いよいよ今年も「プロ野球ドラフト会議」の季節がやってきました。NumberWebでは、昨年も好評だった全12球団の10年前のドラフトを振り返って現在の戦力を検証する短期集中連載を企画しました。ジャーナリスト・小関順二氏による分析のもと、ドラフトの歴史を振り返ってみましょう。

 第7回は広島東洋カープです!

<2009年ドラフト>
1位 今村猛/投手/清峰高
2位 堂林翔太/内野手/中京大中京高
3位 武内久士/投手/法政大
4位 庄司隼人/内野手/常葉橘高
5位 伊東昂大/投手/盛岡大付高
6位 川口盛外/投手/王子製紙
―育成―
1位 永川光浩/投手/龍谷大
2位 中村亘佑/捕手/横浜商大高

 この2009年、チーム成績は5位に低迷し、1998年から12年連続Bクラスに喘いでいた。上位選手が球団を選べる逆指名(自由枠、希望枠)制度が'93年に導入され、資金力に乏しい広島に向って強烈な逆風が吹いていたが、この逆風を止めたのは'05〜'07年までの3年間に行われた「分離ドラフト」だった。

 この3年間で目立ったのは高校卒選手の頑張りである。他球団を見ると、1巡指名だけでも'05年に陽仲壽(岱鋼、日本ハム)、岡田貴弘(T-岡田、オリックス)、山口俊(横浜)、炭谷銀仁朗(西武)、平田良介(中日)、'06年に田中将大(楽天)、前田健太(広島)、坂本勇人(巨人)、'07年に中田翔(日本ハム)、唐川侑己(ロッテ)と多士済々だ。

 広島を見ても、'06年には1巡は前述の前田、3巡曾澤翼(捕手)、'07年には1巡安部友裕(内野手)、3巡丸佳浩(外野手)が指名されているのである(曾澤と丸は2番目の指名)。

 この高卒選手の活躍が'09年1位の今村につながっていると思う。

プロ入り後も健在だった今村の緩急。

 今村は高校時代から完成度の高さが話題になっていた。最もよく言われていたのが「緩急の使い分け」。ストレートと変化球を投げ分けていたというのではない。ストレートを±7キロほどの変化をつけて投げ分けていたのである。

 この大人びた投球スタイルはプロ入り後も健在で、1年目の'10年から'19年までの10年間、毎年一軍で成績を残す安定感につながっている。

 この間、425試合に登板し、21勝30敗36セーブ114ホールド、防御率3.38はもちろん成功選手と言っていい成績だ。

30歳以降に覚醒した和田のように。

 2位堂林は夏の甲子園大会の優勝投手として知られるが、早くから評価されていたのがパンチ力のあるバッティング。キャッチャー寄りのミートポイントに特徴があり、ここからおっつけて右中間方向に押し込むバッティングは「超高校級」と高く評価されていた。

 3年目の'12年には144試合に出場し、打席数554はチーム内では梵英心の575に次いで2番目に多かった。打率.242は物足りないが、安打118、本塁打14は、当時21歳という年齢を考えれば将来の主軸を託すに十分な成績と言っていい。

 だが、ここから急ブレーキがかかり、現在までの通算安打は327。来季29歳なので余力は十分にある。通算2050安打を放った和田一浩(元西武、中日)の30歳以降の安打数は1901。つまり、20歳代のヒット数はわずかに149本である。それにくらべれば堂林は倍以上打っている。バッティングスタイルも似ているので、是非参考にしてもらいたい。

高卒選手が貢献した3連覇。

 翌'10年以降、広島のドラフトは大学生・社会人に目を向けた即戦力狙いに舵を切る。'13年には16年ぶりのAクラス復帰を果たし、'16〜'18年のリーグ3連覇も記憶に新しい。

 現状を見れば即戦力ドラフトが功を奏したとも言えるが、今村、前田、曾澤、丸、鈴木誠也など高校卒の果たした役割も小さくない。もう少しバランス型の指名にならないのかな、というのが正直な感想でもある。

文=小関順二

photograph by Hideki Sugiyama