東京五輪の新種目であるバスケットボール3x3。五輪出場権獲得に向けて急ピッチで強化を進めている日本女子3x3代表で、強い存在感を放っているのが、馬瓜ステファニーだ。

 2018年ジャカルタ・アジア大会では、大会直前に負傷者が出たため、5人制から3x3に“レンタル出場”し、あれよあれよの銀メダル獲得。U-23ワールドカップでは'18年銀、'19年金メダル獲得と、とんとん拍子に3x3での実績を重ねてきた。

 5人制の日本代表として東京五輪出場を目指す姉のエブリンは、Wリーグ・トヨタ自動車のチームメート。姉と同様に5人制でも活躍するステファニーだが、どうやら今は3x3に愛されているようだ。

身長以上に重要とまで言われるウイングスパン。

 特徴的な武器は、ひと目見ただけで長いことが分かる腕。聞けば、182センチの身長に対してウイングスパンは197センチあるという。

 バスケットボールでは身長以上に重要とまで言われるウイングスパン。一般的には身長と同じくらいの長さが普通だが、ステファニーの場合は身長の108%もあるのだ。

 同じくウイングスパンのサイズが飛び抜けていることで知られる八村塁(ワシントン・ウィザーズ)は、203センチの身長に対して107%の218センチ。ステファニーは八村をしのぐスペシャルボディの持ち主なのである。

 ステファニー自身、コートに立てばつねに腕の長さをフル活用することを意識しながらプレーしている。

「オフェンスでは腕の幅がある分、使えるスペースが広がりますし、ディフェンスでも有効です。3x3は切り替えの速い競技なのですが、ウイングスパンが長い分、相手との間合いを少しあけることができるので、抜かれにくい。リバウンドでも生きているなと思いますね」

猫背が理由で……。

 今でこそ武器となっているウイングスパンだが、昨年までは測定する日によってサイズにかなりの違いがあり、短いときは191センチしかないときもあったという。理由は猫背だったこと。そのため、肩甲骨の可動域が狭くなりがちだった。

 ところが昨年、周囲から猫背を指摘されて風呂上がりのストレッチを始めると、肩甲骨の可動域が広がり、ウイングスパンが197センチで安定するようになった。

「可動域が広がるとリバウンドの取れる範囲が1個上になりましたし、パスの範囲にも生かされてきます」と笑顔を見せる。

女子3x3日本代表だけは開催国枠がない。

 昨年11月のこと。国際オリンピック委員会が東京五輪での3x3の開催国枠を1つしか認めなかったため、当時の世界ランキングで上だった男子に出場権が与えられることが発表された。

 これにより、開催国枠を持つ男女5人制、男子3x3と異なり、女子3x3日本代表だけは自力で東京五輪の出場権を獲得しなければならなくなった。

 今後は、3月18日から22日までインドで開催される「FIBA五輪選考会(OQT)」で上位3位までに与えられる五輪出場権の獲得を目指す。

 OQTには20チームが参加し、4組に分かれて1次リーグを行い、2位までが決勝トーナメントに進出する。日本はイラン、ウクライナ、トルクメニスタン、オーストラリアと戦う。ライバルと見られるのは強豪のオーストラリアとウクライナだ。

 女子3x3に開催国枠が与えられなかったときは複雑な思いが生じたというステファニーだが、今はもう割り切っている。

「日本の弱点は経験が足りないこと。ですから、OQTで勝って五輪出場権を手にすれば自信がつくと思うので、五輪本番でも飛躍できるんじゃないかなと思います」

「負けないようにしたいと思っています」

 姉のエブリンは5人制の女子日本代表として多くの国際大会で実績を重ね、東京五輪出場を目指している。Wリーグでは2人ともプレーオフ進出を目指してレギュラーシーズンを戦っている最中だ。

「エブリンとは普段はあまり五輪のことを口に出すことはないのですが、5人制日本代表の試合はもちろん見ていますし、エブリンが頑張ってるというのは分かっています。お互いに頑張っている姿を見て、負けないようにしたいと思っています」

 ガーナ出身の両親を持ち、愛知県で生まれた。

 3歳上のエブリンが中学生の時に年代別の日本代表に声を掛けられたのをきっかけに、家族そろって日本国籍を取得した。高校は姉と入れ替わりで桜花学園に進学。3年生のときは姉も務めた主将に選ばれ、姉に続く高校三冠(インターハイ、国体、ウインターカップ)を達成した。

愛読書は『さよならドビュッシー』

 趣味は読書。小説家・中山七里の作品が好きで愛読書は『さよならドビュッシー』という物静かな一面も持つ。休日には車を運転してお気に入りの書店巡りをするという。

 外見から英語で話しかけられることが多いが、日本生まれのため、英語はさほど上手ではない。しかし、両親の日常会話が英語とあって、他の日本人よりは聞けるし、話せる。

 国際大会ではコート上での審判とのやりとりを日本語でチームメートに伝えるのも、ステファニーの役割だ。

「自分がチームで求められているのは、リバウンドやディフェンス。攻撃ならドライブで相手からファールをもらうプレーです。東京五輪に出たいという気持ちが一番なので、OQTをしっかり突破していきたいと思っています」

 笑顔の似合うステファニーがキリッと表情を引き締めて言った。

文=矢内由美子

photograph by Yumiko Yanai