前日に配信されたNPB投手最強番付を作ったからには、打者編も作らざるを得ないだろう。こちらもなかなか楽しい作業ではあった。

 打者の指標もいろいろある。名球会の入会資格は打者の場合、日米通算(NPBが起点)で通算2000本安打になるが、この基準に満たない強打者もたくさんいる。

 そこで考えたのち、指標を「塁打数」にすることにした。

 塁打=単打+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4だ。長打が多い打者が上に来る、スラッガーには有利な指標だ。これを踏まえて番付を作った。

 投手と同様、右、左で分けた。両打は左打者の方に振り分けた。2020年のNPB現役選手929人の内、左打者は394人、両打は15人だ。左、両打併せて44%、左はやや少ないが、番付にできないことはない。以下、このような番付になった。

(※編集註:NumberWebのホームページ以外でご覧の読者は、https://number.bunshun.jp/articles/photo/842952 をご参照ください)

横綱はやはり王さんとノムさん。

 両横綱は不動と言っていいだろう。

 通算本塁打1位/868本の王貞治と同2位/657本の野村克也。昭和の時代を代表する圧倒的なスラッガーだ。王は本塁打王15回、野村は9回。ともに両リーグ1位である。2020年に入って一方の横綱が世を去ったのだと思うと、喪失感は大きい。

 左の大関は、通算最多3085安打の張本勲である。首位打者はイチローと並ぶ最多タイの7回。右は鉄人・衣笠祥雄。2215試合連続出場は、一時期まで世界一だった。

 関脇は、左が40歳で二冠王になった昭和末期の大打者・門田博光、右がプロ野球史上最大のスター選手・長嶋茂雄である。長嶋は首位打者6回、本塁打王2回、打点王5回の成績を残している。「記録より記憶に残る男」と言われたが、実力でも屈指だった。

金本、落合、阿部、そして福本も!

 そして小結は、左が金本知憲。平成以降では通算最多安打、最多本塁打、最多打点と“三冠王”である。右はミスター広島、山本浩二が名を連ねた。

 前頭上位も見てみよう。左筆頭には史上最多1065盗塁の福本豊が入ったのが興味深い。スラッガーではないが、2543安打に加えて史上2位の449二塁打が数字を押し上げた。右筆頭は、三冠王3度の落合博満である。

 左2枚目は、昨年まで現役だった阿部慎之助である。阿部が偉大なのは、キャリアの大半を捕手としてプレーしたことだ。野村克也同様、数字に表れない部分も含めてその功績は大きい。右2枚目は近鉄、西武で活躍した強打者の土井正博が入った。その後も小笠原道大、清原和博ら左右ともに名スラッガーが並ぶ。

ローズ、ラミレスが残した足跡。

 この番付は「長期間NPBでプレーして数字を積み上げた選手」が上位に来る。だからキャリア半ばでやってくる外国人選手には不利だ。

 三冠王2度のランディ・バース(1457塁打)、シーズン60本塁打のウラディミール・バレンティン(1962塁打)も入ってこない。

 その中で唯一入幕しているのがタフィ・ローズである。ローズは王貞治と並ぶ55本塁打を記録している。それも偉大だがNPBで13シーズンにわたってプレーし、外国人初の1000打点などの記録も樹立している。

 右十両3枚目の現DeNA監督のアレックス・ラミレスは外国人でただひとり2000安打を記録しており、彼も偉大な選手だった。

 日本プロ野球は第二次世界大戦で中断している。そのため、戦前の選手は兵役や疎開でキャリアを断絶されているし、戦没者も多い。川上哲治はそんな戦前派の中で唯一2000安打。山内一弘や野村克也など戦後派の強打者が台頭するまで、主要な打撃通算成績は川上が持っていた。そんなレジェンドが今も左前頭8枚目にいるのはなかなか味わい深い。

現役だと福留、鳥谷、内川の名が。

 左に含めた両打では、松井稼頭央が十両3枚目。続いて9枚目の柴田勲。MLBにはミッキー・マントルのような球史に残る強打のスイッチヒッターがいるが、NPBではそれほど多くない。

 現役選手では左で阪神の福留孝介が十両4枚目、このたびロッテへの移籍が決まった鳥谷敬が幕下3枚目。右はソフトバンクの内川聖一が幕下2枚目。現在3034塁打の西武、中村剛也も今季中には番付に載ってきそうだ。

イチロー、W松井らの日米通算は……。

 そしてやはり打者編でも「MLBに移籍した選手は入れないのか?」と言う声が上がるだろう。以下、主要な打者の日米通算記録である。

<左打者>
イチロー 5883塁打
(NPB1889、MLB3994)
横綱相当

松井秀喜 4714塁打
(NPB2663、MLB2051)
関脇相当

松井稼頭央 4109塁打
(NPB3234、MLB875)
前頭筆頭相当

福留孝介 3992塁打
(NPB3231、MLB761)
前頭筆頭相当

青木宣親 3275塁打
(NPB2223、MLB1052)
十両2枚目相当

<右打者>
中村紀洋 3709塁打
(NPB3702、MLB7)
番付変わらず

井口資仁 3671塁打
(NPB2932、MLB739)
前頭10枚目相当

 日米通算を加えると強打者番付は大幅に作り直さなければならない。とはいえ王貞治を大関にするのは個人的には違和感があるし、NPB限定という縛りで今回は番付を作成した。

左打者のMLBへの流出が多い。

 投手に比べると、NPBからMLBに移籍した打者はそれほど多くない。それでも特に優秀な左打者の流出が続いているのだ。

 今季も筒香嘉智、秋山翔吾とNPBを代表する2人の左打者がMLBに挑戦した。

 こうやってみていくと、強打者の番付も野球を語る上での「酒の肴」にはよろしいのではないか。

 そして今後は、柳田悠岐や山田哲人らといった当代の強打者たちが番付を駆け上がることだろう。それを想像するのも楽しみだ。

文=広尾晃

photograph by Koji Asakura