発売中のNumber999号の第2特集は、「ベイスターズをのぞいてみよう!」。NumberWebでも連動して、横浜DeNAベイスターズを特集します。第4回はベイスターズを盛り上げるパフォーマンスチーム「diana(ディアーナ)」に密着。プロ野球開幕へ向けた準備に迫りました。

 試合前は球場外のステージで青白のユニフォームに身を包み、キレのある踊りを見せ、スタメンの発表をグラウンドから盛り上げ、ベンチから登場するベイスターズの選手たちをフィールドへ送り出す。

 横浜スタジアムのホームゲームでオフィシャルパフォーマンスチーム「diana」を見ない日はない。しかし、一体彼女たちは何者で、どんな練習をしているのか、今回、開幕に向け、練習に励むdianaに密着した。

「ゴー!ゴー!ゴー!」

 寒風が吹きすさぶ真冬の2月中旬、横浜スタジアム。観客はおらず、つなぎを着た男性たちがフェンスに広告の文字を入れるなど、スタジアム改修の竣工に向けて工事が急ピッチで進む中、フィールドに女性の声が響く。青色シャツとジャージに身を包んだdianaが一塁ベンチ脇から駆け出していく。

 外野の芝生まで約100mを全力疾走。位置に着くと彼女たちは10m以上先のフェンスの文字を見て、お互いに声をかける。

「私、横浜銀行?!」

「私、ノジマだよねー?」

 彼女たちはフェンスに書かれたスポンサー名を目印に、メンバー同士が話し合ってポジションを確認しあっているのだ。外野スタンドを盛り上げるべく旗を振ったり、音頭を取ったりする時の実戦を想定した最終調整といえる練習だ。

レパートリーは30曲以上!

 彼女たちが覚えなくてはいけない球場での動きは数十にも及ぶ。試合前の始球式から勝利時のヒーローインタビューまでお手本の動画を計19本、チームで共有しそれを覚えていく。また球場外のステージで踊る楽曲のレパートリーは30曲以上にものぼる。

 球場での練習は他に試合前のスピードガンコンテスト、スタメンの発表。そしてタオルやフラッグを使って盛り上げる『勇者の遺伝子』のポジション確認などを行った。

 その中で最も時間をかけたのは、プレーボール直前の選手たちを守備位置に送り出す通称”花道”の練習だ。

「一直線になっていない!」

 実はこの日の練習前の2月の第3週、彼女たちはダンススタジオで1日8時間にも及ぶ練習を14日のバレンタインデーを含め計4度敢行。そのため金色のポンポンを持って行うダンスの振りの覚えやキレは皆、完璧だ。しかし横浜スタジアムの広いフィールドで移動も含めてリハーサルをしていくと、ズレも見えてくる。ダンスの最後にベンチ前で逆さの「ハ」の字を作り、選手を送り出す花道は一見完璧なように見える。

 しかし観客席からスマホで録画しながら確認していたブランド統括本部エンタメグループ所属のdianaマネージャー・延原雅代さんがグラウンドに向かってこう告げる。

「キレイな一直線になっていない」。指摘を受け、最初からやり直しとなった。

「お願いします!」

 dianaメンバーの声がスタジアムに響き、何度も練習を繰り返す。花道は並ぶ順番やメンバーの動線を変え、一応の完成を見た。休憩中もフリをより正確に合わせられるようメンバー同士で確認作業を行う。休憩後、ダンスを省略してまた花道を作り出す。なぜ同じ動きの練習をするのか。

華やかな印象とは裏腹に……。

「試合前にはいろんなイベントがグラウンド内で組まれますが、プレーボールの時間は絶対です。そのため、試合前短い時間しかない時に、その尺に合わせてどんな動きになるか、練習していたんです」(延原さん)

 2020年メンバー全員で初めてのスタジアムでの練習となったこの日、全力疾走後にはダウンするメンバーの姿も。しかし、実戦まで数が限られているハマスタでの練習。ベンチで少し休んだ後に、合流し必死に動きの確認を始める。シーズン中は9連戦も控え、体力が求められる。球場で見せる華やかな彼女たちの印象とは裏腹にそれぞれのメンバーが時に苦しみながら努力を続けているのだ。

360度見られる環境はあまりない。

 彼女たちは書類、実技、そして自由演技&面接の試験を経て、約230人の中から選ばれた精鋭たちだ。実技試験は1分間のダンスの振り入れ(振付を覚え、自分のものにすること)を30分程度して、その後実演して見せるなどダンスの覚えの早さや上手さがチェックされ、ダンスの能力は折り紙付き。しかしそれぞれのメンバーが思わぬ課題に直面していた。

