この春のセンバツ出場校の発表が、今週金曜日、24日に迫った。

 お正月が明けたばっかりだと思ったら、プロ球界が新人合同トレーニングで始動して、もうなかば過ぎ。2月1日からのスプリングキャンプを挟んで、あっという間に「センバツ」がやって来る。

 毎年そんな実感の、あわただしい毎日が始まる。

 今年のセンバツ高校野球も面白そうだ。

 誰が飛び出してくるかわからない面白さが、「センバツ」の見所だと思っている。今年は特に、その色合いが濃い。

 たとえば昨年なら、星稜に奥川恭伸(現・ヤクルト)がいて、東邦に石川昂弥(現・中日)がいて横浜に及川雅貴(現・阪神)がいて……と、何人かはアテにできる選手がいたものだが、今年はそうした存在が、中京大中京・高橋宏斗なのか、明石商・中森俊介なのか判然としない。

 それだけに、いったいどんな新顔が春のグラウンドに飛び出してくるのか。 未知の魅力に胸が躍る。

「プロ注目」の次の「大学注目」。

「プロ注目」と評される選手については、すでにいろいろな場所で名前が挙げられており、後追いでなぞるよりも、視点の角度をややずらしてみたい。

 私が大学野球の監督だったら、こんな選手と一緒に野球をしてみたい……そんな“ときめき”を感じさせてくれる選手。

 そうした視点で、センバツ選手たちに迫ってみたい。

 出場校決定前の今回は、まず「当確」と思われる昨秋の各地区優勝校の中から、そんな逸材を探していこう。

白樺学園の片山楽生は絶対に伸びる。

 北から見ていくと、いきなり北海道の白樺学園で見つけた。

 エース・片山楽生(177cm、75kg)、この投手はよくなる。

 昨秋の北海道大会では、強豪・東海大札幌を完封したり、試合前半に6点7点奪われたり、大波小波のピッチングだったが、腐ったり自分にイライラしたりする内面の動揺が表に出ないように一生懸命我慢し、辛抱しながら投げていた。

 さらに、北海道を勝ち抜いて初めて駒を進めた明治神宮大会では、国士舘を自責点2点に抑えたあと、健大高崎に2−3で惜敗したが、東京、関東という激戦区を勝ち抜いた強敵相手に、ひるんだような投球を一切見せなかった。

 たいしたヤツだと、頭が下がった。こういう選手が1人入ると、チームの雰囲気がガラッと変わる。

球速がないのでプロはわからないが。

 そんなにいい投手なら、プロが食指を……とは思うが、まだ、大きな“数字”がない。昨秋の段階で、アベレージ130キロ後半。飛び抜けたスピードはない。

 プロの欲しがるエンジンの大きさは、まだ搭載していない。

 但し、持ち球の質。これは一級品。

 ダグアウトの上から見ると、速球の軌道がねばっこい。あっさり回転がほどけない。「トラックマン」で測ったら、2300回転ぐらい出るのではないか。体感速度が速いタイプだ。

 タテのスライダーも、変化点が打者に近い。1つ前の速球と同じ軌道で来て、打者が「まっすぐだ!」と思った瞬間に落ちるから、バットがもう止まらない。速球との合わせワザであるスライダーがしっかりしているのは強い。タイミングを外せるチェンジアップを覚えたら、大学でもローテーションの軸で使える。

2年でデビュー、4年後に上位指名。

 さて、どう育てるか。

 最初の1年はトレーニングで体力と柔軟性を養いながら、内野、外野でも練習して、動きのバリエーションを身に付けてもらおう。

 とっさにいろいろな動きが瞬時にできることは、牽制、クイック、バックアップ、バント処理に投ゴロ併殺など、実は「投げる」以外にいくつもの仕事を担う投手の必修科目なのだ。

 実戦デビューは2年からだ。

 リーグ戦、オープン戦合わせて100イニング以上は投げてほしい。

 仮に彼がプロに進んだとして、2年目から100イニング以上のチャンスを与えられることはなっかなかない。

 投手はブルペンだけでは育たない。選手は例外なく、実戦の中でのみスキルアップするものだ。

 3年、4年時には結果もある程度要求するが、あくまでも内容最優先。その日最も確信の持てる球種を前面に押し立てて打者に立ち向かう「攻め」のピッチングさえできていれば、それでよい。

 負けたとしても、後に必ずつながっていく。

 ザックリと表現して、そんなプロセスで、4年後のドラフト上位指名を現実のものとする。

国士舘と中京大中京にもいい投手が。

 話が「育て方」の能書きになってしまったが、そんなプロセスに乗せてみたいと思う投手があと2人。

 国士舘・中西健登(186cm70kg・右右)と中京大中京・松島元希(164cm72kg・左左)。

 中西投手は、長いリーチが体の回転に巻きついて振られて、リリースの感覚がものすごく繊細に見えるサイドハンド。

 内外角の両方に確かなコントロールを持つサイドハンドは、「150キロ」と同じぐらいの稀少価値があるし、片山投手と同様に、とても速く見える速球を投げる。

 中京大中京・松島投手は逆の個性を持ち、コントロールは少々アバウトでも、小柄な体に驚くべき高性能エンジンを搭載し、この体で、平気で140キロ台を続けられる。

他の大学が手を出すのは難しいか。

 ほんとなら中西投手は、バッティングの潜在能力と強肩を兼備した吉田健吾捕手(179cm83Kg・右投右打)とのバッテリーごと欲しいところだが、国士舘には大学もあるので他大が手を出すのはなかなか難しいかもしれない。

 中京大中京も、選手の学力が高くてレギュラークラスは東京六大学進学が当たり前みたいな状況に加えて、中京大学さんがついているだけに状況は同じか。

 次回は、やはり「当確組」から、野手について探してみよう。

 名前を挙げた選手たちがすべて獲得できたら、4年後、いや3年後だって、大学選手権、明治神宮大会、春・秋の連覇が可能だと思うのだが……。

文=安倍昌彦

photograph by Kyodo News