今月下旬に開催予定だったU-23日本代表親善試合の南アフリカ戦とコートジボワール戦が新型コロナウィルスの影響で中止になり、代表の活動も実施しないことになった。世界的に感染が広がり、日本も対応に追われている中、この中止は致し方ない。

 U-23アジア選手権(タイ)でグループリーグ敗退を喫したチームが、強化に必要な親善試合を2つ失い、東京五輪に向けて遅れていたチーム作りがさらに遅れてしまう。

 そのため、世論的には「東京五輪の代表チーム、大丈夫かよ」と森保一監督の今後を不安視する声が大きいが、個人的には今の段階でのチーム作りの遅れについてはほとんど心配ないと思っている。

 別に楽観的な観測を述べているわけではない。

 U-23日本代表のチーム作りは、本大会ギリギリになってようやく始まると言っても過言ではないからだ。

五輪のチームは直前まで決まらない。

 五輪代表はその性質上、強化が非常に難しい。

 本大会に至るまで数名の主軸はいるが、選手が急激に成長したり伸び悩んだりして、大きく入れ替わるのが常だ。海外組も毎回招集できるわけではないし、期待していた選手が試合に出られず、燻ってしまうケースもある。

 また、本大会に挑むチームにはOA(オーバーエイジ)枠を使用し、年長の選手が入る場合もある。

 そのタイミングで、チームの戦い方やムードがガラリと変わるケースも多い。OAの選手の影響力は大きく、OAを使用したチームは概ねこの傾向がみられる。それが本格的なチーム作りが始まるのが本大会ギリギリである所以である。

4位だったロンドン五輪のケース。

 例えば、4位と近年で最高の結果を出したロンドン五輪の例を見てみよう。

 本大会のメンバーは、7月2日にOAの吉田麻也と徳永悠平を含む18名が発表された。11日に日本で壮行試合となるニュージーランド戦が行われたが、その時、吉田は合流していない。17日にロンドン五輪の事前キャンプ地であるパッキントンで吉田が合流してから26日に初戦スペイン戦を迎えるまで、チームに与えられたのは18日のベラルーシ戦、21日のメキシコ戦の2つの強化試合と9日の練習期間だけだったのだ。

 この短い間に、最終予選とはまるで異なる堅守速攻のチームに変貌したのだ。

 この例のようにチーム作りで重要になってくるのが、OAの選手が入った後の本番直前のキャンプだ。そこでOAの選手を軸にチームを作るのか、それとも五輪世代の中心選手に合わせていくのか、全体としてどう戦うのかを見極め、戦い方を確立する。戦い方がまとまれば、あとは練習試合などで微調整をしていくことになる。

OA加入後がチーム作りの本番。

 ロンドン五輪の時は吉田が先頭に立って守備を構築し、全員がそれに乗った。強化試合のメキシコ戦で守備のやり方を試し、うまくいったことで戦術的な迷いがなくなり、その後はコンディションを整えることだけに集中した。そうして大会の初戦で強豪スペインを破るジャイアントキリングを起こした。

 ロンドン五輪以外でもアテネ五輪では最終予選を戦ったチームの主軸でキャプテンの鈴木啓太が落選し、OAとして小野伸二、曽ヶ端準が入り、本大会では小野を軸としたチームに生まれ変わった。

 リオ五輪の時には塩谷司、藤春廣輝、興梠慎三がOAとしてメンバー入り、大会初戦まで2週間程度の時間があったが、守備を構築できず、ナイジェリア戦で大量失点を喫した。OAがハマらないケースもあり、すべてがうまくいくとは限らないがいずれもOAが加入後、改めてチームを作り直している。

急ごしらえで結果を出してきた歴史。

 このようにチームのスタイルはOAの選手が入った後に決定するので、今の段階で活動時間の増減をシリアスにとらえる必要はない。もちろん時間が潤沢にあればいろんなことを試すことができるが、一方でチームが早く完成してしまうことで成長が滞り、活力が失われてしまうこともある。

 逆に時間がなければないで余計なことを削ぎ落してシンプルに考えられる。

 南アフリカW杯では大会直前にレギュラーを入れ替え、戦い方を変えてベスト16に進出した。ロシアW杯も直前に西野朗監督になり、ほとんど時間がない中でチームを編成し、モチベーションを上げて戦うことに成功し、ベスト16に進出した。

 南アフリカW杯の岡田武史監督、ロシアW杯の西野監督ともに大会前はほとんど期待されず、不安ばかり煽られていた。そんな逆風の中でも結果を出している。「最悪だ」「弱小だ」と罵詈雑言を浴びせられた中、選手が危機感を抱き、結束して戦ったのだ。

 今後も東京五輪を戦うU-23日本代表は、コロナウィルスの影響で活動の制限を受けることになるだろう。加えて森保監督には逆風が吹いているが、コーチとしてロシアW杯での西野監督の戦いを傍で見ており、本当の戦いは18名が決まってからと理解し、腹を括っているはずだ。

森保監督の調整力に期待。

「火事場のバカ力」ではないが、追い詰められた時に力を発揮する強さを選手たちは持っている。それは過去の戦いが証明している通りだ。

 とはいえ、18名のうち90%はもう頭の中で決めているだろう。「残り1、2人の選手が難しい」と歴代の監督は語っているが、これからはその選手を見極めること、そして海外組の招集など難しい問題をクリアし、最終的に自分が望むメンバーをどのくらい揃えていけるかが重要な仕事になってくる。

 リオ五輪時の久保裕也のように、直前になってクラブの都合で参加できないという事態は絶対に避けねばならない。

 OA枠も含めて、ベストの18名が揃えば、最後は短期間での調整力が重要になる。それも森保監督に関しては心配していない。ナショナルチームダイレクターである関塚隆はロンドン五輪でU-23日本代表を指揮した監督である。

 その極意は森保監督に伝わっているはずだ。

文=佐藤俊

photograph by AFLO