2月1日は「プロ野球のお正月」、キャンプ解禁日だ。この日から12球団は「2020年バージョン」へと進化を始める。

 筆者は毎年、春季キャンプ地を回っている。昨年は「全球団のキャンプを回ってみよう!」と思い立って、海外キャンプを除く12球団の宮崎、沖縄、高知の一軍、二軍の全キャンプ地を回った。

 結論としては「やるんじゃなかった」である。

 キャンプ期間は短いし、休みや移動もある。1日に2つのキャンプ地をはしごすることもあった。そうなると移動を考えれば滞在期間は1時間なんてことにもなる。パスを申請した広報の人に「もう帰るんですか?」と驚かれたこともあったほど。ただ、キャンプ地を回っているうちにいろいろなことが見えてきたのは収穫でもあった。

 少し前までキャンプの本場は宮崎、高知だったが、最近はどんどん沖縄にチームが集結しつつある。なんといっても、2月でも20度を上回ることも珍しくないほど温暖だからだ。

最近のCS出場チームとキャンプ地。

 しかし最近のポストシーズン進出チームをキャンプ地別に分けてみると、不思議なことが見えてくる。

<ここ3年の両リーグのCS出場チーム。()は一軍の国内キャンプ地>

・2017年
【パ・リーグ】
 ソフトバンク(宮崎県宮崎市)
 西武(宮崎県日南市)
 楽天(沖縄県久米島町、金武町)
【セ・リーグ】
 広島(宮崎県日南市、沖縄県沖縄市)
 阪神(沖縄県宜野座村)
 DeNA(沖縄県宜野湾市)

・2018年
【パ・リーグ】
 西武(宮崎県日南市、高知県高知市)
 ソフトバンク(宮崎県宮崎市)
 日本ハム(沖縄県名護市、国頭村)
【セ・リーグ】
 広島(宮崎県日南市、沖縄県沖縄市)
 ヤクルト(沖縄県浦添市)
 巨人(宮崎県宮崎市、沖縄県那覇市)

・2019年
【パ・リーグ】
 西武(宮崎県日南市、高知県高知市)
 ソフトバンク(宮崎県宮崎市)
 楽天(沖縄県久米島町、金武町)
【セ・リーグ】
 巨人(宮崎県宮崎市、沖縄県那覇市)
 DeNA(沖縄県宜野湾市)
 阪神(沖縄県宜野座村)

宮崎キャンプの球団に聞いてみた。

 一軍キャンプ地の数の上では、宮崎県が5球団、沖縄県が9球団(巨人と広島は宮崎、沖縄両方で実施)と沖縄が多いが、ポストシーズン進出球団では、宮崎の方がやや優勢なのだ。

 これは偶然か、それとも何か理由があるのか?

 宮崎で春季キャンプを行っている球団の運営担当者に話を聞いてみると、こう教えてもらったことがある。

「確かに沖縄は温暖でいいですが、プロ野球は3月に始まります。この時期の内地は沖縄よりもかなり寒い。オープン戦は南から徐々に北上しますが、それでも沖縄でキャンプする球団では内地と沖縄の気候差で、選手が体調を崩すことが少なくないと聞きます。

 宮崎はキャンプ中に雪が舞ったりしますが、本拠地の気候と大差ないので、自然に体も実戦モードに近づけていくことができるんです」

 なるほど、と思った。

 とは言え、沖縄の暖かさは魅力だ。選手の仕上がりが早く、内地との気候の落差に気を付けさえすれば、沖縄でやるほうがメリットがあるという見方もできよう。

「タイムテーブル」に大きな違い。

 沖縄と宮崎のキャンプの違いをはっきり感じるのが「タイムテーブル」だ。

 宮崎のキャンプでは、選手はじっくりと体をほぐしていく。ざっくりした印象で言うと、朝11時くらいまで選手がグローブやバットを手にすることは少ない。アップやランニングの時間をたっぷりとって体が温まってから「野球」をするという印象だ。

 投手がブルペンに入るのは、昼近くになってから。宮崎でも暖かい日は多く、オリックスのキャンプなどは球場周辺の緋寒桜が満開になるが、気候によっては大雪なんて日もある。そのため宮崎では、チームも選手も慎重に調整を進めていく印象である。

 一方、沖縄では、早ければ10時前にアップを終えて投内連係、シートノックなどが始まる。昼前にはブルペンから「よっしゃー!」とブルペン捕手の景気の良い声が聞こえてくることも多い。

 さらに早いのがロッテの石垣島だ。空港からタクシーに乗ると、2月でもエアコンがかかっていたりする。沖縄本島から着込んできた薄いダウンジャケットが間抜けに見える。

 石垣島のロッテキャンプのブルペンでは、10時前から投手が投げ込みを始めたりする。午後になると汗ばむ陽気で、Tシャツに短パンのファンの姿も目にする。

南北に長い日本の地域特性を実感。

 キャンプ地めぐりは、南北に長い日本の地域特性を実感する旅でもある。

 毎年、同じようなプログラムで行われる春季キャンプだが、それでも年ごとにいろんなところが変わっている。非公開だったブルペンが公開になったり、サブグラウンドの位置が変わったり、キッチンカーのメニューが変わったり……。そういった小さな変化も楽しみのうちだ。

 今年は東京オリンピックがあるために開幕は3月20日と2019年よりも9日早い。その分、春季キャンプ、オープン戦のスケジュールも前倒しになっている。基礎的な練習をやる期間は短くなり、シートノックから紅白戦、練習試合、オープン戦と実戦形式のメニューが2月上旬にも始まる。

 昔はキャンプにでぶでぶの体形でやってきて、キャンプ中に体を絞り上げて実戦モードになっていくベテラン選手がいたが、今は自主トレですでに“戦える体”になってキャンプインするのが当たり前になっている。

 キャンプの楽しさは、選手の躍動を通じて「冬から春」への季節の移ろいを実感することだと思う。宮崎、沖縄それぞれに良さはあるが、キャンプ見学は基本「タダ」である。

 チャンスがあればぜひ、ふらっと立ち寄っていただきたい。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News