年末年始恒例、NumberWeb版“プロ野球・ゆく年くる年”。全12球団の今シーズンの振り返りと新シーズンへの期待を綴る短期集中連載シリーズです。
 第2回は来季から佐々岡真司新監督を迎える広島東洋カープ。今季、Bクラスに沈んだチームの建て直しに必要となる柱は誰が担うのか。

 25年ぶり優勝から3連覇という輝けるときを過ごした広島が2019年、分岐点を迎えた。

 2016年オフに引退した黒田博樹氏に続き、新井貴浩氏が引退。丸佳浩はFAで巨人へ移籍した。迎えたシーズンは4連覇を逃しただけでなく、Bクラスとなる4位でクライマックスシリーズにも出場できなかった。

 3連覇の礎を築いたといえる主柱が抜けた影響は戦力ダウンという、目に見えるものだけではなかった。大型連勝と大型連敗を繰り返した不安定な戦いが示した通り、チームの弱さが感じられた。

 大黒柱が抜けた分、柱の数でカバーしたかったところだったが、柱と期待した主力候補の選手たちに負傷や離脱が相次いだのもまた、3連覇まで駆け抜けた反動だったかもしれない。

脱却できなかった主力への依存。

 強力広島打線の切り込み隊長を担った田中広輔が開幕から調子が上がらず、得点力低下の一因となった。また中軸が期待された松山竜平も思うように調子が上がらず、頭部死球の影響もあって前半戦は打率2割を切る誤算も重なった。

 投手陣では3連覇した3年で計76セーブを挙げた中崎翔太が開幕から切れを欠いた。セーブ数が伸びず、失点を重ねた。

 田中広は8月に「右膝半月板部分切除手術」、中崎は11月に「右膝半月板部分切除手術」をそれぞれ受けた。3連覇に貢献してきた代償ともいえるかもしれない。

 就任5年目となった緒方孝市前監督も、3連覇に貢献した主力選手への依存から、思うように脱却できなかった印象がある。先述した開幕から精彩を欠く中崎を抑えとして起用し続け、一向に調子の上がらない田中広も4月末(当時打率1割6分8厘)まで1番で起用。連続試合出場記録への配慮も影響してか、6月19日までスターティングメンバーから外そうとはしなかった。

 当然、2人には苦難を乗り越えてきた実績がある。目の前の壁を乗り越えればさらに成長した姿を見られるかもしれない。新たな大黒柱と期待したからこそ、乗り越えて欲しかった……。そんな心情も見えた。

4年ぶりに味わう早いオフ。

 ただ、就任2年目の'16年に実力主義に徹したことで25年ぶり優勝をもたらし、3連覇に導いたはずだ。4年目までに築いた経験や関係性が、就任5年目に信条を揺り動かしたのだろうか。大黒柱に育てたい思いも重なったのか、'19年は主力たちの貢献度や実績も加味してしまったように映る。結果、選手の入れ替えなどは後手に回った印象がある。

 もちろん3連覇の反動は指揮官だけでなく、選手にもあった。3連覇した実績が充足感をもたらし、'19年ペナント奪取の飢餓感が他球団よりも上回っていたようには感じられない選手もいた。ペナントを勝ち続ける難しさを肌で感じただろう。

 4連覇を逃しただけでなく、4位に終わってクライマックスシリーズにも出場できなかった。4年ぶりに味わう早いオフに、選手たちの飢餓感は刺激されたに違いない。

 このまま負けることに慣れてしまうと、再び低迷期に突入しかねない。

佐々岡監督が期待する岡田明丈。

 再び浮上するためには、広島の伝統を継承する選手が柱となることが求められる。野手には'19年まで選手会長を務めた会沢翼、主砲に成長した鈴木誠也がいる。会沢が「やるのは選手。勝つことでまとまりやすくなるが、1人ひとりが意識しないといけない」と言えば、鈴木も「個が大事。個がバラバラな方向を向いていたらまとまるものもまとまらない」と言う。

 投手にもエースと認められた大瀬良大地がいる。彼らに何人の主力候補が柱として加わるか。再浮上するか、このまま低迷するかは、そこにかかっている。

 投手では中崎や一岡竜司、今村猛という'19年に調子を落とした実績組に加え、プロ4年目で初めて白星なしに終わった岡田明丈を'20年のキーマンに挙げたい。

 リーグワースト2位となる回数の逆転負けを喫しただけに、勝ちパターン再構築は'20年広島の最大の使命ともいえる。新監督に就任した佐々岡真司監督が早々に岡田の中継ぎ転向を指示。セットアッパーとしての期待を口にした。それだけの可能性を最速156キロ右腕に寄せている。緒方前監督が就任時に抑えに指名した中崎がストッパーに定着したように、佐々岡体制では岡田が中継ぎの顔となる可能性も十分にある。

選手会長に指名された田中広輔。

 野手では、'19年に連続試合出場の個人記録をストップさせ、シーズン終盤には右膝の手術を行った田中広が'20年広島のキーマンだろう。会沢前会長から新選手会長に指名され、チームを引っ張る役割も求められる。

 今季までの田中広は自分のパフォーマンスのために黙々とやるタイプ。スマートなプレースタイルで投手を落ち着かせてきたが、スマートさがときに淡泊に映るときもある。チームの旗振り役となる来季は背番号2の姿がチームの姿であるという自覚も芽生えるだろう。ときにプレースタイルを変えてでも感情を表に出し、ナインにメッセージを送るような言動が求められる。その背中をチームメートが見ている。

 3連覇には小窪哲也、会沢というチームを支えるリーダーがいた。新星・佐々岡カープにも、ニューリーダーが必要だ。

文=前原淳

photograph by Kyodo News