 2020年、チームのキャプテンに就任した2年目のFukaさんはもともとヒップホップが好きで、ダンス歴は10年以上にのぼる。

「小学校1年のときからダンスを始めて、高校からチアダンス部に所属していました。ダンスの専門学校で他のジャンルを学んだのですが、やっぱりチアが楽しくて地元・横浜で踊りたいとオーディションに応募しました」

 ダンスのレッスンにも通い、振りの覚えも早く、練習では完璧だったFukaさん。しかしスタジアムに立つと、振りが他のメンバーより早くなってしまうことがあったという。

「360度から見られるということはなかなかないので、緊張しました。ただ、スタジアムであれだけたくさんのお客さんに見られているのが楽しくなっちゃって、気持ちが先走って1人だけテンポが早く踊ってしまっていた時期もありました(笑)。普段の練習以外でも自宅で全体の踊りを収めた動画を見て、他のメンバーのダンスを見て盗み自分の動きも修正していきました」

割り箸を使って笑顔の練習も。

 副キャプテン・Mahoさんは応募するにあたって、様々な球団の映像を見て決めたという。

「元々バックダンサーになるという夢があり、色んな経験を積みたいとプロ野球のチアに興味を持ちました。各球団のパフォーマンスの映像を見て、dianaが一番格好良いと思って応募しました」

 K-POPのBIGBANGなどを担当している有名双子バックダンサーのクォン・ツインズのダンスを見たのがきっかけでダンスの道を志したMahoさん。格好良いダンスはお手のものだったが、あることを指摘される。

「チアとして大事な笑顔が足りないと言われました。今まではあまり笑顔を見せることのないどちらかといえばクールなダンスをやってきて、笑顔をそこまで意識することがありませんでした。それからは奥歯に割り箸を挟んで、口角を上げるエクササイズを毎日、自宅でテレビを見ながらですが、4〜5時間ほどやるようになりました。ただ笑顔は磨きつつ、自然に出る笑顔が一番だと思っているので、表情は作りすぎないようにしています」

ベイスターズテスト2020って?

 そうして迎えた2020年シーズンだったが、彼女たちには新たな試練が待っていた。

 ベイスターズテスト2020——。

 実際dianaが受けたテストの設問を見ていくと、Number読者の方はすぐ答えられるだろうこんな可愛らしい問題が。

問 「ゲッツー」とは何を指す? 
(答 1連のプレーでアウトを2つ取ること)
問 「サイクルヒット」とは何を指す? 
(答 1試合で単打、二塁打、三塁打、本塁打を打つこと)

 一見すると野球の一般常識テストかと思うが、このテストの真髄は以下の設問だ。

問 新設されたファーム施設の正式名称は? 
(答 DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA(ドック・オブ・ベイスターズ・ヨコスカ))
問 2020年に横浜スタジアムに新設されるシートの名前は?
(答 ウィング席(STAR SIDE))
問 オーナー、社長、副社長の名前を答えよ。 
(答 南場智子、岡村信悟、木村洋太)

 ベイスターズの副社長……。さすがにファンの方でも答えに窮する難問なように思える。

随時、追試も行なっています(笑)

 問題を作成したマネージャーの延原さんがこのテストの意図を教えてくれた。

「これまでチームを見ていて、野球やベイスターズに対する知識に関してメンバーによってばらつきがあると感じていました。こういったことは最低限知っていてほしいというメッセージも込めて、試験を行っています。とはいえ彼女たちもまだまだ勉強中。随時、追試も行っています(笑)」

 テストや猛練習を経て、球場に立つ彼女たち。今年で3年目のシーズンを迎えるMahoさんには忘れられない光景があるという。

「1年目にハマスタで鳴り物応援ができない時間帯に突入したことがありました。その時お客さんが楽器がない中で私達のダンスに合わせて歌って手拍子をしてくれた。その球場がひとつになった、あの瞬間が強く印象に残っています。今年のdianaは昨年以上にいろんなダンスができるグループに仕上がっていると思います。試合はもちろん、私達のダンスにも期待していてください!」

 ハマスタを熱く盛り上げる彼女達のパフォーマンスからも目が離せない。

文=齋藤裕(Number編集部)

photograph by YDB