1月20日、レアル・マドリーが新たな才能を獲得した。

 その前日に18歳の誕生日を迎えたばかりのフラメンゴの大型アタッカー、レイニエール・ジェズスの入団を発表したのだ。

 契約期間は2026年6月末までの約6年半で、移籍金は推定3000万ユーロ(約37億円)。現在、コロンビアで行われているU-23南米選手権(上位2カ国に東京五輪出場権が与えられる)に出場しており、“白い巨人”に合流するのは大会終了後の2月となる。

 本人は、「世界一のクラブに入団できてとても幸せ」と満面の笑顔。「クラブの歴史に名前を刻みたい」と抱負を語っている。

 2018年のビニシウス・ジュニオール、2019年のロドリゴに続いて、3年連続で18歳のブラジル人アタッカーがこの超名門クラブの門を叩く。

 ただし、レイニエールは基本的にドリブラーである先輩2人とは少しタイプが異なる。ピッチの中央でプレーすることを好み、主として攻撃的MF、セカンドストライカー、あるいはCFのポジションを担う。

 身長185cmと大柄にして屈強。その反面、繊細なテクニックを備え、敏捷で、なおかつ決定力が高い。

3000万ユーロ程度はバーゲン。

 縦方向への鋭いドリブルはカカ(元ミラン、レアル・マドリー他)を、トリッキーなドリブルやヒールキックはロナウジーニョ(元バルセロナ、ミラン他)を、パワーと決定力はロナウド(元バルセロナ、レアル・マドリー他)を、そして抜け目なさはロマーリオ(元バルセロナ他)を彷彿とさせる。ヘディングによる得点も多い。

 状況判断も優れており、ゴールから逆算して最適のプレーを選択できる賢さがある。

 昨年7月に彼をトップチームでデビューさせたフラメンゴのポルトガル人指揮官ジョルジ・ジェズスは「素晴らしい才能とインテリジェンスの持ち主。同世代の選手より5年先を行っている」と称賛。「これほどの逸材が3000万ユーロ程度とは安い。バーゲンだろう」と冗談交じりに語っている。

憧れの選手はジダンとカカ。

 ブラジルの首都ブラジリアの生まれ。父マウロはフットサルの名選手で、ブラジル代表でも活躍し、1985年にスペインで行なわれた世界選手権で優勝している。

 歩けるようになるとすぐに父親から手ほどきを受け、技術はもちろんのこと、プロ選手になるための心構えを叩き込まれた。憧れの選手は、ジネディーヌ・ジダン(現レアル・マドリー監督)とカカだった。

 12歳でフラメンゴの下部組織に入団し、各カテゴリーで中心選手として活躍。年齢別のブラジル代表の常連で、昨年の3月から4月にかけてペルーで行なわれたU-17南米選手権に出場してチーム最多の3得点をあげた。

 その後、フラメンゴのトップチームに昇格。7月31日、コパ・リベルタドーレスのエメレック(エクアドル)戦でデビューし、9月7日、ブラジルリーグの試合で初得点を記録した。

議論を呼んだU-17W杯の招集拒絶。

 昨年10月から11月にかけてブラジルで開催されたU-17W杯にも招集され、エースとしての働きが期待された。しかし、フラメンゴが「コパ・リベルタドーレスと国内リーグの優勝を目指す大事な時期に、絶対に欠かせない選手」と言い張って招集を拒絶した。

 当時、フラメンゴは痛烈に批判され、「17歳の選手が南米王者を目指すチームに本当に不可欠なのか」という懐疑的な声もあった。しかし、U-17W杯期間中、7試合に出場してチームの勝利に直結する2得点をあげ、本当に「絶対に欠かせない選手」であったことを証明してみせた。その後も、ブラジルリーグ終盤の試合で貴重な働きを続けた。

 こうして昨年後半、リバプール、マンチェスター・シティ、アーセナル、パリ・サンジェルマンといった欧州ビッグクラブからオファーが殺到したが、「子供の頃からのマドリディスタ」と語る本人がレアル・マドリーを選んだのである。

 ただし、まだ18歳になったばかりで、克服すべき課題がいくつかある。

 その最大のものは、試合経験の不足だ。

まずはラウールのもとで経験を積む。

 昨年、フラメンゴで出場したのはブラジルリーグで14試合(6得点)、コパ・リベルタドーレスで1試合(無得点)の計15試合。これは、ロドリゴの41試合(サントス)、ビニシウス・ジュニオールの37試合(フラメンゴ)と比べても各段に少ない。何しろ、プロとしてまだ半年足らずしかプレーしていないのである。

 今後、しばらくはカスティージャでプレーしながら経験を積まなければならない。その点で、チームの監督が往年の名FWラウール・ゴンサレスで、彼の指導を受けられるのは非常に有益だ。

 技術面での課題もある。得点のほとんどは右足と頭によるもので、左足からの得点が少ない。今後、右足からのパスやシュートを徹底的に警戒されるに違いないから、左足をもっと磨かなければならない。

 また、中盤で不要なヒールキックを試みてボールを失い、ジェズス監督から激しく叱責されたことがある。フットボール・インテリジェンスは十分持ち合わせているのだから、それをさらに活用しなければならない。

将来的にはトップ下を久保と争う?

 現在のレアル・マドリーの基本フォーメーションは、4-3-3。彼が最も得意とするトップ下のポジションはないので、当面はトップと2列目のどこかのポジションを狙うことになる。

 今季は、元フランス代表CFカリム・ベンゼマが絶好調。しかし、ベンゼマの控えであるセルビア代表ルカ・ヨビッチは本来の力を発揮できていない。カスティージャで抜群の結果を残せば、ヨビッチの代わりに出場機会を与えられる可能性がある。

 フォーメーションが4-2-3-1なら、もちろんトップ下が狙い目だ。ここにはスペイン代表MFイスコがいるが、将来的には久保建英とこのポジションを争うことになるかもしれない。

 まずは、スペインでの生活とラ・リーガのプレースタイル、そしてクラブのカルチャーに慣れる必要がある。

 その点で、チームにベテランの左SBマルセロ、チームの主軸であるボランチのカゼミーロ、若手のCBエデル・ミリタン、FWのビニシウス・ジュニオール、ロドリゴと5人ものブラジル人選手がいるのは非常に心強い。生活とクラブ文化への順応は容易だろう。

 現在、レアル・マドリーではビニシウス・ジュニオールがやや伸び悩んでおり、ロドリゴは順調に階段を登っている。

 この2人を凌ぐ潜在能力を持つであろうレイニエールが、今後、“白い巨人”でどのような軌跡を描くのか――。そのことは、今後のブラジル、さらには世界のフットボールにとっても重要な意味を持つはずだ。

文=沢田啓明

photograph by ZUMA Press/AFLO