“表情”が見られて、とても興味深い。

 少し前までは、「甲子園、甲子園!」、「全国制覇、全国制覇!」とひきつった表情でプレーしていた球児たちの顔から、せっぱ詰まったような毒気が抜けて、真摯に目の前の闘いだけに集中しようとする「アスリート」のまなざしを何度も見ることができたことが嬉しかった。

 去年もそうだったが、選手たちは疲れていたと思う。

 春からずっと……いや、3年生にしてみれば、3年間ずっと、甲子園、甲子園と念じるような高校野球生活を続け、最後の夏を迎えたこの7月、8月にそれぞれが野球の神さまから「答え」をもらって、それぞれの高校野球にピリオドを打ってきたはずだ。

 達成感、失望感、喪失感……いろいろな思いの中で、一度は決着をつけた「高校野球」に再び気持ちを立て直して、この大会に参加するのだ。

 甲子園の熱闘で疲弊した肉体もさぞしんどいだろうが、一度しぼんだ“思い”を再び奮い起こして、今度は気持ちを世界に向ける。それも並大抵のことではなかろう。

 昨年の宮崎でのワールドカップでは、甲子園の時と同じ顔でプレーしていたのは、大阪桐蔭・根尾昂だけだった。

 雨ばかりの気の毒なコンディションの中で、今年も奮戦した選手たち、スタッフの皆さんに、心から敬意を表したい。

チームの命運を託された西純矢。

 チームの牽引車になると思われていた奥川恭伸(星稜)と佐々木朗希(大船渡)が、甲子園の疲れや指先の不具合のためにフル回転できない中、ジャパンの「投」を背負った西純矢(創志学園)の奮戦には頭が下がった。

 13イニングと3分の1……チームでいちばんたくさん投げたのも西だが、勝負どころの最もしびれる場面でチームの命運を託されたのも、彼がいちばん多かったはずだ。

 そのたび、世界のスラッガーたちを相手に敢然と立ち向かい、快速球で、鋭い変化球で三振を奪い、切り抜けてみせた。

アメリカの上位打線を相手に堂々の投球。

 中でも、1日のアメリカ戦のピッチングは見事だった。

 先発・林優樹(近江)をリリーフして3回のマウンドに上がると、いきなりアメリカの1番・クローアームストロングを3球三振にきってとる。

 相手は、向こうのドラフト1位候補らしかったが、西だって“こっち”のドラ1候補だ。ひるむこともなく猛烈に腕を振ると、左打者の足元のタテのスライダーでカウントをとり、一転、外の146キロで追い込んで、「3球勝負」のスプリットをボールゾーンの低さに沈め、あっさり3球三振だ。

 2番の左打者・ハッセルに外の速球をものの見事にレフト前に弾き返されても、まあ、そんなこともあるだろう……ぐらいの表情で、3番・ブコビッチに低めのスライダーをひっかけさせてショートゴロに。

捕手は立ったのに、一転ストライク。

 もっとすばらしかったのは、ここからだ。

 4番・ソダーストロムは、188cmの左バッターだ。

 全米の高校球児の中から選び抜かれたチームの4番をつとめるだけに、バッターボックスに足を運ぶその雰囲気から“メジャー”を感じさせる。

 そんなオーラにも負けない西純矢の大和魂。

 2球続けたスプリットがワッ! と思うほど真ん中に入っても、速球以上の猛烈な腕の振りだから、チェンジアップ効果になってソダーストロムのタイミングが外れ、バットを振り出せない。

 あっという間に追い込むと、捕手・水上桂(明石商)が外にスッと立ち上がったから、1球外すかな……と思ったら、147キロの速球が受けた水上捕手のベルトの高さにきまって、ここも3球三振だ。

 投げ間違ったら、あんな「生きたボール」にはならない。

 サインは「外せ」だったかもしれないが、バッターが打つ気なしと見てとった投手・西純矢が、えーい、面倒だ! と、とっさにもう一度3球勝負に出たのだろう。

 見事な若武者ぶり、投げっぷりだった。

来月のドラフトまで、秋のひと伸びを。

 この夏の予選までの西純矢は、もっと窮屈そうに野球をしているように見えていた。

 トーナメントの息苦しさは、経験した者じゃないとわからない。

「勝たねばならぬ!」のプレッシャーはそんなに変わらないのだろうが、何かから解放されたような、吹っきれたエネルギーが実に若々しい。こんなふうに投げられたら、今でもプロの1イニングの中継ぎで結構いい仕事しそうな、そんなイメージが簡単に描けてしまう。

 進学、就職を決めた選手たちもいるが、今年の「ジャパン」はその半数以上がプロ志望のようだ。

 来月には、それぞれの将来を左右する「ドラフト会議」が待っている。

 ここから先はもう、公式戦のないノンプレッシャーの秋だ。

 しかしプロを志す者にとっては、「停滞の秋」にしてはならない。ここでさらにワンプッシュ、レベルを上げておかないと、1月の合同自主トレでコンプレックスにかられ、最初から遅れをとることになる。

 疲れた心身をしばらく癒したら、そこから先は、「秋のシーズン」のスタートだ。伸び盛りの心身をさらに鍛えながら、運命の日を待とう。

文=安倍昌彦

photograph by AFLO