11月13日、ヴィッセル神戸のFWダビド・ビジャが電撃引退を発表した。

 その数日前に記者会見のリリースが送られていたのだが、まさかこの発表だとは思ってもみなかった。

 スペイン代表で長年盟友だったフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)が夏に引退し、それを追うようにビジャも――。ビジャが加入した2019年当初にそれを想像した人は、そう多くないだろう。いや、シーズンが進む中でも、か。

 引退会見の配信映像を見てみると、ビジャは「チームに貢献するゴールも決められていたが、自分の意思で引退したい」と語っていた。この言葉通り、ビジャはJリーグの舞台でもビジャだった。

 第31節終了時点で26試合12ゴール。90分間での平均得点は「0.545」はJ1トップクラスの数字だ。また得点ランキング首位のマルコス・ジュニオールとは3点差。残り3試合で固め打ちできれば、決して追いつけない数字ではない。

パターンの多彩さ、高いアベレージ。

 実際、ビジャのゴールパターンは多彩だった。相手マーカーに尻もちをつかせるドリブルシュートやポジショニングで奪うダイレクトシュートと、どういった形でも得点の匂いを感じさせた。試合後に対戦相手などから「ビジャは(マーカーの)視線から消えるのが本当にうまい」、「年齢を感じさせない切れ味でした」というコメントを聞いたことがある。37歳にしてなお健在であることを証明したのだ。

 数字、証言を踏まえれば来シーズンも見られるんだろうな、と勝手に思っていたが、最終的には本人の意思である。寂しいとはいえ、最後の花道を鮮やかに飾ってほしいと心から願うばかりである。

 あらためて書く必要はないと思うが、ビジャは2000年代後半から2010年代前半にかけて世界最強の点取り屋の1人だった。スペイン代表を本当の“無敵艦隊”にした'08年欧州選手権優勝、南アフリカW杯でのスペイン初優勝の主要メンバーで、両大会で得点王を獲得した。スペイン代表でも歴代通算最多の59得点を挙げた。

 そして、これらのよく知られている実績や数字以上に偉大だなと感じるのは、長期間、高いアベレージでゴールを奪い続けてきた点である。

ビジャの全盛期のゴール数は?

 サッカーでストライカーほど「ゴール」というわかりやすい数字で判断されるポジションはない。2桁を超えれば主力、20ゴール以上で得点王争い、30ゴール到達でワールドクラス、40ゴールだとメッシかロナウドね、という感じだろう。

 ではビジャは、全盛期にどのくらいの成績を残していたのだろうか?

 以下、リーガ1部でビジャが残した各シーズンの成績である。数字は『transfermarkt』を参照した。

<ビジャのリーガ1部での成績>
サラゴサ時代
'03-'04 38試合17得点
'04-'05 35試合15得点

バレンシア時代
'05-'06 37試合25得点
'06-'07 37試合15得点
'07-'08 27試合18得点
'08-'09 33試合28得点
'09-'10 32試合21得点

バルサ時代
'10-'11 34試合18得点
'11-'12 15試合5得点
'12-'13 28試合10得点

A・マドリー時代
'13-'14 36試合13得点
合計
352試合185得点

2ケタ得点は11シーズン中10回。

 恐ろしいのは、1ケタ得点に終わったのがバルサ時代の2011-12シーズンだけであること。リーガ得点王に贈られる「ピチーチ賞」こそ一度も獲得していないが、11シーズン中10回の2ケタ得点達成は、際立った安定感である。

 なおビジャの決定力はヨーロッパのカップ戦でも光っており、2009-10シーズンのELでは10試合6得点、CL本戦でも出場6シーズンで14ゴールを奪っている。これほど計算できるストライカーなら、彼を起用したエメリ、グアルディオラといった名将の信頼が厚かったのは間違いないだろう。

盟友、ライバルと比較してみても……。

 ビジャの通算試合とゴール数を比較してみたいのは、リーガで輝いた5人のストライカーだ。同時代の盟友トーレス、Jリーグにも来たフォルラン、現在バルサとレアルに所属するスアレスとベンゼマ、そしてスペインを象徴するFWラウールである。彼らがリーガ1部で残した数字(スアレスとベンゼマは2019-20シーズン第13節終了時点)は以下の通りである。

トーレス(A・マドリー)
281試合103得点
2ケタ得点達成:9シーズン中6回

フォルラン(ビジャレアル、A・マドリー)
240試合128得点
2ケタ得点達成:7シーズン中6回

スアレス(バルセロナ)
173試合137得点
2ケタ得点達成:5シーズン中5回

※2019-20シーズンは含めず

ベンゼマ(レアル・マドリー)
323試合157得点
2ケタ得点達成:10シーズン中8回

※2019-20シーズンは含めず

ラウール(レアル・マドリー)
550試合229得点
2ケタ得点達成:16シーズン中11回

メッシ、ロナウドに次ぐ点取り屋。

 こう調べてみると、メッシの影に隠れているがスアレスのコンスタントさ、そしてラウールの数字に改めて驚かされる。ただビジャの出場試合と得点数の多さはすなわち、リーガの一線級で戦い続けた証である。それを踏まえればメッシとロナウドに次ぐクラスの点取り屋だった、としても言い過ぎではないだろう。

 なおかつビジャの場合、バルサに所属したのは3シーズン。残留がシーズンの目標設定となるサラゴサ、そしてダビド・シルバとのホットラインが冴え渡ったとはいえ、当時のバルサとレアルという2強とは戦力差があるバレンシアでもゴールゲッターであり続けたことは、大きな価値と言える。

 さて今回の電撃引退で実感することは、世界的ビッグネームがJリーグにいるという事実の大きさだ。

 トーレス、ビジャと続き、そんなことは想像したくないが、アンドレス・イニエスタとのお別れの時も、きっと遠い未来ではない。

 いるのが当たり前、になりつつあるJリーグだからこそ――天皇杯を含むビジャの残りの数試合、そして日本を選んでくれたビッグネームのスーパープレーに今一度注目したいところだ。

文=茂野聡士

photograph by Getty Images