「バスケは守りから。人生は常に攻めです」

 馬場雄大はそう宣言した。

 バスケットボールにおいては常に得意のディフェンスでボールを奪い、そこから転じての速攻で豪快なダンクを叩きこむプレーを売りにしてきた。まず守りがあって、その上での攻めだ。人生でも同じように守りからなのだろうか。そう聞くと、冒頭の言葉が返ってきた。

 人生においての『攻め』は、もともと特に意識してきたわけではなかった。しかし、結果的には攻めになってきたのだと振り返る。

「正直、なりたい理想像があって、そこに向かって全力で進んでいるだけですけれど、結果、それが攻めになっているかなとは思います。過去の決断等もそうですし。もしかして、だめになったケースもあるわけじゃないですか。それがそのとき、頭に一切なかった。そういう最悪のケースも考えずに、今、こうしてここにいられるというのは、自分のありたいところしか見えていなくて、攻めだったのかなぁとは思いますね」

基準は「自分に向いているかどうか」

 大学在学中にBリーグのアルバルク東京と契約したときも、去年秋にアルバルクを離れて、出場時間の保証がないGリーグからNBA入りを目指そうとしたときも、当たり前と言われるような道は選んでこなかった。周囲の「無理」という声にも耳を傾けなかった。前例があるかどうかではなく、自分に向いているかどうかが判断の基準だった。

「大学に入ったら卒業まで4年間プレーするのは当たり前」

「NBAに入りたいなら遅くても大学からアメリカに出るのが当たり前」

「Bリーグから直接NBAを狙うなんて無理」

 そんな常識は、馬場には関係なかったのだ。

「自分には自分の道がある」と馬場は言う。同年代で、高校卒業と同時に日本を飛び出した渡邊雄太や八村塁を意識しての言葉だ。先に海外に出た彼らからは常に刺激を受けてきた。うらやましいという思いもある。しかし、自分は自分のやり方でNBAに行く。それが、彼なりのこだわりだった。

「(渡邊や八村に)追いつけ、追い越せとは思っていたんですけれど、やっぱり人それぞれ道があって、その道をどう生きるかだと。それは大学生とか高校生のときからずっと考えていた。雄太とか塁と比べずに、今、自分の道を精いっぱい生きているっていうことはできているかなとは思っています」

「来い」ではなく「考えてくれ」。

 昔からそうだった。まわりに流されることはなく、言われるままの道を進むわけでもなく、自分で判断して進む道を決めてきた。

 進路について自分で悩んで考え、判断した最初の思い出は、高校進学のときだった。富山第一高校でコーチをしていた父から、「うちに来ないか」と声をかけられたのだ。当時の富山第一高校は全国レベルの選手を勧誘するような強豪校ではなかった。それでも、馬場が高校に入るタイミングで力を入れて勧誘し、伝統の一歩目を作りたいという話に惹かれた。子供の頃からバスケットボールのすべてを教えてもらっていた父から、さらにコーチとして教わりたいという気持ちもあった。

 このとき、父だからといって「来い」という強制的な話ではなく、「考えてくれ」と、最終判断を任されるような誘いだったと馬場は振り返る。そして、今になって振り返ると、そうやって昔から自主性に任せてくれたことで、判断力をつけさせてくれたのだと気づいたとも言う。

「小さいときから『自分で考えて行動しろ』って言われていたんですよね。『(親として)方向修正はするけれど、基本は自分で考えて、自分で思ったようにすればいい』と。自分で決めて、自分がいいと思ったら突き進む。でも、責任も全部自分だと言われて育ってきた。今、考えると、そこがけっこう根本としてあるかな」

1月末にはスターターに抜擢。

 馬場が所属するGリーグのテキサス・レジェンズのオーナーで、NBAダラス・マーベリックスのGMでもあるドニー・ネルソンは、馬場について「それなりのサイズがあり、複数のポジションができるところが気に入った。ドリブルもできるし、シュートもできる。プレーメイクもできる。そういった彼の能力にはとてもワクワクしている」と言い、開幕からここまで、環境もまわりの選手の運動能力も違うなかで、馬場が着実に成長を見せていると評価する。

 実際、開幕当初は出番が限られていた馬場だが、試合を追うごとに、ヘッドコーチの信頼を勝ち取り、開幕から約1カ月たった12月上旬には完全にローテーション入りし、年末頃から出場時間が増え、1月末にはスターターに抜擢されている。ヘッドコーチのジョージ・ガラノポウロスいわく、ディフェンスはGリーグのウィング選手の中でトップレベルにあり、努力と性格のよさから、シューティングなど、他の面でも結果を出し始めていると称賛する。実際、1月末からの3試合では、3Pシュート合計15本中12本を成功させてもいる。

「根拠なき自信があるんですよね」

 前例がない道を進むパイオニアにとって大事な要素のひとつは、自分の力を信じる気持ちだ。前に歩んだ人の足跡がなくても、自分なら頂に到達できると思えないと、未開の道を進み続けることはできない。馬場は、昔から、目標を達成したときのイメージを持ち続けているという。

「なんか、根拠なき自信があるんですよね。それはもうずっとです。俺が本気になってやれないことはない、っていう思いがどこかある。言葉など、色々なハンディキャップがあるのにも関わらずここにいられるのは、どこか肝が座ったところが自分の中であるからかなとは思いますね」

 今はまだNBA傘下のGリーグの選手だが、この先、NBAに上がったときの自分の姿は頭のなかに描いている。

「常にそこは思い描いているというか、思い描くようにもしています。一歩ずつ上がっていくという自分のなかでの自信もあるので。自分のなかで、NBAでプレーすることは決まっているというか。それは、もう、必ず起こる未来だと正直、思っていますね。今、Gリーグでプレーしていますし、Gリーグでプレーすることも僕にとって必要なことだから起こっているのであって、でも、ゴールは変わらずNBAでプレーすること。それは必ず起こると思っています」

文=宮地陽子

photograph by Yukihito Taguchi