11月3日の第12節でグラナダを破ったレアル・ソシエダが、リーグ戦でバルセロナ、R・マドリーに次ぐ3位につけている。

 好調の原動力は、イマノル・アルグアシル監督が志向する攻撃的なサッカーだ。2点を追いかける展開でハーフタイムを迎えた第11節のレバンテ戦では、指揮官が後半開始と同時に最終ラインと中盤を1人ずつ減らし、FWを2人増やす大胆な采配を見せた。

 もうひとつの要因が、マルティン・ウーデゴールだ。

 R・マドリーからのレンタルで加入した20歳のタレントのパフォーマンスに、スペインのメディアやサッカーファンは瞠目している。

 彼らの多くは、「天才」と呼ばれたウーデゴールの才能を信じていなかったからだ。

16歳でトップデビュー、その後。

 2014年4月、15歳と118日でノルウェー1部リーグデビューを果たしたウーデゴールは、欧州中のビッグクラブのターゲットとなった末、翌年1月にR・マドリーに加入した。

 見方を変えると、競争相手であったバイエルン、リバプール、アーセナルなどを上回る好条件を、R・マドリーが提示したことになる。それだけの価値がウーデゴールにあると判断して。

 外野の期待は、当然膨らむ。

 16歳になったばかりだったウーデゴールは、いきなりトップチーム入りが噂されるなか、2部Bリーグで戦うBチームの選手となった。そして、2014-15シーズンの最終節で1部のピッチに立ち、R・マドリーの最年少デビュー記録を「16歳と157日」に塗り替えた。

 期待は、なお膨らむ。

 ところが翌シーズンも2016-17シーズンも登録はBチームのまま。たまにトップチームの練習に呼ばれても、試合には出してもらえない。

 そこでウーデゴールは他クラブでの武者修行を求め、2017年1月から2018年6月までオランダのヘーレンフェーンへ、昨季は同国のフィテッセへレンタル移籍してプレーした。育ち盛りの選手に欠かせない「継続的な試合出場」を、スペインの2部Bよりはレベルの高いピッチで確保するためだ。

勝手に押された「過大評価」の烙印。

 しかし、鳴り物入りで加入した選手に対する忍耐力を持たない外野は、そうした経緯を力不足のせいと勝手に解釈し、彼に「過大評価」の烙印を押してしまった。

 そんな外野の喧騒など気にもせず、ウーデゴールはオランダで成長した。技術を磨き、プロとしてのメンタリティを養い、フィテッセではチームリーダーの重責を自ら担おうとさえしていた。

 さらに、身体を強化した。

 R・マドリーのカンテラのコーチのなかには「相手チームとのコンタクトが多い試合に弱い。DFに競り負ける」と指摘する者がいたというが、いまやそれは過去の話。一方、やはりカンテラ時代にもらった「横方向ではなく縦にプレーしろ」というアドバイスも、筋力を増した身体のおかげで実践できるようになった。

ソシエダに馴染み、語学も上達。

 加えて、今季は外的要素に開花を後押しされている。

 まずは、同居する兄のクリストファーや代理人のビヨン・トーレ・クバルメによるサポート。クバルメは2001年から'04年までレアル・ソシエダに所属し、2002-03シーズンのリーガ準優勝に貢献しているため、クラブが寄せる信頼も厚い。

 また、チームメイトに「新参者」「スカンジナビア半島出身」「同世代」という共通点を持つFWアレクサンダー・イサクがいることも、精神的な助けになっているようだ。

 落ち着いた環境も彼の力となっている。「R・マドリーの一員」と「レアル・ソシエダの一員」では日常的に受けるプレッシャーが段違いであり、サン・セバスティアンの人々はプライバシーも尊重してくれるという。

 3つ目に上達したスペイン語がある。地元紙によると、コミュニケーションの重要性を悟った彼は、R・マドリー時代よりも頻繁にレッスンを受けているとか。

 最後に、レアル・ソシエダのプレースタイル。チームへの順応が早かったことについて問われたウーデゴールは、アルグアシルのサッカーがカギだと答えている。

「自分にとって監督のプレースタイルは完璧。このチームにとっても最適だ」

マドリーはレンタル期間破棄を検討。

 柔軟なボールコントロールや強弱自在で正確なパス、試合の流れを鋭く読む目をもってレアル・ソシエダで最も危険な選手となっているウーデゴールを、R・マドリーの関係者やサポーターは、どのような思いで見ているのだろう。

 R・マドリー、レアル・ソシエダ、そしてウーデゴールが合意したレンタル期間は、2021年6月末まで。R・マドリーはこれを破棄し、今季終了後に彼を取り戻すという噂も流れているが、ウーデゴール自身は来季もレアル・ソシエダに残るつもりでいる。

「一昨年から続けてチームを移ってきたけど、僕自身を含む若い選手にとって環境の安定は大事なこと。だから当初の約束どおり2シーズンここでやりたい」

 レアル・ソシエダの進撃はしばらく続きそうだ。

文=横井伸幸

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